隠しパケフル部
5話
打ち消す壁
教室にメイド一人。
席に着く。
じろじろと、クラス全員が私を見ている。
私以外のクラスメイトは皆ガヤガヤと喋っていた。
「いきなり、コスプレ……?」
「佳鳥ってそんな奴だったのか?」
「突然すぎてびっくりなんだけど」
「でも中々似合ってるな」
「様にもなってるな」
皆、文化祭のための準備だと、思っていた。あまりにも早すぎる準備と。
「いきなりすぎて恐い」
「恐いというより思い切ってるな」
「コレガフリル? すげえ」
「どっから持ってきたし」
「俺もメイド服着ようかな……今度」
俺っ娘の岳田さんも感心していた。
「なんで!? なんでメイドがいんの!?」
あとで遅れてきた佐野さんが私に驚いていた。
「佐野!! 遅刻とはどういうことだ。……だめだな、先生、ボケてるな」
「先生……そこはボケないでください……」
「ボケてるといえば先生、遅刻してる人は他―――
「これはすごいな」
「佐野……」
黙る葉束「……」
私が今まで受けてきた苦しみは
どこまでも透き通った勘違いで
私が私を蝕み
輝く道を
閉ざしていたんだ―――て
虐めの正体って、私の自意識過剰……? だったのかな
―――二年前。中学二年夏。
「佳鳥ってなんであんな喋らないの……?」
「英語の授業だったけど、なんも言わないし困ったわ」
「毎回こうだよ困るよねぇ」
佳鳥は、その無口こそが正義と思っていた。
(無口を通すことによって、絶対に良いことは、待ってるはずだ!)
(また、そうすることで私の……? 読みは高まる!)
……無口は、犯罪だった。
人と話す事。それは、この現実を生きる上では重要スキルだった。
どれだけ噂されても、”現実で話す事”。それは、魔法や常識を超える力にもなりうる。
だが、佳鳥は人と話しても自分が考える時があった。人と話しても、不器用だったり何を伝えたいのかが分からないときがあったのだ。
それは、電波だった。本気で伝えるつもりの、無意味な反論的正論、電波だったのだ。
佳鳥は昔から自分一人で考え事をする癖があった。自分の世界に、入り浸っていた。
それが、今回メイド服で決めようという筋だったのだ。
―――
「今回遅刻したの他にもいるんです実は」
『は……?』
『おい』
「実は遅刻をした人は、もう二人いるんです、先生」
言ったのははじめその事を言おうとした生徒ではなかった。
「何……? 遅刻した生徒は他にもいるのか、佐野」
「あごめんなさい一人でした」
一部全員一気にずっこける。
「もう一人は、野崎さんなんです」
……………………
「待て」
「もう二人、いるよな」
「なんだと?」
「え、いるの? それってほんと」
「だが、これを言うと……」
久矩津島と鹿原真御の二人は、流れにおどおどしていた。
(おい、なんだこの流れは)
(俺たち、晒されるんじゃねえのか)
間違っていたのだ。
生命は、言葉で傷つけるものではない。
だが、言葉というものは、常に占いである。
間違ったのだ。
明らか強い生命体に、それも異性を脅すなど。
截然の天罰
「明らかいままで調子乗ってるやつなのは間違いねえな」
「いきなり大声で叫んだり。無意味なこと」
「なんか前々から妙につまらないとおもってたんだよね」
(おい、なんだこれは……)
(佳鳥って、最強だったのか……)
「久矩と鹿原です。今回遅刻したのは」
「……そうだね。何があったのかは知らないけど、悪いことしてるのは確かだよね」
「してねえ!!」
「いや、遅刻はしたよな。なんかお前ら漂ってるし。あんま悪いことすんな」
ほとんどから見られる二人。
「……おい、なんだこれは」
「なんで俺たちは勉強をしてるだけなのにこんなことにならねえといけねえんだ」
黙る佳鳥「……」
「ま、お前ら、これでも見ろ」
晒される写真。
………………
「結構いかした写真じゃん。それがどうしたっていうんだよ」
「明らか屋上で脅迫してたんだね」
「佳鳥に惚れてんじゃねえよ」
「うるせえ!! 俺達はなんでこんなに勉強しなきゃいけねえんだ!! なにが鬼のプリントだ!! 今まで20回もしたのが間違いなぐらいだぞ!! お前ら、明らか勉強を正義にしてるだろ!!」
一人の生徒が厳しく言い放つ。
「それの何が悪い!!」
「やっとほら吹き―――」
「分かった」
北条先生は、悟ったように特例措置を付けた。
「これからは遅刻しても、鬼のプリント無しだ。すまなかったな、みんな」
「それでいいんだ!!」
「ふん、勉強が嫌で嫌で仕方がなかったんだよ」
「んなことより、今度文化祭で佳鳥がメイドってマジかよ。誰か聞いたかよんなこと」
「……初耳だね」
「そもそもどっから持ってきたの? そんな服」
「なんか独特すぎて受けるんだけど」
「様になりすぎな」
「別人すぎて何があった。少し辛そうだが」
「一度きりの人生だから」
「……へ?」
私は、言い放つ。
「もっと、現金になりなさい。難しく考えるより、命を喜んで。私達は、奇跡よりもすごい対価で出来ているんだから。私達は、一瞬が大事だから。昔までは、どうして生きていたのか、分からない。本当に大切なことは、自分たちの意識の中にあるから。このメイド服は、秘密だけど」
…………
「そうだな」
「久々に喋るにしては、言えてるんじゃね」
葉束が、佳鳥に言う。
「佳鳥は保育園児の頃明るかったけど、お金ないのがここまでに至らせたもんな。独りで抱え込まずに、みんなで解決できれば、理想だ。現実は非情だから、言うままにはならねえだろうけど……」
「面白い」
北条先生が、1限目の授業を無視して社会をやめながら言う。
「現金。か。確かに、言えている気がする。会話=占いという言葉がある。小さな可能性も、見捨てたもんじゃないな。この学校は、ちょっと狭苦しかったようだ。すまなかったみんな。これからは、勉強は意欲的に取り組める者のみの授業に、社会だけはするようにする。他の先生にも今回の件はちょっと噂しておこうと思う。ありがとう、佳鳥」
私と葉束くんは、少し微笑んだ。因縁の二人も、少し安心しているみたいだった。それだけじゃなく、クラスほとんどが、私を認めるような雰囲気となった。……気がする。正直、今回の件は勉強の方針が緩み一時的に緩和されただけだと思うから。
でも……。
(もう、私は、勉強が、できない……)
私は、椅子で、睡魔に襲われた。
「ん……?!」
「どうしたし」
「燃え尽きてる」
帰宅時間。
1限目~5限目の授業とテストを叩き起こされメイド服のまま何とか終え、学校を帰宅するとこだった。
クラスは以前と違いテスト後でにぎわい、2時間眠ってしか居なかった私は授業を終えたあと錯乱状態となり、私は学校をやめ占い師になることを少し考えているところだった。
(帰ろう……)
αCSをロッカーから取り出す。私達が付き合ってることが何となくばらしたくないため、一人で帰ろうとしたときだった。
「あれ」
「あ……!?」
目の前に居たのは。
流園零理。
「君、朝屋上に居たメイドだね。その手に持ってるのは……」
「あ、いや、これは、……」
「何のゲームだい?」
「えっと……」
…………
「パケフルです……」
「パケフル……」
流園はちょっと得意げ? な顔をしていた。
「ちょうどいい。うちの屋上部屋の部室に来ると良い」
「え……?」
(今日は葉束くんと下校できないんだ……)
半分あきらめ気味で着いていこうとした最中。
「佳鳥……?」
葉束くん!?
「え、葉束くん、あの……」
流園は少し驚いていた。流園は、部員に華が欲しかったから。
「君、佳鳥っていうんだね。君、たしか葉束だよね、前クラス同じだった。屋上部屋の部活動をちょっと見てほしくて、来てもらってもいいかな?」
「な……」
「……」
(どうしよう……)
私は何故かすぐさま閃いた。流園さんは、何か持ってるはずだ。
(行こう……!)
「行ってみよう、葉束くん」
「俺もか……。遠慮したかったけど、まあ10分ぐらいだったらいい」
屋上を目指す。
「まさかうちの部室に二人も来てくれるなんて、久々だよ」
「なにがあるんだ……?」
「……」
黙々と、目指す。
屋上部屋に、着いた。
ガチャ
「あら? 部員さん? 確保してくれたの?」
「叶岸。ちょっと見学だ。片方の、メイドの佳鳥さんがパケフルができるそうだ」
「え!?」
「!?」
もしかして、ここって―――
パケフル部!?
第五話 隠しパケフル部 終わり




