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初めてのチーム戦

 ――サキュバス。

 彼らは人と同じような姿を持ち、意思疎通も可能である。だがエルフや獣人のような亜人と違い、明確に『魔族扱い』なのである。

 俺でも知っているくらいの常識だ。


 とはいえ、別に彼女をどうこうしようという気はない。


 俺自身はサキュバスに対して敵意はないし、逆に人族に対して仲間意識があるわけでもない。

 ゴブリンの味方をしてたこともあるしね。


 俺はあくまでアテナの味方なだけなのだ。


「改めて。ボクはルミナス・ウルティメオっていうんだ。よろしくね」

「は、はいっ! アテナ・ヘカテイアです! よろしくお願いします!!」


 このルミナスというサキュバスちゃん、見れば見るほど清楚系な子だ。体形でいったらアテナの方がよっぽどサキュバスっぽい。

 ふむむ、あれは……Bに限りなく近いA、だろうな。


「ほかにメンバーはいるのかい?」

「まだいないんですよね……」

「そうかい、既に出来上がっているチームに入るより気まずくなくていいさ」


 ふっ、とほほ笑むルミナス。

 この学院にしては珍しいいい子だな。



 その後、とりあえず今日は自己紹介だけしてまた明日話し合おうという流れになった。

 ルミナスは偵察科(スカウト)の生徒らしいので、ひとまず役割はかぶらなそうだ。






 寮に帰宅し。

 アテナは俺を机の上に置いて、お風呂に入る準備をしていた。


「ふんふんふ~ん♪」


 機嫌が良さそうだ。

 鼻歌を歌いながら制服をヌギヌギしている。


『アテナ、あの子……ルミナスのことなんだが』


 俺は正直にルミナスについて言っておくことにした。


『あの子はサキュバスだ』

「ええっ!?」

『まあ一応警戒はしといたほうがいいかもな』

「サキュバス……」


 このあとルミナスとどう接していくのかはアテナしだいだ。

 俺としてはせっかくのサキュバスというエッチな響きのある子とは仲良くしたいけど。


「…………」


 顎に手をあて、眉を寄せるアテナ。

 まあ悩むよな。素性の知れない相手を仲間にしていいものかどうか。



 そのあと、アテナはこの話題には触れることなくいつも通りだった。

 俺と談笑しながらご飯たべて、学校の課題やって、読書して。

 本当にいつも通りだ。


 だからこそアテナが何を考えているのか、ルミナスとどう関わっていくつもりなのか。まったくわからなかった。








 * * *








 ――翌日、その放課後。


「はっ!」

「やあっ!」


 俺たちとルミナスは『ノイン平原』という比較的弱い魔物が出るフィールドに来ていた。


 二丁のダガーを携えたルミナスと剣身が光でできたブレードを持つアテナ。その二人の前には『ラージボア』というイノシシ型の魔物が倒れ伏している。


「はぁっ……はぁっ……さすが偵察科(スカウト)、攻撃が素早いですね……!」

「ヘカテイアこそ、支援科(アデュート)とは思えないスキルを持っているね」


 このアテナの持っている剣、もちろんだが俺のスキルである。

 【アステリック・ブレード】というスキルだ。魔力を込めれば刃渡り自由自在。やろうと思えば数キロはいけるだろう。しないけど。

 切れ味も申し分なく、岩だろうと抵抗なく切れる。それはもう豆腐みたいに。


「でもちょっと疲れました……」

「そうだね、一休みにしようか」


 アテナがペタンと地面に座り込む。


 今俺たちは何をしているのかというと、チームの連携の確認だ。

 難易度の低いフィールドでの試し運転である。


『う~ん……。アテナはもうちょっと体力つけないと前衛には出られないな』

「ですね……」


 せっかくの【アステリック・ブレード】も扱う者がこれじゃあな。

 【憑依】はアテナのMPの関係で持続時間が短いから緊急時まで温存した方がいいだろうし。


 対してルミナスの方は実に軽やかだった。

 本職の前衛ってかんじ。さすがとしか言えない。


 流れるような剣さばき。力ではなくスピードとテクニックで翻弄するようなスタイルだ。


「そういえばウルティメオさんも平民なんですよね? どうしてこの学院に?」

「……平民だと苦労が絶えないからね。多少の権力が欲しいと思っただけさ」

「確かに、戦吏になったらいろいろと便利ですよね!」


 何か引っかかる言い方だな。

 権力が欲しいってなんだ? やはり何か裏があると見るべきか。


 と、考えていたのだが。


『む……』


 急に若干の頭痛が走った。頭痛というか、磁石的な反発感を覚えるような。生理的に受け付けられない感覚が起こった。


 誰か俺と反発する存在が近くにいる気がする。


『アテナ、何か変な感じがしないか?』

「? しませんけど?」

『そうか……』


 なんなんだコレは。

 今すぐそのどこかにいる相手をぶん殴りたい衝動に駆られる。


 だがルミナスの声でその感情が吹き飛ぶ。


「――ヘカテイア、構えて! 何か来てるよ!!」

「ッ!!」


 ルミナスの構える方向を凝視する。


 むむ……。確かに何か翼のある、キモい悪魔型の魔物がこっちに来ている。

 ブサイクだ。こう、ゴブリンをさらにボコボコにしたような感じの顔をしている。




種族:ガーゴイル

名前:フレッド

年齢:53

レベル:65

HP:5000/5000 MP:7000/7000


筋力:431

耐久:243

敏捷:443

魔力:543

魔防:458


《スキル》

飛行【G】 熱線【F】

切り裂き【F】 ウィンドカッター【F】


《称号》

なし



『ガーゴイルか。なかなか強い魔物だな』

「ガーゴイルですかっ!? 魔界に住むといわれる魔物がどうしてここに……!?」


 ステータス的にはヴェリティ先生と同格。

 ルミナスやアテナより格上だ。


「……ヘカテイア、逃げよう。これはボクたちがどうこうできる相手じゃない」

「ですが……」


 ちらりとアテナが俺を見る。

 わかっているとも。俺たちの力を見せる時だ。


『【憑依】で一気に片づけるぞ』

「はい!――【憑依】!」


 アテナがスキルを唱えた瞬間、その肩に風の刃が当たる。

 ガキン、という音と共に霧散する風刃。【憑依】で耐久が30万くらいになったアテナにはノーダメである。


 アテナさんはいきなりの攻撃にビクッとなっていたが……。


『大丈夫か?』

「は、はい。――【灯火】!」


 アテナの振るう杖、つまり俺から炎が走る。


「グギャッ!!」


 ガーゴイルはひらりと躱すと、アテナに肉薄する。

 そのままアテナを鋭利な爪で切り裂こうとする。

 ――が、


「ひえっ!?」

「グギャアアッ!?!?」


 振り下ろされた爪は逆に剥がれていた。

 血が滴り、実に痛々しい。


「せいっ!」

《ガーゴイルに勝利しました》


 動揺するガーゴイルを【アステリック・ブレード】が切り裂く。

 ガーゴイルが倒れたのを確認し、アテナも【憑依】を解いた。


「ふうっ……!」

「つ、強いんだね、ヘカテイアは。ガーゴイルに一人で勝つなんて確実に学科首席クラス……いや、学年首席並みじゃないか」

「い、いえ、それほどでは……」


 少し照れがちに答えるアテナ。

 それでも少し気まずそうなのは、俺との協力プレイであってアテナ単独の力で倒したわけじゃないからだろう。


「……ところで一つ聞いていいかい?」

「なんですか?」


「その、どうして魔石と会話してるんだい?」


 …………あ。

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