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讒の襲来

 屋敷に戻った頃、2人はロビーにいたままだった。柊さんは眠っており、葉束くんはパッケージフィールドをしていた。2人の居る所へと、ドアを開ける。

(ガチャ)

「? 誰……て、佳鳥に決まってるよな。飯買ってきてくれたんだな」

「ありがたいですー! 普通、こんな余裕持てないですからね。ジャンケンで負けた方が買い物いくとかいうときもありましたからね。本当、助かります」

 肉や野菜をまとめながら、レジ袋から冷蔵庫へと移した。これで昼食と夕食、夜食、明日の昼までもつはずだ。

「メイド服もあと三着あるんで着替えたい時に言ってください。さ、お二人とも続けましょうかパケフル」

「そうだな。明日は日曜だ。目も覚めた」

 パケフルをしだす葉束くん。柊さんも、パソコンに向かってキーボードを叩いていた。こういう日が、一生続けばいいと思う。

(幸せだ)

 気が付くと、葉束くんが隣に座っていた。

「佳鳥、パケフルしようぜ」

 ! 葉束くんのとなりでゲーム。こんな嬉しいことが……。

 葉束くんの横まで行き、αCSを開ける。

「そのαCSにパニッスを送れば、何か起きるかもしれませんね。作った乱数、ゲームの解析も多く施してあるのでね」

 私は安心し、通信によって受け渡されたパニッスのパッケージ手入れをし始める。かわいい。私だけの箱物パケシグ

「佳鳥、よかったな。パニッスは油、墨、漆によってできているから、即座にフィールド上へ三つの内のどれかでいいからつからせに行くんだ」

「え? わかった」

 同じ性質によってパワースポットになるのかな。ともかく、私は言われる通りに近くの浅い海にパニッスのパッケージを放り込んだ。

はこごと放り込んだのか……。これは―――」

 瞬間、パッケージ緑色に光ったり青くなったり、七色に輝いたと思いきや、真っ黒になったり透明の中にパニッスが見えたりした。

「すごい……」

「……色が変わるパッケージってのは珍しいんだが、これ程とは」

 目の前で繰り返す全変化を、私たちは楽しんだ。

「佳鳥、今度は漆に浸らせようぜ」

 漆、墨、油にも浸らせようと引き出した瞬間、柊さんから警告を受けた。

「葉束! ナクロの前に脅威を察知しました。αCSに集中してください」


『これぐらい暗算済みですとも!』


 !

 いきなり現れた人「アンチス」と名のついたユーザーは、葉束くんのナクロへと近づこうとしていた。

「讒の使い手か。……? どうやって来た」

 急に押し寄せたアンチスの箱物パケシグ、サティックランは蜘蛛くものような形をし、黒く濃い色が混ざり合った六色の足跡を付け、斬撃を繰り出した。

疑怨鱗発ギオンタッチ!』

 瞬間、馬鹿でかい効果音とともにパティックランはジャンプし、ナクロはその場から一歩避け、得技【剣銅道木リフトークセイバー】を、放っていた。サティックランは腹にくくってある鋭利えいりな茶色を武器と盾に。ナクロは木と銅の二つの剣で辺りを攻撃しながら反動で離れた。

「佳鳥氏、箱物パケシグ本体に攻撃が当たった瞬間、有利なほうが決まる戦生せんきがターン制で始まります。しかしカオスですねー、相手は改造によってネット、パソコン、Wi-Fi、αCSを通じてここに来ているようです。アンチスは葉束の熱狂的ファンですよ」

(改造……?)

 改造って……? イカサマ……?

 とすると、はた迷惑にも程がある。アンチスさんは、遠慮というものを知らないのだろうか。

『その技、暗算済みですとも!』

 アンチスの箱物パケシグ、サティックランはアンチスさん側も一歩引いているようだった。

『やはり葉束のナクロは得体が知れませんね。ここは一度引きますか』

 箱物パケシグ、サティックランから聞こえる声で言うと、アンチスは次元幽閉装置でどこかに飛び去ってしまった。

『それでは』

 シュンッ。

(消えた……)

 私達は、自分のαCSの中を見つめながら黙っていた。

「行ってしまいましたねー、目的は様々だったと思うんですけど。誰なんでしょうか」

「大会準優勝者だ」

「へ?」

 何故わかるんだろう。

 葉束くんは、続ける。

「あのざんの使い手はあいつしかいねえ。前からそうするんじゃねえかと思ってたし、今の手応えもそうだった」

「……、そうですか。安田さんですね。安田梨起やすだりき。前非公式ネカフェパケフル大会、喫茶”フェニキッス”での100人規模の大会で葉束と最後に戦ったあの」

「え……?」

 そんな実力者が……? 理由が、不明だ。

「なったんだろ? 奴も」

「ですね。アンディランから認定を貰ってます。プロの証、ユーザーパスを」

 ! プロゲーマー、だったんだ……。

 でも、そうなら尚更、何故……。

「俺に負けた時のあいつの顔は、清々しさは一つもなかった。ずっと歪んでるって感じだった」

「んー、安田さん―――アンチスならあれぐらい時間経てば割り切れそうですけどね。少なくとも僕は少し、そう思ってました。でも葉束が言うならそうでしょうし、僕もそうだと思います。明るかったじゃないですか、安田さん」

「妙にポケモンが好きな奴だったからな。アンチスって、ゲーチスだろ? ブラックホワイト、五世代時期の。箱物パケシグ蜘蛛くもとは、龍からあそこまで姿を変えるとは思ってなかったよ」

(ポケモン……? ゲームかな。どんなのだろう)

 まだ知らないことは多い。葉束くんと柊さんの過去も、他の人の過去も。世界のことも、ゲームのことも。

 無言でいると、柊さんが私に気にかけて言い出す。

「昔、流行ったゲームは数が知れません。今そのリメイクがいくつも出ています。先人たちの作ったゲームが元に、今のパッケージフィールドは乱数やプログラムが構築されています。佳鳥氏にも、いつかは将棋やポケモンをさせたいですね」

(将棋と、ポケモン……?)

 将棋は日本でも有名、大御所だ。私も経験が少しある。というかある。

「ていうか佳鳥と将棋するだけでパケフルでも何かアンチス達へのヒントが掴めそうだぜ。佳鳥、今から対局バトるぞ」

「え?」


 気付いた時には、目の前に真四角の将棋盤と駒台が用意されていた。

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