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会議

 次の日。

 

 アテナ、ルミナス、トウドウは3人でテーブルを囲んでいた。無表情のトウドウと笑顔を張り付けているルミナスが向かい合っている。


「やあ、初めまして。ボクはルミナス・ウルティメオだ。よろしくね」


「ウルティメオ。……今やその名を知らぬ者はこの学院にはいないだろう」


「…………」


「中には君の出自を受け入れぬ者もいようが安心してほしい。某は貴殿を害する意は持ち合わせていない」


「そうかい? そりゃあ良かった」


 女の子が3人集まったというのにどこか張りつめた空気だ。少なくとも、仲良こよしには程遠い。



「さて、どうしてボクたちのチームに入りたいと思ってくれたんだい?」


「簡単な理由だ。このチームなら強くなれると思ったからだ」


 聞いて、ルミナスは怪訝な表情を浮かべる。


 俺も首を傾げざるを得ない。

 俺たちのどこにそんな魅力を感じたというのか。そしてなにより、トウドウの真っ直ぐな目に戸惑う。



 ――彼女は全く嘘を言っているようには見えないのだ。



 ルミナスは目を細める。

 真実を見極めようと、センスを研ぐように。


 そんなルミナスの視線に、おそらくは気付いた上で無視をしてトウドウは話を進める。


「それより、是非一緒にやってほしい任務があるのだ」


 そう言ってトウドウがテーブルに置いた紙には


≪任務:オルト伯爵領にて魔物討伐、及び雑務≫


 と書かれている。


 任務への推奨戦吏ランクは[C]。難易度的には問題ない。


「アルカディア地方、オルト伯爵領ですか。長期任務ですね」


「どうだろうか。この任務で(それがし)がチームにふさわしいか判断してほしい」


 長期任務か。

 このオルト伯爵領の任務だと一週間ほど学院を離れて住み込みで任務に当たるようだ。


 アテナはふんふんと少し頷く。


「そうですね。いいと思います」


 短くそう返した。

 そしてちらりとルミナスを見る。


 その視線に、わずかに逡巡したのちにルミナスもこくりと小さく頷く。

 

 以心伝心。

 言葉にしなくても会話が出来てるカンジが実に微笑ましい。すっかり親友になっとるやんけ。なんて、俺は保護者みたいな感想を抱いてしまった。


 そんな時、ふとトウドウの方に目をやると彼女は真っ直ぐとアテナを見ていた。



 なんだ……?



 悪意や害意は感じられないが、本気の目だ。

 なんらかの感情、想いが本気(・・)で込められた視線。そう感じる。


 逆にルミナスに対してはほとんど興味がないように思える。


 それからその視線が俺に移った。

 え、俺?


「ところでヘカテイア、なぜそんな魔石を使っている?」


「ほぁっ!?」


 その不意を突かれたときにビックリしちゃうの、そろそろ直そうねアテナさん。隣でちゃんとポーカーフェイスを貫いているルミナスを見習ってほしい。


「その魔石はあまり質が良くないように思える。良ければ(それがし)が去年使っていた物を譲るが……」


「い、いえ。私はこの魔石が気に入っているので……」


「遠慮をすることはない。今は使ってないとはいえ、かなり質の良い魔石だ。価値にするなら2000万マネイはするような高ランクのものだ」


 2000万……!

 確か俺の値段ってボッタクリ価格で20万だった気が。


 きいーっ!

 悔しい!


「ありがたいお話ですが、やっぱり私はこの魔石が良いので……」


 苦笑いを浮かべてやんわりとお断りをするアテナ。

 だがその言葉に、むしろトウドウは嬉しそうに笑った。


「やはりその魔石に何かあるんだな?」


「っ!?」


 おっと。

 どうやらカマをかけられていたようだ。


 「あわわ……」とガクガクするアテナは言わずもがな、ルミナスも驚いて視線をトウドウに向けた。


 そのトウドウはニヤリと笑うと身を乗り出し、


「ヘカテイア、ぜひその魔石を某に調べさせてほしい!」


 鼻先が触れそうになるほどアテナに近づいてそう言うのである。少し頬を染めて目を逸らすアテナ。百合ですね。知ってます。


「こ、これは……その……」


「悪いようには致さぬ。この通りだ!」


「うう……ですがその、この魔石は私としか波長が合わないといいますか……気難しい魔石様でして」


「そこをどうか! 頼む!」


 がばっと頭を下げるトウドウに困惑する相棒。


 俺を調べたい、か。

 どうしたもんかね。……うん。まあいいか。


『俺は別にいいぞ』


「えっ……」


 俺が言うと、なぜかアテナは少し寂しそうな顔をした。そして何か言いたげに、ちょっと口をぱくぱくさせて目を泳がせる。


 どうしたんだ? 反対する理由があればアテナなら遠慮せず言うはずだ。そういう重要な時だけこの子は判断が的確だった気がするのだが。今のアテナはなんとも煮え切らない態度である。


「……ちょっとだけなら」


 少し、ほんの少しだけぶっきらぼうな言い方でトウドウに告げるアテナ。むむ、珍しくアテナが不機嫌である。


 しかしトウドウはそんなアテナの様子には全く気が付かずに嬉々と表情を輝かせた。


「本当か!? かたじけない……! さっそくこの後見てみたいのだが良いだろうか?」


「えっと……」


『俺は問題ないぞ』


「…………」


『アテナ?』


「……大丈夫です」


「おお!」


 ちょっとムスッとして答えるアテナ。本当にどうしたんだ?


 初めて見るアテナの様子に困惑しながらも、俺はトウドウに手渡される。


 トウドウのお手ての中。すべすべでアテナより指が少し長い。よきかなよきかな。

 トウドウの身体はアテナより全体的に筋肉質だ。こういうスポーティな美少女も良い。


「かたじけない! 一刻ほど借りさせてもらうぞ」


 俺を握りしめてトウドウが立ち上がる。

 そして足早に自室へと向かうのであった。


 こうして俺はいざトウドウの工房(ラボ)へ。

 思えばアテナ以外の子に運ばれるのはこれが初めてのことだった。

 






 関係ないがこの日の夜、夢の中でルミナスに『浮気は良くないですよ』と(たしな)められてしまった。

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