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仲間探し

 翌日、教室に着くと皆とある話題で盛り上がっていた。


「一部が壊れたんじゃなくてもう全部! 闘技場のでっかい屋根が吹き飛んでたんだよ!」

支援科(アデュート)にそんなバケモノが潜んでたなんてな……」

支援科(アデュート)首席のヴィクタスが犯人の第一候補らしいぜ」


 テストの結果は秘匿される。故に、アテナ(というか俺)が壊したことは他の生徒たちにはバレていないみたいだ。


「ヴィクタスか……。あの火力に加えてサポートも出来るってのは強いよな。チームに誘ってみようぜ」

「ヴィクタスクラスの奴ならもうチームくらい組んでるだろう。もう遅いだろ」

「だよな……」


 他の生徒たちの会話に、俺の中で疑問が生まれる。


『アテナ、チームってなんだ?』

「冒険者でいうパーティと同じですね。戦吏は数人の小隊で任務をすることも少なくありませんから。もうすぐ迷宮探索(ダンジョンシーク)が始まるんでみんな優秀な生徒の確保に急いでいるんでしょう」

迷宮探索(ダンジョンシーク)……それも授業なのか?』

「はい。必須単位です」

『アテナはチームはもう組んだのか?』

「まだですよ?」


 だよな。

 ボッチのアテナが組めているわけがないか。


 と、急に周りが静かになった。

 先生が教室に入ってきたのだ。


 ヴェリティ先生とは別の、眼鏡をかけた男の先生だ。


「さて、皆そろっているようですね。さっそくですが試験結果を返しますので呼ばれたら前に来てください」


 生徒たちがすこし緊張した面持ちで、順番に成績をもらいに行く。

 不合格だと来年もう一度このテストを受けることになる。


 アテナは既に合格ということが分かっているからか、他の生徒より落ち着いて見える。


「次、ヘカテイア」


 呼ばれ、一枚の紙を受け取るアテナ。

 その紙には試験の結果が詳細に載っていた。



威力……[A]

効果範囲……[A]

精密性……[D]

持続性……[E]


総合評価……[B]

戦吏ランク[F]→[D]



「やった! ランクアップ!」

『その戦吏ランクってなに?』

「戦吏としての評価で、試験のたびに更新されるんです。Aランク戦吏だと指名依頼とかも来たりしますね」

『ふ~ん』


 相当喜んでいるアテナを見るに、重要なもののようだ。


 試験結果に少し騒がしくなる教室に、先生の声が響く。


「さて、成績に喜ぶも泣くもいいですが、迷宮探索(ダンジョンシーク)のチーム申請は一週間後となっています。単独(ソロ)は禁止ですので皆信頼のおける仲間を見つけてください。……連絡事項は以上です。各自、一限の準備をするように」


 皆がそそくさと教科書やノートを取り出す。

 アテナも同じだ。


 ……こういう光景は日本の高校と似てるな。

 長い机が段上に並んだ教室だから、見た目は高校よりも大学ってカンジだけど。


 一限のチャイムが鳴り、授業が始まる。







 

 * * *








 授業は可もなく不可もなく。まあ順調に終わった。

 そして放課後。普通なら自由な時間。ほっと一息な時間のはずである。


 が、本番はここからだということを俺は思い知る。



前衛科(ヴァンガルド)のマックス君だよね? 良かったら俺らと組まない?」

「そうだなぁ……」


「もうちょっと後衛(リア)を補強したいところですわね」

「ええ、あと回復も欲しいかしら」



 学院のラウンジ、そこらじゅうで迷宮探索(ダンジョンシーク)に向けてのメンバー集めや対策の話し合いが行われている。


 本来は学生たちがお茶でも飲みながら談笑するスペースであるここが、妙にピリピリしていた。


 なにやらよくわからない紙をたくさん用意している奴らもいる。よくわからんが魔術的なアイテムか?


 ともかく、どこもかしこも必死だ。


 考えてみればそれはそうだ。

 共にするメンバーは成績を左右するだけじゃなく、自身の生存率にもかかわる。

 

 今度の迷宮探索(ダンジョンシーク)は学院が管理する、比較的安全な迷宮だから命の危険はないけれど、今組むチームは卒業までずっと同じであることも珍しくない。

 そういう意味でこれはかなり重要なイベントなのだ。


『アテナ、俺らも動かないとヤバくないか?』

「そ、そうですね。私も焦ってきました……」


 現状、アテナの評判は最悪だ。

 正直言ってメンバーを選り好みできる立場じゃないな。


 すなわち、手当たり次第に声をかけるしかない。


『おい、あそこで(たたず)んでる奴なんかどうだ?』

「あの男子生徒ですか? わかりました!」


 ぎゅっと唇を結び、緊張した面持ちでアテナは男子生徒に近づく。

 男子生徒は本を読んでいるようで、まだアテナには気づいていない。


「あ、あのっ!」

「ん?」


 男子生徒が顔を上げる。

 するとハッと驚いたような顔をした。


「今度の迷宮――」

「悪いが他を当たってくれ」

「あっ……」


 アテナと目を意図的に合わせないようにして、男子生徒は去って行ってしまった。

 その様子をアテナは寂しそうに眺めていた。


「あう……失敗ですね」

『う~ん……』


 だが最初は大概こんなもんさ。

 次だ次。とにかく交渉あるのみだ。


『よし、今度はあの子たちとかどうだ?』

「あの2人ですね? 頑張ります!」


 ブロンドのドリルヘアのお嬢さまと黒髪ロングの子がテーブルの上で紅茶を飲みながら話し合っている。


「あのっ!」

「あら? あなたは……」

「も、もしよかったら今度の――」


 と、そこまで言ったところで黒髪の子がブロンドの子に何か耳打ちをした。

 それを聞くなり、ブロンドちゃんはキッとアテナを睨みつける。


「あなた、あのヘカテイアね? 卑しい平民の分際で……汚らわしい!」

「私たちはあなたのような下賤の者が話して言い身分ではなくってよ! 立ち去りなさい!」


 そう言ってピシャッと紅茶をかけてきた。


「わっ!?」


 幸い、制服にはかからなかった。

 だが明確な拒絶を受け、俺とアテナは逃げるようにその場を後にした。




『ひっでえ奴らだな』

「ああいう反応が普通ですよ。平民は学が無く卑しいだけじゃなく、ものの道理も理解できないと思われているんです」

『話も聞かずに威嚇してくるなんて、俺にはあっちの方が猿に見えるけどな』

「ふふっ、ダメですよ。そんなことを言っては」


 雑談をしながらも、俺たちは再び仲間探しを始めた。

 




 結果はまあ予想通りというか。

 連戦連敗だった。そりゃあ成績最下位で有名なアテナと組みたがるもの好きはいないか。


『「はぁ……」』

 

 ため息を重ね、ベンチに座り黄昏(たそがれ)る俺とアテナ。

 もういっそ単独(ソロ)でやらせてくれりゃあいいのに。俺のスキルがあればいける気がするんだが。


『アテナ、大丈夫か?』

「体はまだまだ元気ですが……精神的にけっこう疲れちゃいましたね……」

『だよな……』


 と、そんな俺たちの前を水色の髪のおとなしそうな女の子が通り過ぎた。

 よし、今日はあの子で最後にしよう。


『アテナ』

「はい。行ってみます」


 ベンチから立ち上がり、水色の髪の子を追う。


「あの、ちょっといいですか?」

「ボクかい?」


 澄んだきれいな声。

 穏やかな顔をした子だ。胸はぺったんこであった。


「もしよかったら、今度の迷宮探索(ダンジョンシーク)で私と組みませんか?」

「ボクとかい? いいよ、よろしく頼むよ」

「ですよね――って、ええっ!? いいんですか!?」

「ま、まぁ、別に断る理由はないよ。君はコミュニケーションもしっかり取ってくれそうだしね」

「あっ、ありがとうございます~~!!!」


 目に涙を浮かべ、何度もペコペコとお辞儀をするアテナ。

 ちゃんと良識的な人もいて良かった……。


 そうだ。この子がどんな子か今のうちに見ておこう。



種族:サキュバス

名前:ルミナス・ウルティメオ

年齢:14

レベル:18

HP:2500/2500 MP:1600/1600


筋力:130

耐久:112

敏捷:187

魔力:101

魔防:97


《スキル》

短刀術【G】 投擲【G】

ウィンドブレス【F】 飛行【G】

吸精【F】 魅了【F】



《称号》

なし



 ……人間じゃなかったんですが。


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