仲間
今日は休日。
アテナ、ルミナス、トウドウの3人はリロと一緒に帝都の繁華街を巡っていた。なんだかんだでリロとの間には友情が芽生えていた。
そして今はルミナスお気に入りの喫茶店でまったりしているところである。
「とても大きな街ですね……」
リロが興味深そうに窓の外を見る。
この子にもいろいろと世話になったな。
最初は領主かと思われていた彼女だが、本職はラザロスの秘書らしい。ラザロスが拾った孤児だったらしいが、そのあたりの事情は今はいいだろう。
今回の遠征を終えて変わったことがいくつかある。
まずは戦吏ランクが全員上昇した。
ルミナスとアテナはともに【B】に昇格し、トウドウは【A+】となったのだ。
間違いなく学院の中でもトップランクのチームだな。
さらにそのリーダーであるアテナは特待生に選出されることになった。
授業料の免除とかの特典があるらしいが……詳しくは知らん。
そして何より、
「まさかアテナが騎士になるとは……」
ルミナスが感慨深そうにつぶやいた。
騎士爵、つまり貴族だ。
豪商でもない平民が爵位を受けるのは相当に異例なことらしい。
それもこれもラザロスとアカシア校長の推薦の結果だ。
まあ貴族と言っても領地もなければ奉納金支払いの必要もない。名前だけのもんだ。
「でもなんでラザロス様は私なんかを騎士に推薦したんでしょう……?」
「それは旦那様のお気遣いです」
リロちゃんがぺたっとした胸を張って答える。
「ヘカテイアさんのお父上のことを探るには貴族であったほうが融通が利くだろうとの配慮だそうです」
「そういうことだったのですか……」
へえ、なるほどなぁ。
ラザロスはなんだかんだ言っていい奴なのだろう。
見直したぞ、ラザロス。
「ところで一つ聞いてもいいかい?」
リロに向かってルミナスが口を開く。
「なんでしょうか?」
「大したことではないんだけど、その服はどこで買ってるんだい?」
話すルミナスの視線はかすかに揺れるゴスロリのフリルを向いていた。
……確かに気になる。
というか、今更ながらにこの子はずっとゴスロリを着ているのだ。馬車の御者をしてくれていた時も、帝都巡りをする今も。
以前、ちらっとみえたリロの鞄には同じゴスロリ服が何着も入っていた。本人が相当好きなのだろう。
と、思っていたが、
「すみません、どこ売っているのかはわかりません……」
申し訳なさそうにロリっ娘は呟く。
「自分で買ったんじゃないの?」
「はい。旦那様からこれを着るようにと言いつけられています」
淡々とした口調だった。
「「「…………」」」
3人の間で気まずい沈黙が流れる。
ラ、ラザロス……。
権力を使って中学生くらいの女の子にゴスロリを着せるとは……。
想像以上に欲望に素直なジジイだった。
せっかくさっき見直したのに。
「そ、そうだ!」
ぎこちなくルミナスが声を上げる。
あからさまに話題転換しようとしている。
まあ正しい判断だろう。
「この後ダガーを見に行きたいんだけど、いいかな?」
「いいですね。私も旦那様の護衛として新しい短刀が欲しいと思っていました」
「……良ければ某が良い業物を選定しよう」
十代の女の子が4人も集まったというのになぜ武器屋に行くことで盛り上がってしまうのか……。お兄さんとしてはもっと可愛い店に行って欲しかった。
女の子同士で水着の見せ合いっことかして欲しかった。
俺の思いも虚しく、乗り気になっている3人に向かってアテナが微笑む。
「タマが選んでくれるなら安心だね」
アテナの声は楽しそうだった。
今回の仕事でいろんなことが変わった。いい意味でだ。
アテナが騎士爵を得て。
みんなの戦吏ランクが上がって。
大きな成果を得た。
けれど一番の収穫はそのどれでもない。
「ま、待て。某のことをそんな風に呼ばれると……その、いささか恥ずかしいのだが……」
「いいじゃないか。ミタマ・トウドウなんだからタマで」
ニヤニヤと笑いながらルミナスがトウドウをツンツンする。
トウドウは気まぐれでなんか猫っぽいし、タマというあだ名は合っている気がする。
「でもタマって呼びやすいしかわいいよ!」
無自覚にタマちゃんの羞恥心に追撃をかますアテナ。
可愛いとか女の子っぽいものとかと無縁に生きてきたであろうタマにはクリティカルかもしれない。
「うう……もう好きにしてくれ……」
ついにサムライガールは屈した。
――――タマが仲間になった。
そのことに比べれば騎士爵や戦吏ランクの変化なんて些細なことだ。
ただ同じチームにいるってだけじゃない。
互いの信頼が見える。
仲間が増えた。
この数週間の出来事はただそれだけのことだ。
神がどうのこのとか、侵略がどうだとか。
全部小さすぎる。
俺にとっちゃ、こうやって女の子たちが仲良くしてるのを眺める方が大事だね。
これに第二章は終わりです。
第一章終了時点では第二章を全部書いてから投稿する予定でしたが、なかなかプロット通りにはいかず……
ブラックな現実の合間を縫ってなんとか執筆を続けてきました(途中、何カ月も休みましたが)。
書く気力が消えなかったのはひとえ読んでくれる方々がいたからです。本当に感謝が絶えません。今後ともよろしくお願いします。




