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魔物との出会い

 特大ホームラン。

 飛距離は数kmか数十kmか。


 俺は……川ポチャした。あいや、海かもしれないし湖かもしれない。ともかく、水の中に落ちたのは確かである。

 

 幸い俺には温度がわからないし、呼吸も必要ないらしく水中でも問題はなかった。ちなみに痛覚もない。


『なんていうか……すごい体験だったな。おっと、それよりもステータスを確認せねば』


 痛覚がないというのはデメリットも大きい。

 ダメージを負っても分からないのだ。



種族:不思議な石

名前:山田

年齢:17

レベル:1

HP:100/100 MP:100/100


筋力:0

耐久:1000

敏捷:0

魔力:1000

魔防:1000


神様指数:0


《スキル》

神通力【B】 看破【C】

天変地異【ER】


《称号》

なし


 ありゃ、ノーダメだ。運が良かったらしい。

 そしてスキルが増えている。



【天変地異】:ER(エラー)スキル。規格外のため、ランク規定不可。使用者の周囲数十kmに渡って全てを無に帰す。



 ひょえ~~!

 おっそろしいスキルを得ているではないか。


 下手に使っては自分の命が危ない。また一つ役立たずスキルが増えてしまった気がする。


 しかしながらこのスキルはどうやって獲得したんだ? 俺はただ災害に巻き込まれただけだ。

 レベルアップもしていない。


『これは……そうか!』


 俺はスキル獲得の仕組みを真に理解した。

 これはあれだ。見るだけでスキル獲得できるんだ。そうに違いない。


 たぶんさっきの噴火やら地震やらが【天変地異】というスキルだったのだろう。それを見たためにこのスキルを得たと。そういうわけだ。


 この身体(石ころ)、なかなかに高性能なようだ。

 これならば楽々チート生活も夢ではあるまい。


『というか……海か川かわからないけどやけに深いな』


 まだまだ俺は沈み続けていた。

 上を見上げると水面がかすかに明るいのがわかるくらいでだいぶ暗くなってしまった。


 石だからか、沈むスピードもなかなか速い。


『もしかして、これって結構ピンチなのでは?』


 言わずもがな、俺は身動きが取れない。

 仮にここが海でこのまま深海に到達してしまったらどうなる?

 石となった俺の寿命がどこまで持つのか分からないが、下手をすれば何百年、何千年と深海の底で過ごすことになる。


『ま、まずいぞ! このままだと化石になるって!』


 モンスターでも何でもいいから俺を拾ってくれ。


 すでに水面とは100m近く離れてしまっていそうだ。

 だが俺の願いも虚しく、この情けないボディはさらに沈んでいく。

 もう光はほとんどなくなってきている。


『誰かー!』

《スキル:【暗視】を獲得しました》


 突然、無機質なメッセージと共に急に視界が開けた。

 と、同時に


「ヌオォォ~~」

『のわぁっ!? なんだお前!』


 アンコウみたいな奴が目の前にいた。

 すかさず【看破】を発動する。



種族:アルモウス

名前:ジェイコブ

年齢:80

レベル:72

HP:6800/6800 MP:2000/2000


筋力:480

耐久:367

敏捷:240

魔力:360

魔防:110


《スキル》

暗視【G】 サイレントバイト【F】


《称号》

なし


 HPとMPは俺を遥かに上回っている。

 戦っては勝てそうにない。というか、攻撃手段のない俺は誰が相手でも勝てない。

 せめてもの威嚇で俺は応戦する。


『おう! やろうってのか!? このアンコウ風情が!』

「ヌォ~」


 ぬぼーっとした顔のまま、奴は徐々に距離を詰めてくる。

 大きくぱぁ~っと口を開いたままにじり寄ってくる様は結構怖い。


「ヌッ!」


――ヒュオッ


 と、音がした。


《スキル:【サイレントバイト】を獲得しました》


『え? え?』


 いつの間にか俺はぶよぶよした壁に囲まれていた。

 まさか、食われたのか?


 周囲を【看破】で確認してみる。

 すると360°どの方向を見てもこのアンコウ型モンスターの情報が読み取れた。つまり、やはりここは奴の腹の中とみて間違いない様だ。


『このまま溶かされてはかなわない……!』


 急ぎステータスを確認する。が、HPは変わらず100/100のままだった。

 すぐにダメージは無いということだろうか。


 そう思って数十分と待つが、一向にダメージを負った気配はなかった。

 どうやらこのアンコウみたいな奴に石を溶かす能力はないらしい。


 自分の身の安全がわかったら急にアンコウに親近感が沸いてきた。

 そうだ。

 逆に考えれば、アンコウの腹の中にいればとりあえず移動はできるわけだ。

 何もない海底にいるよりはマシかもしれない。


『ところでアルモウスってどんなモンスターだ?』


 【看破】でアンコウのステータスを確認しながら、詳細を見てみる。


・アルモウス[脅威度:F]

深海に生息する魔物。大きな口で獲物を捕食する。消化器官が未発達のため、石や貝殻を胃にため込んで食べた獲物を細かく砕く。


 なるほど。

 俺は餌として食われたんじゃなくて、消化の補助用の石として胃に入れられたのか。


『よろしくな、ジェイコブ』


 俺は親しみを込めて、奴を名前で呼んでやることにした。





 * * *





 俺がジェイコブと生活を共にしてから何日たっただろうか。

 周りはジェイコブの胃しか見えないので体内時計もすっかり狂っている。


 そもそも俺は睡眠や食事が要らないので体内時計なんて無さそうだった。

 と、そんなことよりもだ。緊急事態が起こったのだ。


「ヌッ! ヌゥッ!」

『どうした!? 大丈夫か!?』

 

 ジェイコブが激しく揺れているのだ。

 必死にもがいているのが胃の中からも感じられる。


「ゴアアアアアアァァァァアッッ!!!」


 !?!?

 なんの音だ!?

 ビリビリとした轟音がジェイコブの身体を超えて俺に届く。


「ヌヌゥッ!!」

『ジェイコブ!』


 慌てて【看破】を使う。


種族:アルモウス

名前:ジェイコブ

年齢:81

レベル:72

HP:572/6800 MP:780/2000


筋力:480

耐久:367

敏捷:240

魔力:360

魔防:110


《スキル》

暗視【G】 サイレントバイト【F】


《称号》

なし



 あっ!

 ジェイコブの年齢が80→81になっている!

 昨日か一昨日あたりに誕生日を迎えたのだろう。


 いや、そんなことは今はどうでもいい!

 ジェイコブの体力がどんどん下がっているではないか。


 今こうしている間にも減少していくジェイコブのHP。

 このままではあと数分と持たずにゼロになってしまう。


『クソッ! いったいどうすれば……!』


 俺にあるのは【看破】を除けばどれも役に立たないスキルばかり。

 いや、待てよ?

 一つだけまだ使っていないスキルがあった。

 ジェイコブから受け継いだ【サイレントバイト】だ。


「ヌォオッ!」

『くっ!』


 こうしている間にもジェイコブは苦しんでいる。

 この【サイレントバイト】というスキルがどんな効果なのかは不明だ。しかしこのまま何を手を打たねばジェイコブが死んでしまうのも事実。


『ええい! ままよ!』


 俺は意を決し唱える。


『【サイレントバイト】!』

「ヌワァ!?」

《アルモウスに勝利しました》

《レベルが上がりました》

《レベルが上がりました》

《レベルが上がりました》



『……え?』


 無残に切り裂かれたジェイコブの身体が目の前で舞う。

 水の中、ジワリと濃い赤色が滲んでいく。


『…………』


 俺は冷静にステータスを確認することにした。


種族:不思議な石

名前:山田

年齢:17

レベル:11

HP:5000/5000 MP:5000/5000


筋力:0

耐久:12000

敏捷:0

魔力:12000

魔防:12000


神様指数:0


《スキル》

神通力【B】 看破【C】 天変地異【ER】

暗視【G】 サイレントバイト【F】 


《称号》

なし


 めちゃくちゃ成長している。

 しかし……素直に喜べない。

 俺が得た強さはジェイコブの犠牲の上で手にしたものだ。


『……すまない』


 届くはずのない謝罪をジェイコブに送る。

 レベル72のジェイコブを倒してしまったおかげで俺のレベルはかなり上がった。申し訳ないかぎりだ。


 しかしジェイコブの死に涙している時間はない。

 なぜならばジェイコブを苦しめた犯人が近くにいるはずだからだ。


 ジェイコブの胃から放たれた俺の眼には巨大な鱗が映った。

 違う。デカずぎて全体が見えないんだ。

 鱗一枚だけで1メートル四方くらいはある。


「ゴァアアアァァアアァアッッ!!!」

『ッ! 【看破】!』


種族:リヴァイアサン

名前:アナスタシア

年齢:597

レベル:6500

HP:180000/180000 MP:95000/95000


筋力:46700

耐久:38000

敏捷:55080

魔力:87000

魔防:67900


《スキル》

フラッドストライク【D】 大崩水【D】

魔力効率【E】 自動回復【C】 大薙ぎ【F】

神格(準)【B】


《称号》

海の支配者



『……逃げたい』


 勝てんわ、これ。

 

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