Dungeon Cooker
旅の途中立ち寄った廃城にて私は古びた日記を見つけた。内容を見るにこれは王都に名だたる『練兵場』の主、剣聖アレイストの旅の日記であると思われる、彼の若かりし日の旅の軌跡をこの日記で追体験できるとは歴史研究家として至上の歓びである。
……
水の精霊の月、18日
王都を発って早くも半年、ついに攫われた姫の所在が明らかになった、冥龍王グランゾウムの居城、各地で起こる王族の誘拐事件……まさか6大龍の一角がその首魁とは……我ら4人、精鋭なれど魔龍の居城に潜入し生きて帰れるか、願わくば光の精霊の加護を望む。
水の精霊の月、25日
相変わらず道行きは厳しい、城が近いのか空を飛龍が哨戒している……気になるのは昨夜城のあるであろう方角から恐慌状態の魔物の群れが現れた事だ、幾らか襲い掛かって来た魔物を倒したが
殆どは脇目も振らず走り抜けて行った、中には高ランクの魔物も混ざっていたのを確認したが一体あれほどの魔物が逃げ出すような事態とは何なのか? あまり考えたくないものである。
水の精霊の月、27日
遠くに城が見える、城が近付くにつれ身を隠せる場所が少なくなってきた、哨戒をしている飛龍の数も増える一方だ……地面には何かを燃やしたのか焼け焦げた跡があり大型の魔物の骨が散乱している、魔導師のリアの言うには明日明後日は雨が降る可能性が高い、視界の悪さに乗じて城に突入する、無事姫様を救出出来ればよいが……光の精霊よ、我等に一握りの勇気と祝福を……。
……
「上手く見つからずにここまで来れたな」
「リアの隠蔽魔法様々だな」
天を突かんとするような尖塔の立ち並ぶ巨大な城の裏門の前に、4人分の影があった。
「フレアが事前に用意してくれた魔布のおかげよ」
「アレスさんとダズさんが買ってくれたんですよ~」
緊迫感の無い会話にアレスと呼ばれた青年がククッと笑いを漏らす。
「どうしたんだ?」
ダズと呼ばれた青年が戦斧を担ぎ直しながら尋ねる。
「いやさ、なんかこう、これから突入ってのにいつも通りだなって」
「皆さん落ち着いてらっしゃいますもんね~」
「私にはあんたが一番落ち着いて見えるけど?」
リアの突っ込みに誰からともなく笑い出す。
「いや、でも本当にここまで来れたのは皆のおかげだ、ありがとう、感謝してる」
「やめてよね、突入前に感謝の言葉とか、そういうのは全部が終わってからでしょ?」
「作戦前の長話は肩に死神が留まるって言うぞ?」
「すまないすまない、それじゃあ行こうか」
意を決し扉に手をかける、ゆっくりと音を立てずに扉が開き、隙間から中の様子を伺う……そしてアレスはゆっくりと開いた時と同じに扉を閉じる。
「?? どうなさったんですか?」
扉を閉めた後アレスは眉間を押さえて動かない、心配そうに話し掛けるフレアの言葉も余り耳には入って居ない様子だ。
「どうした? ドラゴンの群れでもいたか??」
「少し、少し待ってくれ……リア、フレア……俺、何も状態異常には掛かってないよな??……おかしくないよな?」
「特に鑑定にはひっかかりませんよ~?」
「魔力の流れは正常だけど……どうしたの?」
様子のおかしいアレスを3人が心配する、アレスは大きく深呼吸すると意を決したように口を開いた。
「――べパしてる……」
「「「へっ?」」」
「……中でおっさんと若い女の子が鍋パしてる」
「「「はああ!?」」」
素っ頓狂な声を上げる3人だが、言われて気付いてみれば先程開いた扉からなんだかいい香りが漂っている。
「いや、な……鍋?? こんなドラゴンの巣で鍋??」
「アレス……あなた疲れてるのよ……」
「でっでもっ、状態異常にはかかってませんよ?」
「……よし、今度は俺が開く!」
ダズが扉に手をかけてゆっくりと開いてゆく……中を見て固まったまま動かなくなったダズの横から3人が恐る恐る覗き込む、扉を開いたことにより辺りは美味しそうな香りに包まれ……。
伺った扉の中で火を灯された燭台が囲む中、一組の男女が確かにちゃぶ台を囲んでいる……男性は30台後半といったところだろうか? 娘と思しき女性が茶碗におかわりをついで渡した辺りで二人が此方の存在に気が付き、慌てた様子で男性が近付いてくる。
「あの……もしかしてこのお城の持ち主さんでしょうか? 少し雨宿りに間借りさせて頂いております、申し訳御座いません」
いきなりの腰の低さに4人が面食らう。
(魔物や魔族の類いではなさそうか……?)
警戒心が少し和らいだが不可解な事が多すぎる、何より敵地のど真ん中である、迂闊に油断はできない。
「いえ、私達は旅の者でして……失礼ですがあなた方は……?」
「ああ、失礼致しました、私は旅の料理人でフレデリックと申します、フレディと呼んで下さい、あちらは妻のケリーです」
「っつ!?」
「……妻…?」
にこやかにこちらに笑顔を向ける女性はどう見ても十代前半である、料理人に偽装した奴隷商人か何かなのでは? 等の疑いの眼差しが向くが……。
「妻を紹介すると何故か皆さんそういう反応なんですよね、見た目が子供にしか見えないから……」
「私はもう28だし立派な大人です!」
「……! にっ!? 28……?」
ふくれっ面をすると更に幼く見える、だがどう観察しても……と、男性陣の視線が一瞬胸元で止まり、顔を見合わせ納得したように互いに頷く、視線の行方を見ていたリアとフレアから2人の脇腹に肘鉄が入った。
「こ……こちらこそ失礼しました、私は剣士のアレイスト、皆からはアレスと呼ばれています、仲間の戦士のダズ、魔術師のリア、僧侶のフレアです」
「冒険者さん達でしたか、私達は珍しい食材を探して諸国を旅している途中でして……突然の雨で慌ててここに避難したんです」
「珍しい食材……探索は旅の醍醐味ではありますがそれにしてもこんな危険な地域まで……」
「危険……ですか? いやはや、ここに雨宿りに入って気付いたのですが地図を逆さまに見て歩いていたらしくて……いつの間にか危険な地域まで来ていたとは参りましたねぇ……」
フレディが頭を掻きながら笑う、無防備なその姿に思わず皆の緊張感が抜けてしまう。
ぐうううぅぅ……
響き渡ったその音に振り返るとフレアが顔を真っ赤にして俯いていた、よくよく考えるとここ数日間まともな食事をとっていない、そこにきてこの美味そうな料理の香りである、ケリーがにっこりと微笑んでちゃぶ台の上を指さす。
「よかったら食べて下さいな♪沢山ありますから」
「い……いえ、食事中にお邪魔をしておいて、この上ご迷惑をかけるわけには……」
「いやいや、食事ってのは大人数で食べた方が美味いもんですよ、それに、とっておきのお酒もあるんですが…」
「ぜひとも頂かせていただきます!」
フレディが言い終わるが早いかリアが目を輝かせて答えた。
……
荷を下ろし、ちゃぶ台の周囲に集まった4人をケリーが甲斐甲斐しく世話している。
「おかわりもあるからどんどん食べて下さいね~♪」
久しぶりの温かい食事に皆涙ぐみながら食べている、無理も無い、敵地での潜入任務で迂闊に火を焚くこともできぬ環境である、このような荒んだ状態での温かい食事のなんと有難いことか。
「これ美味いですねぇ、南方で昔食べた魚料理に似てる……?」
「お、分かりますか、あれにアレンジを加えて東方の香辛料を加えてあるんです」
「どうしよう……このお酒、あり得ないくらい美味しい……でもこの香り……どこかで嗅いだような……?」
「色々な果実や薬草を漬け込んで作ってるんです♪よかったら製法をお教えしますよ?」
「あはは~……せかいがまわる~……アレスさん顔がぐにゃぐにゃ~……」
「誰だよ……フレアに飲ませたのは……」
温かい食事に美味い酒、機嫌よく振る舞ってくれるフレディにリアが尋ねる。
「そういえばフレディさんはどうして料理人になったんです?」
「どうして……ですか? 特に大して理由は無いんですが妻の影響ですかねぇ妻は子供の頃から料理が好きで……よく面白い料理を食べさせてくれました」
「ってことはお二人は幼馴染みとか? 馴れ初めとか気になる~♪」
リアとフレアが手を取り合い興味深げにフレディに詰め寄る、古今東西恋バナというのは女性の大好物である。
「い、いやあ、話して面白いものではないですよ、まあ、胃袋を掴まれたっていうかね……」
「やっぱり美味しい料理で籠絡されちゃった感じですか?」
尋ねるアレスにフレディはどこか遠くを見つめ答える、
「いや、恥ずかしながら私と妻は12も年が離れていましてね……なぜか昔から妻は私にべったりだったんですが、年の差もありまして……人目もありますし、私はなるべく当たり障り無く躱すようにしていたんです、その頃妻の友人が『男を落とすには胃袋を掴め』ってアドバイスをしたらしく……その流れで妻からプロポーズを……」
「美味しい料理でイチコロってわけですか?」
「それが、妻はどう勘違いしたのか僕の腹を掻っ捌いて物理的に胃袋を掴んできましてね、背後に積まれたハーブの山を見て、これは返事を間違えたら調理されかねないってね……」
笑いながら語るフレディにアレスとダズが凍り付く。
「まあ、実際はその隣にあったグレートボアを調理する為の物だったんですが、あの時はこいつは俺が付いてないと駄目になってしまう……なんて思ってしまいましてねぇ……」
「純愛だわ~!」
「私もそこまで燃え上がるような恋したい!」
凍り付いたままの男性陣と対照的な女性陣照れるフレディと女性陣は惚気話に盛り上がっている。
(今の話に共感できる所あったか……?)
アレスと顔を見合わせながらダズがふと気付く……。
「グレートボアは魔物のはずですが……どうやって調理したんです?」
確かにそう、魔物を調理するなど聞いた事が無い、そもそも魔物は魔素の塊であり、倒すと結晶化している爪や鱗、骨等を残して肉体は魔素を拡散させ消えてしまう、調理のしようが無いのだ。
「あ~、それはですね……」
フレディが答えようとしたその時アレスは首筋が粟立つ感覚に襲われ反射的に立ち上がった。
「フレア! 結界を!!」
フレアが結界を張るのに前後して天井から凄まじい炎が放たれる。フレアが張った結界がそれを受け止め、拡散した炎が空気を焦がす。
(俺は馬鹿か! 雰囲気に飲まれて警戒を怠るとは……! ここは敵地、ドラゴンの巣だぞ!!)
ブレスに合わせて落下してきた塊が地響きを立てて着地し、血のように紅い顎を開き耳をつんざく吠え声を上げる。
「っちぃ! 漆黒竜か!! リア! 呪文を詠唱! ダズはリアの護衛を頼む! フレアはフレディさん達を結界で守れ!」
(よりによってこいつが出てくるとはついてない……!)
漆黒竜は竜種の中でもその体躯からは想像出来ないほど素早い、鋭い爪、牙に加えブレスに竜魔術まで使う厄介な相手だ。
(リアの詠唱が終わるまで時間稼ぎを……!)
剣先で牽制しつつジリジリと間合いを詰める、爪牙を躱して意識をこちらに誘導する……命を背負う剣はいつも重い、汗ですべりそうになるそれをぎゅっと握り直したその時、杖を振る音と共にリアが叫ぶ。
「アレス! 下がって!」
叫ぶと同時にリアの頭上に巨大な火球が現れる、辺りを包む熱気、龍族には炎は効き目は薄いが怯ませるには十分な威力!
(火球で怯んだ隙をついて逆鱗を切り裂く!!)
火球が放たれた瞬間、踏み込もうとした足が固まる……アレスだけではない、皆が皆一様に唖然とした顔で前を見ている。
(箸と……茶碗……!?)
火球が放たれた刹那、飛び出したフレディが火球を茶碗で受け止め箸先で竜の鼻先を抓み動きを制していた、信じられない光景にただただ呆然とする4人に向かい落ち着いた様子でフレディが口を開く。
「えっと、リアさん? ちょっと火球に魔力を注いで火力を上げて貰えるかな? それだとちょっと火力が足りないんだ」
「えっ!? ……あ……は、はい……」
呆気にとられていたリアが指示に従い火力を上げる。
「それとアレスさん、僕の荷物から大皿とナイフを出してくれるかな? ちょっと手が離せそうにないんだ、」
「は……はい、わかりました……?」
あまりのことに思考が回らない、口を開けたままのフレアの横を通り過ぎ荷物を探る。
(手が離せない……? ああ、ドラゴンを箸で止めてたら
そりゃ手は離せないよな……箸? 箸ってなんだっけ?? 何の道具……? あはは、わかんないや)
「あ、ついでに胡椒も頼むよ」
「はい」
アレスが指示通りに皿を置きナイフを渡すとフレディが箸を開き漆黒竜を解放した、思わず飛び退いたアレスの眼前で更に信じられない光景が繰り広げられた……。
あらゆる呪文効果を半減させ、まともに打ち合えばミスリルも欠けさせると言われる竜鱗が只のナイフで切り裂かれていく、羽ばたけばゴーレムを吹き飛ばすと言われる翼を落とされ、鋼鉄をも引き裂くと言われる爪を飛ばされ、瞬く間に竜が加工されてゆく。
それは戦闘などではない、正に調理だった……呆気にとられ呆然とする中、火球が漆黒竜であった物の口中に突っ込まれ、起きた事を理解する暇を与える前に皿の上に漆黒竜のローストが鎮座していた。
「そういえばさっきの質問に答えてなかったね」
ナイフを拭きながらフレディが笑う。
「魔物の体は魔素で出来ている、魔素は魔物が死んだら空気中に霧散してしまう、君達の認識ではこうかな?」
「は……はい、今まで魔物を倒して素材以外の物が残った所は見たことが……それに、空気中に漏れ出た魔素を吸収する事で私達は肉体が強化されますよね?」
「魔物達はそれぞれ特定の手順を踏むことで魔素の流出を防ぎ、食材として使うことが出来るようになるんだ、そうして調理して食べた場合、魔物の持つ魔素を残さずほぼ全て吸収できる、それを妻が発見したんだよ。そして魔素を多量に含んだ食材は例外なく美味い、君達も魔力スポットに生えた果樹の実なんかを食べたことはあるだろう? あれと同じ原理だよ」
確かに聖地と呼ばれる場所では果実が名物であることが多い、神々の祝福がそうさせると教えられてきたがまさかそういうからくりがあるとは思わなかった。
「そういう未知の美味い物があるとなるともう妻は止まらない、そんなわけで、僕らはまだ見ぬ食材を求めて旅しているんだ」
「そういえばケリーさんの姿が……どこに??」
アレス達の顔がサッと青ざめる、先程襲ってきた漆黒竜は
姿を見せたときに吠え声を上げた……つまりはその声を聞いた竜が警戒して集まってきている可能性が高い、もしかすると城の主、冥龍王までも……。
「フレディさん! ケリーさんはどこへ!?」
「へ? ああ、少し前に料理が足りなくなりそうだから何か調達してくるって……確か馴れ初めを話してた辺りかな?」
「は、早く探しに行かないと!」
「ん? あ~、大丈夫だと思うよ? ほら、なんか匂いがしないかい?」
言われてみると今まで嗅いだことの無いようなえも言われぬいい香りが隣の部屋から漂ってくる、我慢しきれず扉を開いた先には……。
巨大な机を満たす見たことも無い料理、料理、料理。
「あら? 見つかっちゃった? 準備が出来てから呼ぼうと思ったんだけど……」
「そりゃこんないい匂いがしてたら分かっちゃうだろ? こっちにもいたからローストにしてみたよ」
「あら、ありがとう、それじゃあ私はシチューを仕上げてくるから皆さん食べててね~♪」
脳を支配する香りに疑問や心配が吹き飛んでゆく、美味い料理があり、美味い酒がある、ならばそれでいいではないか、何も考える必要は無いではないか。4人はそれ以上考えることをやめた。
……
「おい、おい! 起きろ!」
肩を揺さぶられ起こされたアレスが目の前の影に肩をびくりと跳ね上げる。
「なんだ、ダズか、ゴーレムかと思ったよ……」
「誰がゴーレムだよ、いい加減目を覚ませ」
辺りを見回すと片付いてはいるが昨日の宴会の形跡が見てとれる。
「夢じゃなかったんだなぁ……」
「俺もそう思う、んで、夢じゃ無いついでにこれを見てくれ」
「これは……?」
それは巨大な龍の頭骨だった、大きさだけでも漆黒竜の頭骨の4倍はある、更には特徴的なねじ曲がった一対の角……目を閉じ考え込むアレスの顔がみるみるうちに青ざめる。
「これ……まさか……」
角の形には見覚えがある、教会に飾られた壁画、神話の伝承の書物に描かれた挿し絵……。
「まあ、深く考えても仕方ない、ああ、あと、フレディさん達は朝早く発って行ったよ『昨日は楽しい夜を有難う、また会える日を楽しみにしてます』だってよ」
「一体あの人達何者だったんだろうな?」
「さあ? 精霊にでも化かされたと思った方が現実的かもな」
「違いないな」
二人で笑い合っていると、聞き覚えのある女性の叫び声が広間に響き渡る。
「きゃあああああああ!」
リアとフレアが起きたらしい、慌てて近付くと互いの顔や髪を触りあい、何かの確認をしているように見える。
「どうした!? 何かあったのか??」
「アレス~、ダズぅ~……これぇ~……」
リアが涙目でこちらに訴えかけてくる、が、何が何やら分からない。
「どうしたんだ? 何かなくなったのか? それとも……」
「なくなったのよぉ~……シミも、ソバカスも、枝毛も~」
「「はへっ?」」
アレスとダズが顔を見合わせる、確かに昨日までろくに水浴びも出来ずに旅をしてきた、改めて見ると二人の枯れ田の如く荒れ果てていた肌にはキメと艶が戻り、茨の如く枝毛だらけだった髪には天使の輪が浮いている。
「昨日の今日で一体何が……?」
「うおっ、俺の古傷も消えてる!!」
「嘘だろ!? 3年も前の傷が消えるか??」
二人が互いに体を確認するも確かに傷が消えている、訝しんでいると再びリアが叫ぶ。
「ああああああぁぁぁあ!!」
「今度は何だよ!」
「思い出した、あれ、ネクタルだ……」
「「「ネクタル??」」」
「エルフに伝わるらしい不老と美容の霊薬!魔術学校の錬金術過程で空き瓶の匂いを嗅がせて貰ったの! 世界中の錬金術師が求める万能の秘薬よ! ああああああぁぁぁ! 作り方聞いておくんだったあぁぁ!!」
「作り方なら、去り際にお前にってメモを預かってるぞ?」
リアがダズが差し出したメモをひったくるように奪い取ると舐めるように内容を確認していく。
「おおぉぉぉ……一攫千金のドリームがここにぃ……」
膝から崩れ落ちたリアを横目にフレアが神妙な顔をする、
「あの~……私……今気付いたんですけど……」
「フレアまで、神妙な顔してどうした?」
「あの……皆さん、ここに来た当初の目的、忘れてません?」
「「「あああああぁぁぁぁぁ!!」」」
今度は3人が口を揃えて叫んだ。
……
冥龍王を討伐し、姫を連れて王都に凱旋した英雄達はその後も目覚ましい活躍をしていった、その英雄達のうち二人は王が報酬に用意した爵位と領地を断り、王都に孤児院を開き、身分の分け隔て無く子供達の未来のために尽くした。
後に数々の英雄や大魔導師を輩出したこの孤児院は『練兵場』なる孤児院に似つかわしくないあだ名で呼ばれるのだが……それはまた、別のお話。
また、冥龍王討伐の英雄のうち二人が旅路の末に作り上げたという『美容薬』で巨万の富を得たのだが……これもまた、別のお話。
魔界でダンジョンを丸ごと調理するという『Dungeon cooker』と呼ばれる一組の夫婦に過去最大の懸賞金がかけられたのも……それもまた、別の、お話……。
………
「なー! あそこの孤児院でメシ食わしてくれるって!」
「え~? でも得体の知れない物食わされるってか-ちゃんが言ってたぜ?」
「でもさあ……あそこなんかすっげえいい匂いするんだよな!」
子供達が駆けていく王都の大通りの隅を、大きなお腹をさすりながら仲睦まじい様子の夫婦が歩いている……。
「嬉しそうだな?」
「えへへ~♪どんな名前つけてあげようかなって」
「男の子でも女の子でも無事産まれてくれたらそれでいいんだがなぁ……」
「この子は多分男の子よ♪あっ! 思いついた! 男の子だったらねぇ~……」
この十数年後、魔界から侵攻してきた魔王を『沈黙の最強料理人』と呼ばれる一人の料理人が討ち取るのだが……それも、また……。
「セガールって名前! どうかしら?」
別の……お話……。
読んで頂き真に有難うございます、
感想を頂けたら小躍りして喜びます、
罵倒?批判?私達の業界ではご褒美です。
「神域の従魔術師」という別の長編も書いてます、
そちらも見て頂けたら幸いです




