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人vs神 2

ちょっと長いです。


分割しようか迷ったんですが、一つの戦いを何話にも渡って続けるのはあんまりよくないかと思いまして……

【トウドウ視点】


 幾重もの槍の剛閃を斬り払う。そのたびに腕に重い衝撃が走る。


 さきほどよりアトラスの動きが鋭くなっている。威力も槍の速度も増している。打ち合うたびに(なび)く草木がその破壊力を物語っている。


 どこから来るか分かっていてもなお強い。一瞬でも集中を途切れさせては決定的な一打を食らいかねない。


「そおら――よッ!!」


「……ッ!?」


 風を切り裂くような中段突きを二刀で受ける。が、勢いを殺しきれず両足で地面をガリガリと抉りながら身体が後退していく。

 

「――【ゴーディアスブラスト】ッ!!」


(スキルか――――!?)


 その直後、受け止める槍の圧が急激に増した。


 まずいな、これは。

 ――抑えきれない。

 そう考え至った瞬間、私は跳んだ(・・・)


「うおッ!? 槍が……ッ!」


 槍を刀の上で滑らせる。

 そして衝撃を斜め上に逸らし、サマーソルトのように体を一回転させる。相手の槍の威力を回転エネルギーに変えることで強引に受け流したのだ。


 さらにその回転の最中、この勢いを利用しアトラスの顎を足刀で下から叩き上げる。


「がッ――――」


 炸裂音と共にアトラスの身体が打ち上げられる。

 蹴りの風圧だけで背後の岩にはヒビが入っていた。


 相手の攻撃の力を利用したカウンター。

 そこらの冒険者なら今の一撃で即死している威力だ。


 そんな一撃を受けたアトラスは地面に向かって落下し――受け身を取った(・・・・・・・)


「やるじゃねえか」


 獰猛な笑みを浮かべる。


 まるでダメージなし、か。この攻撃力、耐久性……巨大な獣と戦っているかのような圧だ。


「認めざるを得ないな。ミタマ・トウドウと言ったか、確かにお前は強い」


「……そうか。光栄だな」


「だがそれはあくまで人間にしては、だ。やはりお前では俺には勝てん」


 その瞳に先ほどまでの怒りはないように見えた。

 しかしその落ち着きを取り戻した眼に、むしろ先ほど以上の恐怖を覚える。


 ある程度の技量を持った相手の場合、冷静な方が恐ろしい。


「はっきりと断言しよう。お前が俺に勝つ可能性はゼロだ」


「……そういう割にお前の身体には私が付けた刀傷があるが、まさか手を抜いていたとでも言うつもりか?」


 確かにアトラスは強い。

 今も会心の一撃を受けて平然としている。


 だが――次元が違う?

 むしろ逆だ。


 私たちは現に同じ次元で戦っているではないか。


 ヘカテイアが魔石から聞いたと言っていたアトラスのステータスも高いとは思えなかった。


 アトラスの能力値――。

 筋力・耐久・魔力……すべての値が1000というのは決して低くはない。だがそれ以上のステータスを持つ人間も少なからずいる。校長のアカシアだってそうだ。


 つまり、基礎能力は人間並み(・・・・)なのだ。


 しかし、だからこそ、疑念が頭から消えない。

 

 この男がヘカテイアの魔石――ヤマダと同じ神ならば。

 その力が人間並みであるはずがない……!


「神アトラス、お前は今、本気を出せない(・・・・・・・)状況にある(・・・・・)。そうだな?」


 言った途端、アトラスの顔が険しくなる。


「その通りだ」


 ゆっくりと。

 槍で地面をガリガリと削りながら奴はこちらに向かって歩き始めた。


「俺たち神は自力でこの世界に降り立つことは難しい。だから何かしらの制限を課して仮の身体で顕現(けんげん)しているのさ」


「制限……?」


「俺であれば〈能力値の大幅な低下〉。お前のところの神なら〈小石への封印〉、ってな具合だ」


 しかしだ――――と、アトラスは軽く天を仰ぎ言葉を続ける。


「何と言ったらいいか……神は存在がデカすぎてそのまま降臨すると世界がパンクしちまうんだ」


「…………? いまいち要領を得んな」


「この世界は神を受け止められるほどの基盤がないってことだ。だが信仰が集まればその限りじゃねえ。信仰によって世界に神の土台ができれば神は一切の制限なしに顕現できる」


「……なに?」


「無論、今は信仰が十分でないから無理だ。まあなにが言いたいかというと、お前は俺の力を理解したつもりだろうが、そう甘くはないってことだ」


「……まだ隠している力があると?」


「そうだ。例えば――」


 言って、アトラスは指をパチンと鳴らした。

 なんだ?

 スキルを発動した気配はない。いったい何を――





   「―――ギィィィイイイイアアアアッッ」





「ッ!?」


 遠く、何か(・・)が轟声を上げた。


「まさか今のは……!?」


「アンタレス。俺のペットだ」


「なッ……!?」


 ぺ、ペット……だと!?

 いくら神といえど、神王獣を飼い慣らすなど……!


「アンタレスは俺に従順でな。今から市街に向かわせることも可能だ」


「正気か……!?」


「もちろんそんなことはしない。あの地の領民は大事な信者になってもらうつもりだからな」


「……しかし私たちにアンタレスを仕向けることはできる、と?」


「そういうことだ」


 アトラスが二ィ、と口角を上げる。だがその眼は笑っていない。戦士の眼光だ。


「そしてまさに今、ここに向かわせている。俺に傷を付けた以上お前を生かしておくことは出来からな。手段は選ばんぞ。アンタレスが着くまであと数分か数十分か……さあどうする?」


「…………ならば……あの怪物が来るまでにお前を倒すまでだ」


「ふん、この状況でも威勢を保つか。まあいい……【ティタノブレット】ッッ!!」


「――ッッ!?」


 槍の――嵐……!


 空間を飲み込むほどの突きの暴風――――。

 なんという密度か……!

 まさしく、『神速』。

 だが、私ならば――


「はあああッッ!!!」


 ――撃ち堕とす。

 考えるのではない。目で見るのではない。


 常に未来(さき)を視るんだ……!


「【閃域】ッ!」


 二刀を同時に振るい、槍の嵐に一筋の道を作る。

 即座に加速、突貫。

 攻めている敵にこそ隙は出来る。つまり、この槍の猛撃の時こそ好機。


「なッ!? この槍を掻い(くぐ)るか……ッ!?」


「――【雷霆斬】!!」


 雷を刀に纏わせ、狙うはアトラスの手首(・・)。小手だ。


「ぬうッ……! 【ゴーディアスブラスト】!」


 刀を握る手にとてつもない衝撃が走る。

 直後に爆音が全身に直撃する。


(骨が……軋む……!!)


 スキル同士の衝突。

 気を抜けば一気に吹き飛ばされる……!


「ぐッ…………おおおおおおおッッッ!!!!」


「小癪な……ッ――!!!」


 その時だった。





 ――――ピシッ。





 手に、何かが崩れる感触がした。


(あ――――)


 気付いた時には遅かった。


 ――バキィィインッッ。


「ハッ! 技量こそ同格でも武器の性能が違い過ぎたな」


 太刀が粉々に砕け散る。

 まるで花びらのように、破片が散る。


 舞い散る花弁の間から突きが迫る。


「ぐッ……」


 残った脇差で弾き、距離を取る。

 だが、


「俺に間合いなどない。そんなことわかってるだろ?」


 瞬間、未来を視た。

 ――心臓を貫かれる自身の未来を視た。


(まずいッッ……!!)


 咄嗟に槍先と心臓をつなぐ軌道に右腕を差し込む。

 直後、右腕をアトラスの槍が貫通する。


「うぐッ……アアアアアアアッッ!!」


 貫かれた腕を振るい、強引に槍の軌道を逸らす。

 そのままアトラスに蹴りを入れ、槍を腕から引き抜いて再び距離を取る。


「凄まじいな……。人間にしておくには惜しいほどだ」


「ハァッ……ハァッ……ッ!」


「お前も神器を手にしていたならこんな結末にはならなかっただろう」


「…………」


 アトラスは追撃をしてこなかった。

 否、追撃の必要がないと判断したのだ。


 ――勝負は決したと判断したのだ。


「トウドウ、此度の戦いは十分に楽しかったぞ」


「……もう勝ったつもりか?」


「得物の一つを失い片腕も潰れている。そんなお前に何ができる? 諦めろ、お前の負けだ」


「……私の負け、か」


 そっと右腕を左手で撫でればベットリと赤い血が着いた。

 ――――右腕が動かない。

 指一つ動かせない。

 この状態でアトラスと打ち合うことは不可能だ。


 なるほど。


 確かにこれは私の負けかもしれない。

 しかし諦めるには早すぎるな。


「【鬼火】!」


「ああ?」


 打ち出したスキルはアトラスの槍によって容易く撃ち払われ、(まばゆ)い光だけが残る。


「おいおい、なんだその攻撃は? 仮にも貴様は俺と対等に渡り合ったんだ。あまり無様を晒してくれるなよ。潔く死ね」


「アトラスよ。この勝負、確かに私の負けだ」


「あん?」


「だが――――私たちは(・・・・)まだ負けていない(・・・・・・・・)


 その瞬間、アトラスの脇腹を水流線が貫いた。


「がはッ!?」


 確か……【フラッドストライク】というスキルだったか。

 あの小石の力、相変わらず凄まじいな。


「クソッ!? 一体どこから――!?」


「探しても意味はない。目視できない距離からの狙撃だ」


「なんだと……ッ!?」


 ウルティメオの【遠視】で狙撃ポイントの把握。

 ヘカテイアの【共感覚】で位置情報の共有。そしてヤマダへの伝達。

 合図は私の【鬼火】だ。


 すなわちこれは――連携(・・)

 長距離間のコンビネーションだ。


 これこそヘカテイアが即興で編み出した秘策。


「言っただろう。私たちはまだ負けていないと」


「……上等だ。ならば次は確実に心臓を貫く」


 奴の足に力がこもる。

 ――だがそう簡単に攻撃させるわけにはいかない。


 アトラスの周囲に3連続で【鬼火】を打ち出す。

 一秒と遅れずに遥か彼方より水流のレーザーが飛来する。


「ハッ! 狙撃はお前のスキルを撃った場所にしか来ねえ! ならば躱すの容易い……!」


 言った通り、アトラスは簡単に回避する。

 ――狙い通りだ(・・・・・)


「――【雷霆斬】」


「ぐおッ!?」


 あの位置に水流が撃ち込まれれば回避先の予測など造作もない。


 踏み込み、左手に握った脇差がアトラスの胸部を抉る。

 だが――浅いな。

 致命打には至らない。


「ぐッ、貴様アアアッッ!!!」


 激怒に顔を歪めるアトラスは槍を振りかぶる。

 だがそれは悪手だ。


「【鬼火】!」


「……ッ! チッ……!」


 アトラスがバックステップした直後、先ほどまで奴がいた場所に水の槍が突き刺さる。


「ぬうううううあああアアアァァアアァアッッッ!!!」


「【カマイタチ】!」


 アトラスに斬撃を飛ばす。

 が、その槍の一閃によってかき消される。


 しかし槍を振るう隙に【鬼火】を発動させる。


「ああウザッてえ!!!!」


 身を翻し、アトラスは【フラッドストライク】を躱す。

 さらに【久地瞬視】によって姿を消す。


(――後ろか……!)


「【鬼火】!」


 自らの背後に迫ったアトラスを迎え撃つように、【フラッドストライク】を撃ち込ませる。

 だがアトラスの反応速度は速かった。


「舐めるなッッ!!」


 槍を地面に突き刺し、強引に身体を移動させる。

 無理やり【フラッドストライク】を躱したアトラスは地面を抉りながら槍を斬り上げる。


「人間が神に勝てるわけがねえんだよオオオオオオッッ!!!」


「はあああああああッッ!!!」

 

 ――ギィィィィイイイイイイインッッ!!


 神の全霊の剛閃撃を、渾身の一振りによって迎撃する。

 悲鳴のような甲高い衝突音を鳴らし、槍と刀の二つの刃が弾かれる。


 しかしそれでも神の追撃は終わらない。


「【ゴーディアスブラスト】ォォォオオアアァッッ!!」


 今まで見た中で最も早く、最も鋭く、最も恐ろしい突きだった。


 けれど――――


 私は一歩前へ踏み込んだ。


 ここ(・・)なんだと。

 この瞬間なんだと。

 私の中の何かが告げた。


 槍が、踏み込んだ私の首を掠める。

 あと1センチでも横にあれば頸動脈が斬られていた距離だ。


 残った左腕に力を込める。

 脇差に全てを乗せる。


 ――――これで決める。

 

「【阿修羅(アスラ)】アァァァアアアアアッッ!!!!!!!」


 私が持つ究極の一撃。

 自らの身体と引き換えに放つ奥義。


 この技を使えば私自身も反動でただでは済まない。


「貴様ッ……待てッ――」


 紅い刀身の脇差はアトラスの胴体に一閃。





 ――――神の身体を両断した。





「かっ……はっ……」


 上半身と下半身を分断させたアトラスが砂の上に崩れ落ちる。

 それと合わせるように、私の身体も支えをなくしたように地面に勢いよく倒れ込んだ。

 

 立ち上がれないほどのダメージを負いながらも、私はいつの間にか笑っていた。



「……私たちの勝利だ」




種族:神族

名前:アトラス

年齢:2306

レベル:1523

HP:0/1000 MP:28/1000


筋力:1000

耐久:1000

敏捷:1000

魔力:1000

魔防:1000


神様指数:108992


《スキル》

天球視【C】 衝天【B】

久地瞬視【B】 ゴーディアスブラスト【D】

神通力【B】 ティタノブレット【C】 


《称号》

なし


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


名前:ミタマ・トウドウ

年齢:14

レベル:30

HP:5/3000 MP:37/2900


筋力:702

耐久:43

敏捷:639

魔力:24

魔防:39


《スキル》

抜刀斬り【F】 剣術【G】

雷霆斬【E】 カマイタチ【F】

鬼火【G】 心眼【F】 閃域【F】


阿修羅【D】

山田の加護【C】


《称号》

なし

これにて藤堂vsアトラス戦は終了です。

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