おっさんがスタイリッシュ土下座を悪役令嬢にかました結果
俺は何故か、領主の娘に呼び出され。
屋敷へと連れて来られていた。
無茶振りをすると有名な、有名貴族のお嬢様。
立派な椅子に座って、偉そうにふんぞり返っている。
年は17と聞いた、俺の半分も生きてねえじゃねえか。
くそう、どうしてこうなった……。
渋々前へ進み出て、膝間付くと。
早速、とんでもない要求が。
「呼び出したのは他でも無い、お前が芸達者と聞いてな。わらわを笑わせて見せよ、なんてな。ぷぷっ。」
何だそりゃ? 笑わせろだって?
誰だ! そんなふざけた噂を流した奴は!
さては、レイズだな!
俺が先に上物の鹿を仕留めたから!
奴に腹は立つが、それよりも今は。
どうやって、この場を切り抜けるか。
自分で言ったダジャレに笑ってる位だ、簡単な筈。
そう思いながら俺は、顔を上げると。
冷たい目で見下している、お嬢様の怖い顔が。
俺にはっきり、こう言って来た。
「しくじった場合は……分かってるだろうな?」
こ、殺される!
考えが甘かった! 一度でも失敗したらアウトだ!
ヤバいヤバい、どうするどうする!
これまで真面目一筋、地道に狩りで生計を立てて来た身。
そのせいで、未だに独身なんだが。
このまま死ぬのかなあ、俺。
良い事も悪い事も無い、平凡な人生だったなあ。
駄目だ駄目だ、悪い方へ考えが向く。
気付くと俺は、15m程後方にまで下がっていた。
お嬢様はニタニタしながら、俺を見ている。
ああ行き詰まった、お終いだ。
だったらせめて、心からの謝罪を……。
俺はスクッと立ち上がり、お嬢様へ向けダッシュすると。
ズザザーッと、5mもの滑り土下座を敢行。
「申し訳ございませーん! 俺には出来ませーん!」
俺は恐怖で泣きじゃくっていた、すると。
椅子の方から『あはは!』と、大きな笑い声が。
お嬢様は俺の方へ歩いて来ると、情けない顔をした俺の頭をポンポン叩く。
そして笑いながら、こう言った。
「最高に面白い! 傑作だ!」
呆気に取られる俺、しかしお嬢様は続けて。
「悪ぶるのは、いい加減飽きたんでな。これからは、良い妻を演じようと思う。」
「へ?」
「お前、私の夫になれ。その実直さ、気に入った。」
こうして俺は、お嬢様と結婚してしまった。
今は楽しく、2人で狩りをしている。
そんな俺からの、一言アドバイス。
みんなも滑り土下座、しよう! なーんてな?