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城の中の一室にフィオナとジェイドは軟禁された
軍服を着ているジェイドは武器を取り上げられ後ろ手で縛られたが、フィオナには手荒なことはされずソファーに座らされた。ジェイドも対面するソファーに座っている
見張りのために兵士が一人部屋に残った。
フィオナは懐に護身用の短剣があり、ジェイドの縄を切りどうにか部屋の兵士を取りおさえることは可能かとかんがえたが、外にも兵士はいるだろうことを思うと賢い考えとは思えない
ジェイドと話したいことはあったが敵兵に囚われた状態でどこまで話していいか判断がつかず口をつぐんだ。宰相の息子というジェイドの立場もどういう風に受け入れられるかわからない以上言わない方がいいだろう、ジェイドも囚われてから何も話さず、今もむっすりと口をへの字にしている
フィオナはふーっと重たいため息をついて隠し持っていた包みを膝の上に出した。この重たい空気に嫌気がしていた。フィオナが動き出すと部屋にいた敵兵もジェイドも鋭い視線を向けたが、包みから出て着たのが4つの小ぶりなマフィンだったことに緊張した空気がふっと緩んだ
「何を出すかと思ったら…」とジェイドが呆れたように呟いた
「今朝厨房で作ったの、いつ城内に敵が入ってくるかわからなかったから腹ごしらえにって、私はバタバタしててもらったけど食べれなかったの。いる?」
マフィンを手に取り二つに割りながらジェイドに聞く。ジェイドは力なく首を横に振った
敵に捕まった以上この先どんな扱いを受けるかわからない、食べておけるうちに食べておいた方がいいと思うのだが強要はしなかった
「お茶が欲しいわね」
フィオナはのんびり呟いた。敵兵に囚われた身で言うのはなんだがやっと落ち着いた。ソファーに座るなんて何日振り、この戦争が始まってから、特にここ数日は寝る暇もないほど慌ただしかったので気をぬくと寝そうになる。フィオナは欠伸を噛み殺しながらマフィンを咀嚼した。
「どうしてあんなとこにいたの?」
眠気を覚ますためジェイドに話しかけた。そう彼は軍を率いて国境付近で敵と対峙していたはずだ。
「敵兵の別働隊が王城に向かってるとわかって俺は引き返して来たんだよ。外で出て来たやつからお前が城に残ってると」
ジェイドは余計なことは言わず淡々と話す。フィオナには姫が無事城から抜け出せたようで安心した。ジェイドにあったと言うなら軍と合流できたということだろう。
「で、なんで城内に入って来たの?」
「お前を逃がすためだろうが!」
「え?なんで?」
「何でって!」
「?」
「もういい、無事だったし」
「無事かー、無事といっていいの?」
「さぁな、少なくともお前は助かりそうだ」
「だといいけど」
ジェイドとフィオナの気が少し緩んだところで、扉が音を立てた