20
ヴィンフリートは昨晩もフィオナを抱き込んで眠り、それ以上の事は求められなかった。
もう3日目かと考え始めると色んな事が気になりフィオナは深く眠る事ができなかった。
ヴィンフリートは朝日で部屋が明るくなる前に起きた。ここ数日の習慣通りフィオナににっこり笑って「おはよう」と言ってベッドから出る。
フィオナもベッドの上でずるずると引きずるように体を起こす。
「眠そうだな、昨日は寝れなかったのだろう?朝食をとってくるのでもう少しよこになっていたらいい」
ヴィンフリートはフィオナの髪を撫でて部屋を出て行く。フィオナはもう一度パタンとベッドに伏せた。
食事と言われてフィオナはランスロットのことを思い出した。今日も彼が持ってくるのだろうか憂鬱だ。
ヴィンフリートが戻り朝食をテーブルに並べる。フィオナもベッドから起き上がりテーブルにつく。パンにスープだけという質素な物だ。それでもヴィンフリートは幸せそうにフィオナぬ笑いかける。フィオナもおずおずと少し口角を上げて応える。
「あの、食事を持ってきてくれる方のことなのですが」
パンをちぎりながらフィオナはヴィンフリートに話しかけた。
「ランスロットのことか?」
ヴィンフリートはあっという間に皿をからにしてフィオナを見る。
「えーとですねえ、彼の姉上が貴方と婚約を」
「それは断っている」
ゆっくり話を聞いてくれるヴィンフリートには珍しく、フィオナの話を途中で遮り厳しい顔で言う。
「それはわかっております。ですが、彼はそれを望んでいたわけですよね?それでしたら、貴方と結婚する私の元に食事を届ける係など、お辛いのではないかと思うのですが……」
フィオナはなるべく自分が嫌だから来させないでくれと言うのを隠して気遣うように言った。
ヴィンフリートは顎に手をあてじっと考え込んでしまった。
「……配慮が足らなかった」
しばらくの沈黙のあとヴィンフリートはポツリと言った。
「その通りだな。俺は叩き上げでこの地位まできたもので、そういう細かいことを頼める信頼できる部下が少ないんだ。ランスロットは本当に何でも気を回してくれて、俺が気づく前に手を打ってくれるようなヤツで、ありがたかったのだが、甘えすぎたな……。フィオナに言われるまで気づかないなんて、本当に申し訳ない。言ってくれてよかった。対処する」
ヴィンフリートは真面目な顔でフィオナに言った。そのことばの端々からヴィンフリートが生まれた国ではない場所で高い地位について苦労していることも伺えた。
その上、敵国の人間である自分と結婚など本当にしたらもっと苦労を背負い込む事になるのではないかとただフィオナは彼の事が心配になった。
彼の現状について思いを巡らせながらなるべく急いで食事をするフィオナをヴィンフリートはにこにこと見つめた。
皿が空になるとヴィンフリートはこの部屋から出すことは現状難しいが望みはないか聞いてくれた。
フィオナは視線を宙に向けながら少し考え、できるならジェイドに会えないかと頼んで見る。ヴィンフリートは難しい顔をして多分できないだろうと言った。フィオナも1人で部屋にいるのにさすがに退屈を覚えていたので、本が読みたいと刺繍がしたいという希望を伝えた。ヴィンフリートは希望が叶えれそうだからかパッと顔色を明るくして少し時間をもらえるかと言い残し部屋を出て行った。
残されたフィオナはとりあえずノロノロとベッドに戻り枕に顔を押し付けた。眠い、だらしないとは思うが午前中は寝てしまいそうだ。
惰眠を少しフィオナが貪ろうとした時、破壊音をたてて部屋の扉が開いた。




