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避けられない樹

 しばらく眠りにつくと、夢もなく、しっかり一時間熟睡できた。私は少しご褒美の気分転換もあるし、昨日家で入ったのがまだ急いでたり混乱してたからまた入ろうとも思ったし、なにより屋敷のお風呂は快適だし。お風呂、行ってこよう。着替え用意しなきゃ。

 前から柊さんから聞いておいた、ダイヤワンポイント付きメイド服を出す。そのワンポイントは7方向に繊細な煌びやかに見える黄色一色の星? だった。秀逸な胸の飾りだ。家から持ってきた古い下着を持ち、移動した。

 広々とした浴室は、私達3人が使うにはかなり勿体ない間取り、広さだった。いつ葉束くんと鉢合わせしてもおかしくない……という感じだった。……妄想、だけど。自分で自分がえっちぃと思うけど。……。

 でも今まで鉢合わせしなかったのは、葉束くんがロビーでゲームしてたのを見計らってたから。夜入ったことは、一回だけあったんだけど。あれは、運が良かった……? のかな。注意してくれてたり、気遣ってくれたんだろう。

(……よし、誰も居ない)

 私は安心し、服を脱ぎ始め。裸に、なった。

 ガンッ、ツツ……。

 浴室の少し硬いドアを開けた。

 誰も居ないけど、やっぱり緊張……?!――

『ピチャ……』

 音……?

 何か、違和感がある。

(こわい……)

 やっぱり、この屋敷は霊感体質が高まるのかもしれない。前、この屋敷には中古になるだけの理由があると、柊さんが言ってたし。

 葉束くんの頭痛も、それなのかなあ……。

 湯船に浸かる。何故か、お風呂は用意されていた。

(…………)

 ………………?

 え……?

 隣にまさかとは思うけど、まさか……。

「おまえ……」

 憧れの葉束くん!?

「え、あ……あの……」

「どういうつもりだ……」

(わからない、わからない、何この状況?!)

 葉束くんは怯えるように、背中だけ向けて。

「や……、わたしは……」

「間違ったのか。……出てってくれ」

 その時、私の脳裏に……。

「……待って」

 私は、こういうとき攻めないから、活きるものも錆びるんだと思ったから。

「あの……。ありがとう、小学生のとき、いつも独りを助けてくれて」

「……」

「私を見つけてくれて、ありがとう。気にかけてくれて、ありがとう。好きじゃないのかもしれないけど、私は好き―――」

「あのな」

(! ……)

 ……やっぱり、私は、フラれるのかな。頭痛がするのも、拒否反応? だったり……。

「……。俺は、言葉を封じられているんだ」

「え……?」

 つ、つまり……。

「いままでので察しろ。早く、出ろ」

 …………。

 私は、葉束くんの背中に近づいた。

「おい、佳鳥―――」

 背中に、手を触れた。

 なでて、あげた。やさしく。

「好きだよ。どんなに断られても、曲げる気はないから。他の男の人なんて、ごめんだから。葉束くんじゃないと、だめだから」

「っ……」

 苦しそう、だったけど。

 胸に風穴も空くとも言ってたし、痛みが走ってるのだろう。

 それでも私は、攻め手を止めなかった。

「こんな私でよければ、貰ってください……♡」

 笑みを浮かべてしばらくなでた。背中を。

 睡魔が来るときみたいにあたまがだんだん、おかしくなっていく。

 2分なでて、肩にも触った。私は喜びが最高峰に達し、お湯の熱気で限界と思い、湯船から出た。


 私は、裸のまま浴室から出た。


(どうなるかと思った……)

 すぐタオルで体を拭き、下着とメイド服を着た。

(緊張した……)


 その後、葉束は恋に落ちた。……あんな、かわいい女の子が、自分を慕ってくれたのだから。裸同士でさえ、寄り添ってくれたのだから。

(……あの肝なら、佳鳥がパニッスを使うにあたっての強さを伝えてもいいか……)

 それは、プロと戦うにあたっての、最低条件だった。

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