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会心の一手

【トウドウ視点】


「おい黒騎士。いやゴー・ブーリンと言ったか、アンタレスが起き上がっているぞ!」


「奴は先ほどの一撃でやられるほど柔な相手ではなイ。当然だろウ」


「追ってきているぞ……!」


「残念だが君を庇いながらでは勝てン。だが心配はいらン。我らのほうが移動速度は上ダ」


「そ、そうか……」


「しかしアンタレスより、あの巨人のほうが問題だろウ」


「……そうだな」


 あの巨人、もし倒せる者がいるとしたらきっとヘカテイアの魔石だけだ。


 ヘカテイアが【降臨】というスキルを行使できればなんとかなるという話だったが……。おそらくまだ街にたどり着かず、MPポーションで回復できていないのだろう。


 しかもあの巨人、こともあろうに街に向かっている。


 ……もどかしい。


 ここでは私はヘカテイアたちの手助けをすることは出来ない。ただ顛末を見届けることしか――――いや、そうか!


 ――できることはある。

 今の私でも手伝えることはある。


「【鬼火】!」


 アンタレスに向けてスキルを放つ。

 そんな私に黒騎士は怪訝な声を漏らす。


「どうしタ? そのような攻撃をしても目くらましにはならなイ」


「違う。これは仲間に向けた合図なんだ……!」


 言いながら、私は【鬼火】を連発する。

 ヘカテイア、気付いてくれ…………!!


「なんダ? アンタレスの位置を光らせればいいのカ?」


「そうだ。そうすれば――」


 そこまで言ったところで、黒騎士がパチンと指を鳴らした。


「―――――――ッッ!?!?」


 黒騎士がスキルを使ったのだと気づいたのは、極光に包まれるアンタレスを目の当たりにした時だった。


 ――どこまでも規格外。

 息を飲むような眩く力強い光だった。

 






 * * *







《破壊神アトラスが降臨しました》



『おいおい……!』


 その文字を見て俺の焦りは度合いを増した。山よりも高い、それも遥かに巨大な巨人が腕を振り上げている。その手には、同じく異常にデカい槍が握られている。


(アレ)を振り下ろすつもりか……!?』


 あんなの食らったら街ごと吹き飛ぶぞ……!!


「お、おい! なんとかならんか!?」


 ラザロスの叫びが御者席のアテナにぶつけられる。そのラザロスの横ではリロがガタガタと震えていた。


「…………ッ!」


 間に合わない……!

 一か八か、俺が攻撃して槍を弾き飛ばすしかないか……!?


 ――その時、目の端で何かが煌めいた。

 地平線の側で大きな光が現れたのだ。


「ヤマダ様……あの光は……?」


『ああ……』


 そうしている間に刃渡り数キロ、数十キロほどもある槍が振り下ろされた。その切先は雲を割り、隕石(メテオ)の如く赤熱している。


 クソッ……!

 やるしかない!!


『【フラッド―――』


「ヤマダ様待ってください!!」


『っ!?』


 驚き、アテナを見る。

 するとアテナはなぜか光の方を見ている。


「ヤマダ様! あそこに向かって攻撃してください!! 全力で!」


『どうして……いやわかった!』


 アテナのいうことだから考えがあるはずだ。

 空の槍に向けていた照準を地平の光った地点に移し、【フラッドストライク】を撃ち込む。


 放たれた水流はほぼ水平に空中を走っていく。

 螺旋回転をした水流は光の中に吸い込まれていき――







《アンタレスに勝利しました》






『…………は?』


 そして続けて、呆気にとられる俺の視界に、


《レベルが上がりました》


 という文字が現れた。

 これは一体……?

 ――――ああ、なるほど。

 そこまできてようやく俺はアテナの考えを理解した。アテナだけではない。トウドウの考えもだ。


 これは――コンビネーションだったのだ。


 あの光は無論、トウドウが出したものなのだと考えられる。トウドウの【鬼火】の光の強さではここからだと見えないはずだが……そこはどうにかしたんだろう。


 それよりも重要なのはレベルアップした(・・・・・・・・)ということ。

 俺でさえレベルアップしたということは……



種族:人族

名前:アテナ・ヘカテイア

年齢:14

レベル:95

HP:10,000/10,000 MP:5,034/15,000


筋力:467

耐久:713

敏捷:501

魔力:1609

魔防:1520


《スキル》

共感覚【G】 念話【G】 憑依【D】 

啓示【B】 降臨【A】

灯火【G】


《称号》

巫女



 アテナもレベルアップしているということだ。

 レベルが上がるとMPもわずかに回復する。


 つまり、爆発的にレベルアップすれば――――


「【降臨】!」


 ――スキルが使えるほどのMPを回復できるってわけだ。

 アテナのスキル行使によって、俺の身体が石から解放されていく。



 ――『アンタレスを倒してMPを回復する』。



 トウドウとアテナが同時に同じ考えに至ったからこその奇策。


 ルミナスも含め、3人とも本当によくやってくれた。出来うる限りのことを成し遂げてくれた。


 ならば、ここからは……






「ここから先は(おれ)の時間というわけだ」






 降臨し、馬車上に立つ俺をアテナは不安そうに見上げる。


「ヤマダ様……」


「アテナ、ここで待っていろ」


「……はい」


「――すぐに終わらせて来る」


 言って、槍の刃の真下に向かって加速する。


 一切の油断も加減もしない。

 力の全てであの破壊神を倒す。


 街で一番高い所――すなわち領主の屋敷の屋根に立ち、迫りくる巨刃に向かって両腕を掲げた。


「グオオオオオオオオオッッ!!」


 アトラスが吠える。

 それに呼応するように槍の速度が上がる。


「とてつもない破壊力だ。だが――」


 俺はその槍を――――白刃取りする。

 途端、爆風によって街中のガラスが割れ、壁に亀裂が入る。


「だあああありゃあああッッ!!!」


 槍を蹴り上げ、大きく跳躍する。

 俺の身体は瞬時に雲を突き抜け、ついにアトラスの顔を視界に捉えた。


 その眼は血走り、とうに理性など消え失せているようだった。


「ウガアッ……ガアアアアッッ!!」


「アトラスよ、とりあえず移動してもらうぞ」


 雷鳴の鳴る雲を眼下に、俺はアトラスの顔面を蹴り飛ばす。


「ガッ!?!?」


 さらに立て続けに一発、全力を以って蹴りを叩き込む。


「ゴハアァッ……!?!?」


 その渾身の一撃に巨体が浮いた(・・・)

 そして音速を遥かに超える速度で、弾丸の如く彼方に吹き飛んでいく。


 ――ドゴオオオオオッッッ


 アトラスの巨体は数千メートル級の山脈に激突することでようやく静止する。


 ――俺は自分が神だなどとは思っていない。

 それでも今はあいつらの神であろうと思う。



 これは――――神と神の戦いだ。

 





中ボスクラスなのにMPポーション代わりにされるアンタレスさん……

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