1話
「つまりなんだ。君は自分のチームから追い出されたからほかの仕事を受けたい。でもない。一人じゃ第一種の仕事も無理だってわけか」
剣士はそういった。
ここは帝国の首都にある冒険業組合の仕事斡旋所。
世にはいろいろな冒険者というものがいるので一概には言えないが、少なくともこの帝国とその近辺にいる「冒険者」とは「第一種冒険者」と「第二種冒険者」の2つに分けられる。
・第一種とは「自ら計画しダンジョンの攻略、モンスターの討伐、遺跡発掘などの業務を行うもの」
・第二種とは「依頼者との間に金銭、もしくは各種報酬に基づく請負依頼を成立させ業務を遂行するもの」
簡単に言えば
「第一種は自分で主体的に業務を行う自営業。第二種は依頼人の要請を受けて業務を行う請負業」
という違いである。
もちろん第一種冒険者と第二種冒険者を兼業していても良いしそういう人も多い。これらはただ帝国やその法制を真似た地域における国家資格上の問題である。
「まぁ、そうなんです。はい」
「まぁパーティーから追い出される人は結構いるって聞くが」
剣士が言うとおり最近はどうもそういう人が多い。
なぜかといえば、なぜなんだろうね。流行りってやつだろう。
「君は問題ある感じには見えないぜ」
目の前の男、登録ジョブは魔法使い、にはそんな大きな問題があるようには見えない。
冒険者にしては肌が白い、学者風の若男。
年は20だという。人相としては今風のかっこよさがあると言っていいだろう。
人見知りの感じはあるが、礼儀は冒険者家業の連中にしては中の上な方。
剣士が見せてもらった履歴書に書かれた技能にあるのは中級の回復魔法と薬学初級、調理中級、そして基本の攻撃魔法。
履歴書の技能としては、まぁ一流どころとは言えないけど中の下か中の中くらい。
欲さえ出さなければ食うには困らないだろうという程度。
「あの、その、お恥ずかしい話なんですが、私より有能な人間が入りまして」
「あぁ、そういうことか」
パーティーに自分と同じ技能をもった人間が入ってしまうことはたまにある。双方納得のうちにどちらかが離脱できなければ、追い出されるか追い出すかの争い。
「こういっちゃ失礼だけど、意地でもパーティーに残ってやるって感じじゃないもんな」
優男、といえば聞こえはいいがどちらかといえば気弱なタイプに見える。
「えぇまぁ、自覚してます。で、居づらくなって最終的にでてけと」
「なるほどなぁ」
斡旋所の談話スペースの端の端の机と椅子を独占しながら二人はそんな話をしていた。