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アテナ

「だっ、誰ですか~!! 出てきてくださいい~~!!」


 ピンク髪ちゃんが怯えてガクブルし始めてしまった。これはもう少し見ていたい気もするが仕方あるまい。名乗り出てやるか。


『お前の持ってる魔石だよ。その手の中にある、鋼のボディのナイスガイが俺だ』

「魔石……?」


 ピンクちゃんは人差し指と親指で俺をつまんで、じっと見つめる。


 かわいい。

 地味かわいい。言うなれば図書委員っぽいかわいさだ。

 ドジでおっとりしていそうな雰囲気。紳士が描く図書委員の理想像のような見た目だ。


 ただ、髪がピンクで派手なので若干地味さが緩和されている。


 この時ほど俺は自分の感覚がないことを後悔したことはない。せっかくの女の子のぷにぷにお手てにつままれているというのに、その感触をかみしめることができないなんて。


 さて、ちょっくら【看破】させてもらうか。



種族:人族

名前:アテナ・ヘカテイア

年齢:14

レベル:16

HP:1500/1500 MP:2100/2100


筋力:92

耐久:87

敏捷:121

魔力:169

魔防:112


《スキル》

共感覚【G】 念話【G】 憑依【D】 

啓示【B】 降臨【A】

灯火【G】


《称号》

なし



 おわっ、すご。

 ステータスは一般市民に毛が生えた程度だけど、Bランクスキルの【啓示】とAランクの【降臨】を持っている。

 普通、Eランクスキルを一個持ってるだけでも超エリートだってのに。

 ただ、どっちのスキルも攻撃系じゃなさそうだな……。


「しゃべる魔石なんて聞いたことない……」


 この女の子、アテナは俺の角度をいろいろ変えてしげしげと眺めている。


『声はお前にしか聞こえないけどな』

「そうなんですか?」

『お前の【啓示】っつうスキルの効果だ』

「えっ!? 【啓示】の力で会話できるってことは……魔石さん、神様なんですか!?」

『神じゃないよ。ただの高校生だ』

光皇聖(こうこうせい)……?」

『なんとなく強そうな言葉に解釈してくれたみたいだけど全然違うよ。学生ってことだよ』


 アテナは俺の言うことが腑に落ちないのか、訝しげに首を傾げている。


『神じゃないけど結構役に立つぞ、俺は。これからよろしくな』

「は、はい。よろしくお願いします!」


 俺たちは互いの自己紹介もそこそこに済ませ、アテナの住む学生寮に帰るのだった。







 * * *






 ――ヴァルハラ学院、学生寮。

 その一室にて。

 

 俺は改めてじっくりとアテナを観察していた。

 うむ、Eはあるな、アレは。エレガントのEだ。

 

 一方のアテナの方も、机の上に置かれた俺を観察しているようだ。


「えっと、これからヤマダさんには私の武器になってほしいんですけど……」

『ああ、そういう話だったな』


 どうにもアテナは間近に魔法の実技試験があるらしく、その試験に俺を使いたいということらしい。


「それで、ヤマダさんを使いやすい形にしたいんですが、何か希望とかありますか?」

『カタチ?』

「はい。例えば杖とか指輪とかですね」

『なるほど』


 ふぅむ。

 と、悩んだのも一瞬。俺に天啓が舞い降りた。


『ペンダントだ。うん、それがいい。それしかないだろう』


 アテナの豊満なEを眺めながら、俺は答える。

 石だから視線がバレるということもない。ふふ、見放題ではないか。


 そしてペンダントになった暁にはあのたゆんたゆんに挟まれて余生を過ごすのだ。

 俺は期せずして安住の地を見つけてしまったのだ。


「ペンダントですね。わかりました!」

『おう、頼――』


 ――タンッ。

 突如、俺の真横にアイスピックのようなものが突き刺さった。


『……はぇ?』

「ああ、外れちゃいました」


 いっけない、私ったらドジなんだから。とでも言っているかのようにほんのり頬を赤くし恥ずかしがるアテナ。

 

 え、待って。


『あ、あの、アテナさん? どうしてそんな危ないものを持って……』

「だってペンダントにするんですよね? 紐を通すためにヤマダさんに風穴を開けなきゃいけませんよね?」


 きょとん、と。

 何かおかしなことしました?みたいな顔をしている。


 この子は眼前にアイスピックが振り下ろされる恐怖がわからんのか……。

 俺は努めて冷静に語り掛ける。


『いいかいアテナ、何も加工法は穴をあけるばかりじゃ……おいその手はなんだ、やめろ、一回そのピックを持って振り上げた手を降ろ――――ひいいいいいッッ!?』





 それからアイスピックで何度もガンガンと攻められること数分、なんとか俺はアテナを説得することに成功した。

 いくら防御力があるからと言っても、何度も視界にあんな尖ったものを振り下ろされるのは怖かった……。


『や、やっぱり杖でお願いします……』

「そうですね……。さすがにヤマダさんのサイズですと、指輪には難しいですもんね」

『そ、そうだね……』


 というわけで、俺は木の棒の先端に取り付けられ、魔杖にジョブチェンジを果たしたのだった。

 だいたい30センチの棒の先に俺を収めただけのお手軽なやつだ。


 本来の魔杖ならばもっとしっかりと杖と魔石が一体化するように加工するものらしい。のだが、お金のないアテナにはそういう加工を武器屋に頼む余裕はないらしい。


 まあ、俺としてはどっちでもいいことだ。


『さて、じゃあ次は試し打ちだな……と思ったけど今日はもう遅いか。明日適当に魔物でも狩りに行こうぜ』


 と、俺が提案するのだが。

 なぜかアテナの方は気まずそうに目を()らした。


「あ、いえ、その……」

『なんか問題あった?』

「えっと、明日がその試験の日なんです……」

『はあっ!? じゃあ何、ぶっつけ本番かよ!』


 俺の言葉に、苦笑いを返すアテナ。

 冗談でなくまずい状況だったんだな、この子。


『それでどんな試験なんだ?』

「先生の前で得意なスキルをいくつか使うだけです」

『模擬試験とかそういうのはないの?』

「2年生になれば模擬戦もありますけど、1年生はまだです」

『ふ~ん……』


 スキルを見てその威力だったり効果だったりを先生が判断するのか。

 なるほど。それなら俺が空に向けて【火炎放射】でもしとけば一発合格だろ。


「でも私、あんまりスキルが強くないんですよね……というか、用途が分からないスキルばっかり持ってるんです……あはは……」


 アテナは困ったように笑う。

 笑ってはいるが、なんというか、寂しい笑い方だ。


「だから他の学生の人にも『無能』とか『お荷物』とかって呼ばれちゃってるんですよね……」

『へえ』


 AランクとBランクのスキル持ってんのに“無能”ねぇ……。

 

 ビックリする話だ。


「だからその、ヤマダさんからすると期待ハズレな術者かもしれません……」

『いや、アテナは期待以上だよ』

「ふふ、慰めてくれてるんですか?」

『そうじゃなくて、本当に君には才能がある。明日証明してやるよ』

「ありがとうございます。期待していますね」


 そういうが、アテナはまだ俺がお世辞を言っていると思っているようだった。

 だがもちろん、俺は本心から言った。それだけのポテンシャルをこの子は秘めている。


 アテナに自分の能力を自覚させるには、言葉だけでは足りない。

 実際に目に見える成果を出させてやる必要がある。



【憑依】:Dランクスキル。神格を持つ存在のステータスの10%を自己のステータスに上乗せできる。ただし、スキルの発動には対象となる相手の承諾が必要。



 アテナの持つトンデモスキルの一つ、【憑依】。

 俺は神ではないけれど、一応神格を持っているので条件は満たしている。


 たかが10%ではあるけれど、レベル3000(・・・・・)を超えている(・・・・・・)俺のステータスの10%を追加させればどうなるか。


 いやぁ、明日が楽しみだ。

 

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