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バジリスク

 ゴブリン村に来てから5年が経った。

 村――とはもう言えない規模になっている。


 人口(ゴブリン口?)は1万に達しようとしている。

 俺が来たときはせいぜい数百くらいだったのに。ゴブリンの繁殖力すごすぎ。


 数が増えただけではない。文化もちょっと高度なものになった。


 レンガの家に舗装された道、それに不格好だけど焼き物も作っている。

 俺が(まつ)られている(ほこら)も大きくなった。もはや神殿といった方がいい。


 すごい。

 すごいの一言だ。


 そして俺自身にも変わったことがある。




種族:不思議な石

名前:山田

年齢:22

レベル:1215

HP:5000000/5000000 MP:5000000/500000


筋力:0

耐久:10000000

敏捷:0

魔力:10000000

魔防:10000000


神様指数:7892


《スキル》

神通力【B】 看破【C】 天変地異【ER】

暗視【G】 サイレントバイト【F】

フラッドストライク【D】 魔力効率【E】 


《称号》

海の支配者





 前と何が違うかわかるだろうか。

 そう、『神様指数』がゼロから上がっているのだ!


 それに伴って、【神通力】が使えるようになった。

 のだが……、


『【神通力】! えいっ! えいっ!』


 自分の身体を浮かせようと力を入れる。

 それをあざ笑うかのようにピクリともしない我が身体。


『動かないな~……。なんでだろう……?』


 自分以外のものは念力みたいにして動かせるのだが自分だけは動かせない。


 はぁ、とため息が漏れる。


 ちょっと落ち込み気味の俺の耳にコツコツと足音が聞こえてきた。この時間に神殿に入る奴は一人しかいない。我が友、ブーリンが来たようだ。


「ヤマダ様、お待たせいたしました」


 俺が収められている台座の前でブーリンが(ひざます)く。


『待ってないよ。それじゃ、今日も頼むな』

「はっ」


 ブーリンが俺をそっと手に収める。

 

 狩りの時だけブーリンに持ってもらい、それ以外の時には神殿でお留守番。

 それがこのゴブリン村での俺の過ごし方だった。







 * * *







 今日の狩りはブーリンとシリウスの二匹だけだ。


 インテリのゴブルィンは戦士長の役を務めているのだが、今日は戦士長として村の重役会議に出ているのだ。


「兄者、ここは俺が……」

「よし。心して挑め」


 今回のターゲットがイノシシ。

 シリウスが一人で狩るようだ。


 シリウスもすっかり一人前の戦士になった。

 彼はブーリンを敬愛し、尊敬の念を込めて『兄者』と呼んでいる。


 まだ気づいていないイノシシの背後から、シリウスはバッと飛びかかる。


「ブイィィィッ!」

「シッ!」


 スパッと。

 シリウスはきれいに首の太い血管を切った。


 イノシシは逃げようと走り出すが10メートルも行かずに地面に勢いよく倒れる。


「ブイィ……ブブ……」


  ほぇ~……。

 上手く狩るもんだなぁ。


 ブーリンも満足そうに眺めていた。


「良い腕だ」

「兄者……! ありがとうございます!」


 弟子の成長が見られてブーリンも顔を綻ばせている。

 暖かなひと時、微笑ましい光景。


 ――そんな平和な時間に限って、災厄は訪れるのだ。


 突然、一斉に森の鳥たちが飛び立った。

 静寂の中に羽ばたく音だけが騒々しく響く。


「なんだ……?」

「兄者……う、うしろ……」


 シリウスの声に、俺たちは同時に振り向いた。

 猛烈に嫌な予感がする。


「コイツは…………ッ!!??」


 ――視界をすべて覆ってしまうほどの体躯を持つ竜が、そこにいた。


 翼はなく、足がかなり太い。

 深い紅色の皮膚に金色の眼。

 口から覗く凶悪そうな牙。


 その竜が大きく息を吸う。

 そして、




「――――――――ッッッ!!!」




 耳を裂くような咆哮。

 どう形容すべきか。金属が砕けるような音だった。


 コイツはヤバい。

 本能とか、生物的な勘とか、そんなもの関係なくわかる。

 コレは弩級の相手だ。


「あ……あぁ……」

「…………っ!」

『……ッ! 【看破】!』



種族:バジリスク

名前:アレックス

年齢:627

レベル:6800

HP:300000/300000 MP:75000/75000


筋力:69700

耐久:82300

敏捷:73540

魔力:43760

魔防:39112


《スキル》

石化の視線【C】 大烈斬【D】

魔力効率【E】 自動回復【C】 火炎放射【E】

神格(準)【B】


《称号》

山の支配者



 リヴァイアサン級の大物だった。

 スキルも凶悪だ。特に【石化の視線】は危険すぎる。


『ブーリン、シリウスを逃がすんだ。俺たちでこの怪物を倒すぞ』

「はっ! ……シリウス、お前は村に戻り、このことを皆に伝えよ」

「そ、それじゃあ兄者が……ッ!」

「かまわん。行くのだ」

「でもッ……」

「行けというのが分からんかッ! たわけぇッ!!」

「……ッ! くッ……!」


 シリウスは背を向けて走り出した。


 言っている間もブーリンはバジリスクから視線を逸らさない。

 ブーリン(こいつ)、ホントすげぇよな。

 あんな化け物を前にしてもまったく乱れがない。

 ゴブリンにしとくにはもったいない器だ。


『あいつはバジリスクだ。ブーリン、一撃でももらえばお陀仏だぞ』

「あれがバジリスク……! 『山の神』が相手とは……」


 奴は俺の力を知らない。

 不意を打てる最初の一手がカギだ。


 魔力は俺の方が圧倒している。油断しなければ俺に分があるはずだ。


『ブーリン、静かに俺を奴に向けるんだ。一発で終わらせる』


 こくりと静かにうなずき、ブーリンは俺をバジリスクにかざす。


『【フラッドストライク】!』


 ――ドオォォォッッッ


 激流がらせん回転をしながら、目の前のすべてを吹き飛ばした。

 周りへの被害がでかすぎるから封印していたスキルだが、今はそんな影響とか考えている余裕はない。


「おお……!」


 ブーリンが感嘆の声を漏らす。

 今のステータスになってから初めて放つ、加減なしの【フラッドストライク】だ。いかにバジリスクといえど塵も残るまい。


 ふふ、バジリスクも消し飛んだようだ。


 いや待て。

 バジリスクを倒したというメッセージ(・・・・・)が出ていない(・・・・・・)


『ブーリン! 後ろだ!』

「――ッ!?」


 

 静かに、冷酷に。風を切る音がかすかに背筋に触る感覚。

 その音を聞いた瞬間には既にブーリンの首元に背後からバジリスクの爪が迫っていた。


『【神通力】!』

「ギィアッ……!?」


 寸でのところでバジリスクの動きを止める。

 ……危なかった! まさか【フラッドストライク】を躱されるとは思わなかった。


 この化け物、こんな巨大な体のくせに恐ろしい速さで動きやがる……!


 ギリギリとバジリスクの力と俺の【神通力】が拮抗する。

 くそっ。【神通力】を使っている間に他のスキルも使えたら一発なんだがな……。


『ブーリン、俺でもずっとはコイツを止めてられないっ! 避けてくれ!』

「はいっ!」


 地面を蹴り、バックステップで距離を取る。


『奴は【石化の視線】っていう、相手を石にするスキルを使う。十分気をつけろよ!』

「わかりましたっ」


 【神通力】から解放されたバジリスクはシュロロロと喉を鳴らした。

 一瞬でも集中力を切らせば終わる。


 ジリジリとにらみ合いが続く。

 

 バジリスクの敏捷性はさっき身に染みて分かった。

 先に動くと奴を見失いかねない。ここは相手の出方を慎重に見るべきだ。


 ひゅっ、とバジリスクがスキルの予備動作に入った。


『来るぞ!』

「…………ッ!」

《スキル:【火炎放射】を獲得しました》


 逃げ場の無いほどの規模の炎が押し寄せる。

 これが【火炎放射】か。まんま【フラッドストライク】の炎版だな。


『【フラッドストライク】!』


 俺のスキルで奴の技を相殺する。


 魔力ではこっちが上なんだ。

 スキルの威力じゃ負けねえよ!

 

 水と炎がぶつかり、一気に水蒸気が広がる。


 まともに撃っては避けられる。

 であれば、避けられない状況に誘い込む必要があるが……。


 む、そうか……!


『よし! 崖に向かって走れ!』


 視界を遮れたところで、俺はブーリンに指示を飛ばす。

 まずは一度体勢を立て直すんだ。


 だがそう簡単に奴は撤退を許してくれなかった。


 ――シュンッ


 水蒸気の霧を突き抜けて俺に光線が当たる。


『まさか……ッ!』

「ぐああああああッ!!!」

《スキル:【石化の視線】を獲得しました》


 やられた!

 俺を握っていたブーリンの手が見る見るうちに石になっていく。


『ブーリン……! まずい、俺も石にされ――』


 と思ったら、俺はもともと石だった。

 なんだ、一安心。……じゃないっ! ブーリンが石になっちまう!


「ぬうぅぅああああああッッッ!!!」


 ブーリンは俺をもう一方の手に持ち替え、石になった腕を槍で切り落とした。

 ボトリ、と鈍く小さな音でブーリン腕が地面に落ちる。


「フーッ……フーッ………ぐッ!」


 肩を押さえ、服の一部を破って傷口に縛り付ける。強引な止血だ。


 ためらいもなく自分の腕を切るとか……凄まじいな。

 鬼気迫る覚悟だ。


 だがしかし、休んでいる暇などない。


『ブーリン! 走れ!』

「はっ!」


 俺の命令に従って駆け出すブーリン。

 しかし奴はそのあとをすぐに追ってきた。


「シャアアアアアアアッッ!!!」


 地響きで森を揺らしながら、バジリスクは俺たちに接近する。


 ――速すぎる……ッ!


 このままではすぐに追いつかれる。


『【サイレントバイト】! 【サイレントバイト】!』


 こっちからもスキルの斬撃で妨害するがことごとく躱される。

 リヴァイアサンとは系統の異なる強さ。かなり厄介だ。


「ヤマダ様! もう崖です!」

『よし! そのまま飛び降りろ!』

「はっ!?!?」

『いいから! 俺を信じろ!!』

「……ッ!」


 ブーリンは歯を食いしばる。

 目をつぶり、思い切り地面を蹴った。

 直後、


「ぐはあっ!?!?」

『大丈夫かッ!?』

《スキル:【大烈斬】を獲得しました》


 ブーリンの右足が胴体と離れ、宙を舞う。

 バジリスクのスキルが直撃したのだ。


 片足を失い、バランスを崩したままブーリンは落下する。


「キシャアアアッッ!!!」


 バジリスクもそれを追い、崖に飛び込んだ。

 ――計画通りだ!


 痛みに顔を歪めるブーリン。


『俺を天にかざせ!!』

「な、なるほどっ……!!」


 俺の意図を察したブーリンが落下しながら俺をバジリスクに向ける。


『【フラッドストライク】ッ!!』

「ガアアアアアアッッ!!!!」


 空中なら避けられまい!!

 俺のスキルが落下するバジリスクに向かって飛んでいく。


 それに対抗するように【火炎放射】を発動するバジリスク。

 だが、俺の【フラッドストライク】は容易くその炎を突き抜ける。


「ギシャアアアアアアアアッッ!?!?!?」


 バジリスクを貫通する【フラッドストライク】。


『ダメ押しだぁっ! 【フラッドストライク】!』

「グシャァッーーガアアアアッッ……!!」

《バジリスクに勝利しました》

《レべルが上がりました》

《レベルが上がりました》

《レベルが上がりました》

《称号:【山の支配者】を獲得しました》


 よっしゃ!


 俺は急いで【神通力】を使ってブーリンを浮かせる。


「うおおっ!?」


 地面すれすれでブーリンが静止した。

 ギリギリだったな。

 あと少し遅かったらブーリンが地面に激突するところだった。


 ゆっくりとブーリンを地面に降ろす。


 だが……。


『ブーリン……足と腕が……』


 勝利の代償は大きなものだった。

 右足と左腕をなくしたブーリンはもはや一人で立つことはできなくなっていた。


 それ以前に出血がひどい。

 このままでは失血死してしまう。


「く……はは……ッ。『山の神』たるバジリスクを打ち取ったのです……。この程度で済んだのは幸運ですな……」


 息を切らし、地面に伏すブーリンは……笑っていた。

 曇りもなく、すがすがしいくらいに。


「バジリスクを野放しにしては我らゴブリン族は絶滅していたでしょう……。ヤマダ様、感謝します……!」

『いい! しゃべるな!』

「ヤマダ様……一つだけお願いが……ぐぅっ!?」


 ブーリンが言葉の途中で胸を押さえ始めた。


「ぐあああっ……!!」


 ゴキン、バキバキ、と。

 骨が軋む音がする。これはまさか……。


「うっ……ふぅ」


 スッキリした顔になるブーリン。



種族:ロードゴブリン

名前:ゴー・ブーリン

年齢:10

レベル:699

HP:20000/20000 MP:20000/20000


筋力:12760

耐久:11200

敏捷:9852

魔力:7650

魔防:4832


《スキル》

剣術【G】 槍術【G】

啓示【B】


《称号》

預言者

伝説の超ゴブリン



 はあっ!?

 進化するにしても強くなりすぎだろ!


 ブーリンは進化したことの影響か、腕と足が治っている。

 さらに姿も全然違うものになった。

 

 端的に言うと、イケメンになった。


 きらめく銀髪に金色の瞳。

 細マッチョのスラッとした身体。慎重は180センチくらいか?


 普通に人間と同じ姿になっていた。

 ……肌は緑色のままだけど。


「これはいったい……?」


 トンデモ進化に本人が一番びっくりしていた。


ゴブリン編、次話で終わりです。



タイトル変更しました。

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[良い点] はじめまして。良作の予感…続きも楽しく読ませていただきます!
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