だるまさんがころんだら
だーるまさんが、こーろんだ!
振り向く君、止まる僕。君は困ったような顔をして、再び正面を向く。
だーるーまーさーんーがー…… ころんだ!
今度は少しリズムを変えて。僕は出そうになった一歩を引っ込めて再び止まる。
始めの一歩を踏み出したきっかけは、一体なんだっただろう。思い出せないけれど。これは突然始まった。準備も合図もまったく無し。それから僕は、君の背中に追いつこうと必死になってる。
君が振り向かない間、僕は全力で走ってる。いつか追いつけると信じているけれど、距離が縮まる気配はない。
その理由に、もっと早く気づけたらと今は思う。僕が君の背中を追いかけるように、君も誰かの背中を追いかけているんだ。
僕が君に追いつくために一生懸命走っているように。君も走っているんだ。
きっと。君がこちらに振り返ることに深い意味はないのかもしれない。もし、意味があるのなら。それはつまり、僕の気持ちを知っているからだろう。そうだとしたら、君はとても意地が悪い。
君の想いがどれくらいのものかなんて、僕は知らない。でも恐らくは、出来たばかりの僕の想いよりは大きいのだろう。僕よりも長い道を走っているんだろう。
それでも諦めないのは、好きだからという単純な理由なんだろう。
だったら。僕の心境も分かるでしょ?
立ち止まれなんて言わない。僕にしませんかなんて言わない。僕は多分、誰かを好きでいる君に恋をしたんだから。
走り出したばかりなのに、止まれるわけがない。叶うとか叶わないとかじゃない、こんなのもう意地だ。文句でも言ってやろうか、君のせいでこんなに走るはめになったと。
だ、る、ま、さーんが…… こーろんだ!
またリズムを変えて振り向く君。息を切らせながら、僕は動きを止める。
人の気も知らないで…… 必死な僕の姿がそんなに面白いですか?
絶対、追いついてやる。とっ捕まえて、言ってやるんだ。
君が好きですって。君が見てる誰かのことなんて、忘れさせるくらいの大声で。
ありがとうございました。