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オルト伯爵領

 一晩明けて再び走り出した馬車は既に乾燥地帯を抜けていた。


 眼前にはきれいな草原が広がり、街を囲んでいる城壁も見える位置まで来ている。


「ルミナスもうすぐ着くよ、大丈夫?」


「う~ん……」


 サキュバスさんは相変わらず馬車酔いでダウンしてらっしゃる。

 ノックアウトされたままアテナに膝枕されている。

 百合百合しくあり、羨ましくもあると感じる次第である。


 そしてその横ではトウドウが器用に刀を研いでいる。

 シュッ、シュッ、と一定のリズムを刻んでいる。よく馬車の中で出来るな。


「このまま領主様の屋敷の前まで行きゃいいですかい?」

「はい、お願いします」


 そうしてパッカパッカと(ひづめ)の鳴る音を聞きながら、俺たちを乗せた馬車は城門をくぐって行った。







 * * *







「ふむ、お前たちが学院から派遣された戦吏か」


 オルト伯爵邸、その門でアテナ一行は背の高い燕尾服のジジイに見下ろされていた。


「は、はいっ。私は代表のアテナ・ヘカテイアと、も、もも申しまふっ!」


 感情の読めない眼、それに真っ白なカイゼル髭。

 思いのほか風格のあるイカついジジイに気圧されている。このジジイがオルト伯爵だろうか。


 屋敷が荘厳なせいで余計に威圧感がある。目を横に向ければ噴水があったり、無駄にアーチがあったり、でかい花壇があったり。


 これが一世帯の住む広さかよ。


「こ、こちらがこの度私と共に任務にあたりますルミナス・ウルティメオとミタマ・トウドウです」


 アテナの紹介に合わせてぺこりとお辞儀をする二人。

 二人はアテナと違って緊張して無さそう。


「ほう、アスラの藤堂(トウドウ)家の者か。ならば心強い。そして……ヘカテイアと言ったか。と言うとアレスの娘か?」


「へ?」


「む、違ったか。戦吏でアレス・ヘカテイアという男がいた気がするが」


「ち、父をご存知なんですかっ!?」


「……いや、名を聞いたことがあるという程度だ。父親は元気か?」


「父は既に任務で…………殉職しました」


「なに? ふむ、そうか……そうかそうか殉職したか。それは失礼をした」


「……いえ」


 それからジジイはゴホンと一呼吸を置いてから3人に向けて話した。


「申し遅れたが私は執事のラザロスという。今から伯爵様の元に案内するから着いてきなさい」


 いや、お前領主じゃなかったのかよ。

 めちゃくちゃ支配者感だしてたのに。

 ただの執事かよ。


 ともかく、そんな流れで俺たちはジジイの背中を追って屋敷の中へと向かった。

 その道中、


「……あの男も不死身ではなかったか」


 ぼそりととても小さな声を俺は聞き逃さなかった。

 ジジイの独り言だ。


 あの男とはアテナの父親を指してのことだろう。

 アレス・ヘカテイアって名前だったか。結構名の通った戦吏だったのだろうか。


 アテナパパの情報も集めていきたいところだが、このジジイはアテナパパが既に死んだことも知らなかったしな。残念ながら彼を死に追いやったという貴族のことも知らなそうな気がするな。








 豪華な屋敷の中、応接室へと通された我々はついに領主様とご対面していた。


「悪いわね、わざわざ王都から来てもらって」


「と、とんでもございません」


 いったいどんな領主だろうかといろんなパターンを想像していたが。


『うおおおおおおおおおおおおおっっっ!!!』

「ひぅっ!?」


 対面のソファーには……ゴスロリを来た金髪少女が座っていた!

 クマさんのぬいぐるみが似合いそうなロリッロリのロリがいたのだ!


 信じられるか?


 素晴らしい。

 なんて素晴らしい。


 断っておくが俺はロリコンではない。

 しかしながらそちら方面への造詣(ぞうけい)も深い。


 ロリと言えば金髪ゴスロリ。

 自然な、本来あるべき姿だ。


「ヤ、ヤマダ様……? どうされました?」


『気にするな』


 そしてこのロリ、細部(ディテール)も申し分ない。


 まずは靴。

 あの小さめで丸みがあり、つやっとしたローファー。リボンが付いているのも良い。


 そして膝上あたりまである縞々のニーハイソックス。

 その少し上に目をやればムニッとした太ももが。


 だがその太ももも十センチほど露出されたところでフリフリの黒スカートに覆われてしまう。そしてフワフワとしたスカートの上にはちっちゃめのロリハンドが置かれている。


 さらに視線を上に向ければAカップをフリル付きの服が優しく包み込んでいる。


 とどめは金髪、碧眼、カチューシャの3コンボだ。

 文句なし、100点。

 今度ルミナスの夢の中で再現してもらおう。幸いルミナスもAカップだ。


 うむ、今回の遠征はこれだけでも来た価値があったな。


「あなたたちには住み込みで雑用と郊外の魔物駆除をやってもらうことになるわ。部屋は適当にゲストルームを使ってちょうだい。場所はラザロスに聞きなさい」


「は、はいっ」


 若干舌足らずなカンジもプラス評価。


「詳しいことはまた明日話しましょう。今日は自由にしてていいわ」


「わかりました。そ、それでは明日からよろしくお願いしますっ!」


 これにて残念ながらロリとのお話終了。

 一時解散の流れとなった。


 そしてジジイによる部屋の割り振りの後、せっかくなので3人で街を観光しようという話になったのだった。







 * * *







 私服に着替えた一同は屋敷の門に揃っていた。

 制服は目立つからね。


 しかし悲しいかな。

 例の襲撃事件以降アテナは俺の前で生着替えをしてくれなくなった。着替える時はいつも布をかぶせられたりしているのだ。


 まさか……興奮しているのがバレたか?

 

 そんな。

 なんで。

 俺の生きる楽しみだったのに。


 いや、鈍感なアテナが俺の視線に勘付くはずがない。きっとまた俺の前で着替えてくれる日も来るだろう。


「さて、まだ陽も高いしどこへ行こうか」


 白ワンピにカーディガンを羽織ったルミナスの言葉に真っ先に答えたのはトウドウだった。


「武器屋がいいだろう」


「……そんなの王都にもあるだろ」


「珍しい武器もあるかもしれない。行く価値はある」


「いいや、もっと優先度の高い所はいくらでも――」


「ま、まあまあ。とりあえずどっかでご飯食べませんかっ?」


 喧嘩の匂いを敏感に感じ取ったアテナが早期に消火した。

 ご苦労様です。


 まあしかし、たまには観光も面白そうじゃないか。

 

――八月中旬、某日。




「警部、ここです」

「コイツがホトケさんか……きれいな顔で死んでやがらぁ」

「外傷はありませんね。どうやら死因はショック死。……即死だったようです」

「ほう……」

「この男の名は銀野有歩。ネットに小説を投稿していたようですね。警部、これを見てください」

「これは……スマホか? なになに……HJネット小説大賞だと?」

「その一次選考結果のページです。男の小説はありませんでした」

「ははぁん、なるほど。コイツは自分の小説が一次落ちしたショックでショック死したってわけか」

「悲惨な事件でしたね……」


 ――二人の勇敢な警官により、こうしてまたひとつ謎は解けた。




 いやはや、まだ壁は厚いですね。

 当面は一次選考突破を目指して頑張ります。

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