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岬の見えない花

 帰った。屋敷に。

「一日空きましたが、どうしてたんですかお二人とも」

「……」

「……」

「黙ってては分からないでしょー!! いや……ちょっと待ってください」

 そうだ。このままじゃ、柊さんにも私たちが付き合ってることがばれる。

 じゃなく、私たちは”付き合ってる……?”なんだ。

 考えれば考えるほど……。

 なにかの、うずに……。

(つらい……)

 でも、考えなきゃ。……。

 柊さんが相手で、幸いだった。

 初めての会話が、親は居たけど柊さんだったことが。

「もしかして、二人で泊りがけでもしてたんですか?」

 !?

 なんで……そんな……。

 ……いや、今の感じは、表情的に……。

 ハッタリ。

「……柊、お前、そういうこと言うのはやめろ」

 ……。

「何言ってるんですか! 前、僕にあんな鮮明に相談しておきながら!」

 …………。?

(……どういう、……こと)

「先に言われちまったか……。そうだな……。俺は、佳鳥がメイド服を着るのは、絶対おかしいと思っていた」

 ……? メイド……て。

「そうですね……本人も居る事ですし、言いますか」

 え、な、なにを……。

「最近……」




 そんな程度の情け? で……。

「近々、メイド喫茶に派遣を考えてたんですよ。それも、一時間一万円の時給なら佳鳥氏ほどの手際と認識なら、一度は体感させてみるべきです」

「柊……お前、どこを考えればこんな優秀な奴を一瞬でも考え固めようっていう発想に……」

「…………」

 馬鹿馬鹿しくて、聞いてられなかった。私は、自分の意志で葉束くんや柊さんに関わってるのに……。

「いや、なんかアンディラン本部の変な人? が、でっちあげてるんですよ。お金があるからって、絶対に一生に一度はメイド喫茶したかったって……」

 柊さんの必死な声を聴くのは、これが初めてだった。

「あのなあ……」

「……いや、逆にそういう経験、我々少なくありません? だって、普段プログラムしかなくて、退屈してたんですよ僕だって」

「……」

 人が少ないこのご時世で、メイド喫茶……。敷居……。

 どれだけのスケイル……。

 びびりすぎて、着いていけなかった。

(悪い体験では、ないとは思うんだけど……? ……)

 確かに、そういう茶目はあったほうが、人生弾ける。けど……。

 もし飲み物をこぼしたり、ガラスを割ったりしたら……。

 破綻。理想の、破綻。

 ……理想。そういう、儚いものは、崩れた方がいいのかもしれない。

 でも唐突に、そういうチャンスは、やってくる。

(どうしよう……)

 バシッと決めた方が、葉束くんもお客さんとして来たら、決まるかもしれない。

 でも、今はそんなときじゃ……。

「幸い、いつでもいいとその変な人? ではないですけど、言ってます。僕たちは、弾けてることが、少ないんです。まったく……」

「……俺は客としても行かねえ、そんな場所。ふざけやがって」

「……っ……」

(苦しすぎる……)

 なんでこんな、究極の狭間に私はいるの……。

 脳内がまわって、引力に飛ばされた感じになる。

 柊さん……。一応そういうの考える人……? だったのかな。

 あたまがおかしくなって、言葉を出す。

「……柊さんて、女性好きなんですね……」

 ……。

「いや、そうですけど……」

「佳鳥……」

 最悪、最低だった。メイド喫茶…………あったほうがいいけど、出るとしても絶対に歳を取ってからだ。……多分。

「そんなことより俺は、はやくパケフルしねえとだめなんだよ。ガチでふざけやがって。そこをどけ。柊」

「葉束……せっかくの、華のある機会……いや、発案したのは僕じゃないですけど」

 ……ちょっと、待とう。確かに、悪い場所じゃない……と、今思った……。

 私は、女なんだ。

 メイド服を着て、お客さんから、かわいいなあ、と思われて。

 ミスをしても、それも良い感じ? になるかもしれなくて。

 たしかに、チャラいのかもしれない。

 でも、男と女なんて所詮、そんなものかもしれない。

 いつかはその線を越えるしかなくて……?

 ……。

 本性。出してみようかな。

「そろそろあの材料が完成するころなんだよ」

「……それはまあ、すいま―――」


 葉束くんの、腕を掴んだ。


「佳鳥……?!」

「はい……!?」

 葉束くんは、驚き顔を真っ赤にし、咄嗟に腕に触れた私の胸をちょっと離そうとしていた。

 柊さんは目を開いて、驚いていた。

「佳鳥……」

「……葉束と佳鳥氏って、もうそんな関係だったんですか? ……」

 …………。

 あれ……?

(何してるんだろう、私……)

 離した。腕を。

 私の胸は、平たいながらも熱く迸って鼓動していた。

 一瞬の事だったけど、焼き付いて。

 葉束くんは、取り繕うとした。

「……待て、俺は……。……仕方ない、言うか」

 私達三人は、立ち尽くしていた。何が起きたかわからないという、感じだった。

 察した葉束くんは、さっきアパートであったことを、話した。

「佳鳥は、さっき俺に告白し―――」




 説明が終わった。

 柊さんは、少し固まっていたけど、驚き納得していた。

「占いで……。しかも、的中したにはして、戻ってきたのですね。親は。しかも、佳鳥氏が告白……」

「俺は、なぜか胸に風穴……が空き、頭痛が……した。……」

「あの……」

 何故か、無視された。柊さんは、捕捉に入った。

「それはおそらく、……クェイサーれんだと思います」

「……クェイサー……?」

「はい」

 柊さんは、説明を続ける。

「過去に、そういうケースが一件だけあった話を、知ってます。その方達は、告白をしただけでお互いが距離を置き、つらくなり続けたといいます。……都市伝説かもしれませんが」

 都市伝説……。それが、私たちの恋……。

(……そもそも起きてるものは、私たちが発端? のはずだけど……)

 クェイサー恋。都市伝説だとして、そう深く考える必要は、ないと思った。私たちの恋が、そんなに珍しいものなら……。

 やましい心を持つわけじゃないけど、葉束くんにその気があるなら、どこまでも続きたいと思った。いつまでも、葉束くんを……。

「いや、俺は……正直、恋愛てのが無理で、確かにいずれ通る道だとは思ってたが」

「……葉束。いずれギルドを立てるなら、早い話飲むべきですよ。そんな男ずさりしてるより」

「……そうだが」

「……」

「早い話、屋敷でやってしまいなさいな。破廉恥なこと」

「な」

「へ」

 パンクする!! したかったけど……葉束くんと……。

「実際そのレールには乗ってるじゃないですか。年齢的に、おかしくはありませんし」

「まて……いってえ、マジでふざけるな!!」

 葉束くんは、自分の部屋に閉じこもりに行った。……頭痛……。

「あ、あの、葉束くんは、心霊現象が起こってて……」

「そんなものは関係ありません。すべては、葉束の男としての自覚が甘かったんです。いつもその節を避けて通って……仕方のない若者です」

 ……天罰かな……。私は、ひょっとすると悪くないのかもしれないけど、かといってそのスイッチを押したのも私……。

 私達、柊さんと私は顔を見合わせて、自分の部屋へ行き、何十分か考え事を、していた。反省を。

 私もその後一緒に寄り添うように、自分の部屋で葉束くんのことを考えながら、眠りについた。

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