第6話 『招かれざる客』
昼食を誘ったときに、円香と愛里に名前で呼んでと言われ、交遊を深めた竜牙。
その後、クラスメイト皆と昼食を食べる。
昼食の後、竜牙は強化魔法の練習中に倒れてしまう。
次の日、実技の時間に最近見ていなかったヤツが現れ----
チートな主人公が紡ぐ、ハーレム学園ファンタジー!!
入学して一日が経った。
昨日は二回も倒れたし、散々だったな。今朝はシャワーを浴びた後、いつも通りリアナが抱き着いてきた。今日も朝から大変だ。
今は部屋で制服に着替えている。午前中は座学らしい。退屈だが、授業は出席しなくては。
ドアがノックされた。
「竜牙ー。朝食を食べに行かない?」
「ん、ああ。ちょっと待ってくれ」
ん? 何で桜花がここにいるんだ?
俺はとりあえず外に出る。すると、リビングにクラスの皆がいた。なるほど。俺の部屋以外の部屋は、他のクラスメイト達の部屋だったのか。納得した。
皆挨拶をしてきたので俺も挨拶する。まだ七時か。眠いなー。
「それじゃ竜牙、そろそろ行きましょう?」
「ああ、待たせて悪かったな」
皆と一緒にエレベーターに乗る。家にいる時はいつも一人だったから、朝飯を食べる時に隣に誰かいるって珍しいなぁ。
食堂に着くと、まだ朝早いので人が少なかった。それでも、俺を見る視線は絶えない。ま、仕方ないか。そろそろ割り切ろう。
何を食べるか悩んでいると、円香がピザトーストを食堂のおばちゃんから受け取っているのが見えた。
「円香、俺もピザトーストにさせてもらっていいか?」
「別にボクに聞かなくても良いと思うよ」
と円香は笑った。そりゃそうか。
俺もおばちゃんに頼んでピザトーストにする。人が選んだモノって美味しそうに見えるよね。
ちなみに、リアナとレミーアはいつも俺のと同じのにしているらしい。そこまでしなくても良いんじゃないかな。
ピザトーストを受け取ると、俺も皆と一緒に席に着く。
「そういえば、皆は昨日の午後の授業はどうだった?」
「私はファイヤーボールを発動できたわ」
と桜花が自慢げに言う。
へー。桜花は進歩したってことか。身体強化が一ヶ月って言ってたから、充分速いペースなのだろう。だが、ファイヤーボールは初級魔法。まだまだこれからってことか。
「私は何とかグルームという名前は聞き出せましたが、姿を現してはくれませんでした」
愛里はだいぶガッカリしているな。でも、名前を聞き出せたのは充分進歩したと思うけど……。
「ボクは逆に姿は出してくれたけど、名前は教えてくれなかったなぁ。竜牙は大丈夫だった?」
「ああ。心配かけて悪かったな」
「全然良いよっ もっと心配かけて良いからね!」
いや、それはさすがにどうかと思うぞ。
とにかく、これ以上は倒れるのはやめよう。倒れるなんて普通じゃないぞ。あ、男の精霊使いの時点で普通じゃないか。
俺達は食器を片付けづけると、教室に向かう。まだ八時なのに。多分、優等生の愛里が早く行こうって言ったんだろうな。
俺達は教室に着くと、雑談したり、ノートパソコンで暇潰ししたり、適当に過ごしていた。
八時半になると、先生が入ってくる。
「では、ホームルームを始める」
先生から注意事項を聞く。今日の午後は第一グランドから、第二グランドに変わったらしい。
ホームルームが終わると、座学が始まる。今日は、文書に載っていたらしい、精霊の歴史だ。歴史は俺の得意分野だ。
周りを見回すと、他の皆も集中して先生の話を聞いている。真面目なリアナは聞いているが、レミーアは寝ている。やれやれ、少しは聞けよな。
*
「やっと終わったか……」
先生の授業は中学校とは比べものにならないくらい大変だった。どうやら、普通クラスの二倍の速さで座学は進むらしい。ハードすぎる。
「竜牙クンー。お昼食べに行こっ!」
円香がいつも通りハイテンションで誘ってきた。あの授業の後でそんなテンションでいられる理由が聞きたい。俺に元気を分けてくれ。
食堂で昼飯を食べた後、第二グランドに向かい、更衣室でジャージに着替える。
チャイムが鳴ると、先生が来た。
「それでは、昨日と同じ練習をしてもらう。霧裂、倒れないようにな」
恥ずかしい。周りで皆が笑っている。
ま、とりあえず集中するか。昨日のように倒れないように、適度に休憩を入れよう。
時間が経つにつれて、俺の身体強化魔法は上達していった。すぐに発動出来るようになったし、効率が良くなったのか、長く強化出来るようになった。
五校時が終わる頃には、昨日の俺より数段レベルアップしていた。これで魔王を倒すことができるな! いや、魔王って何だよ。
(そろそろ休憩するか……)
俺は地面に座る。すると、リアナとレミーアが俺の膝の上に座ってきて、頭を俺の胸に預けてきた。
何だかその仕草が可愛くて、二人の頭を撫でる。
『ううん。竜牙ぁ』
『竜牙さぁん。もっとぉ』
二人が艶めかしい声を出してきたので、ついドキッとしてしまう。やっぱり、コイツら可愛いよなぁ。
俺達が和んでいる時だった。急に地震のような衝撃が来た。周りからサイレンが鳴る。嫌な予感がするな。
海から、鰐みたいな生物がはい上がってきた。まさかコイツ、魔物か?
魔物なら、やることは一つだ!
「先生、コイツは俺にやらせてくれませんか?」
今ならちょうど良い。俺の成長ぶりを試せる千載一遇のチャンス。出来れば戦いたい。
先生は少し考えた後、笑った。
「霧裂、命令だ。ぶっ倒してこい!」
「了解!」
まず、リアナとレミーアを剣にしないといけないな。
俺はリアナとレミーアの手を取る。
「我、光と闇の精霊の契約者也。汝らのその光と闇の力を我に与え、我を勝利へと導け!」
『私達はマスターの剣。マスターの御心のままに』
すると、二人は輝き、剣になる。俺の周りには光と闇のオーラが漂っていた。
俺は身体強化の魔法を発動する。光と闇のオーラに、身体強化の魔法。これでだいぶ強くなったはずだ。
とりあえず、剣の間合いに入るために走る。先生と戦った時よりももっと速い。
鰐みたいな魔物も俺に気付いたようで、こちらにくる。というか、あの魔物何メートルあるんだ? 人一人分の高さはありそうだ。本当に鰐かよ。
「リアナ、レミーア、あの技を頼む。リアナも出来るよな?」
『もちろんです』
その言葉を聞いた途端、二人に魔力を流し込む。
少し経ってから、リアナとレミーアが少し光った。合図だ。
魔物との距離は三十メートルくらいあるが関係ない。このまま斬ってやる!
「ハッ!!」
俺は二人を勢いよく振った。
『デスサイズ』
『ライトブレイド』
二つの斬撃が魔物の方へ飛んでいき、斬り裂いた。魔物は絶命する。
なるほど、あの斬撃の名前はデスサイズとライトブレイドか。覚えておこう。
「霧裂! 右にもいるぞ!!」
先生に言われて右を向いてみる。すると、そこにはスケルトンの大軍が。
(おそらく、スケルトンは闇属性の魔物。なら、相性的には光だろうな)
俺はゲームや漫画、アニメの感覚で答を導き出す。そして、何も言わずにリアナに魔力を流し込んだ。リアナなら分かってくれるはずだ。
「セイッッ!!」
掛け声と共にリアナを振る。
『ライトブレイド』
光の斬撃がリアナから出る。ほとんどのスケルトンが叫び声を上げて絶命したが、何匹か生き残っている。しつこいヤツらだ。
俺は残りのスケルトンを片付けるべく、スケルトンへと走る。このスピードなら、オリンピックを余裕で優勝出来るな。
まずは一匹、レミーアで腹を突き刺し、近くにいたスケルトンへと投げ飛ばす。その後すぐに、その二匹をリアナで突き刺す。スケルトンの死骸を飛び越えて残りのスケルトンの所に行く。ジャンプしたままスケルトンの首を斬り、そのスケルトンの死骸を蹴って隣のスケルトンに当てる。当てられて倒れているスケルトンの頭を踏んで一丁上がり。余裕だったな。
身体強化の魔法も解けなかったし、随分上達しているのが分かる。それにしても、弱すぎてつまらなかったなー。
「先生。魔物の掃討、終了しました」
「ご苦労。余裕そうだな」
そうだな、敵が弱かったから余裕だ。
俺はふとあることを思いついた。今の戦闘で自分の実力も分かったところだ。試してみたい。
「私は先程の件の報告書を提出する。各自、私が帰ってくるまで自主練習をするように」
「先生、一つお願いが----」
俺は先生に放課後、ある事をお願いする。
「良いだろう。放課後だな」
「はい。ありがとうございます」
良かった。断られるかもと思っていたからな。
とりあえず、放課後までに魔力を回復しておくために、元の姿に戻っていたリアナとレミーアの手を握る。
『竜牙? どうしたの?』
「いや、疲れたから魔力を回復したくてな」
『なるほどね』
ふう。さっきの戦いは本当に余裕だったな。最初の鰐みたいな魔物は大きかったから技を使ったが、スケルトンは全然苦にならなかった。
「竜牙君、助けてくれてありがとうございました」
さっきの戦いの事を考えていると、礼儀正しい愛里が礼を言ってきた。
「別に良いって。たいしたことないよ」
「竜牙ってやっぱり強いよねー」
「そうね。竜牙、また助かったわ。ありがとう」
んー。桜花にまで礼を言われてしまった。こういう所は律儀なヤツなんだよな。
俺は放課後まで魔力を回復するために、地面の上だが構わず寝た。
*
「準備は良いな? スリーカウントだ」
「よろしくお願いします」
「では。スリー、ツー、ワン、スタート!」
合図と同時に先生へと走る。先生も同じく、全速力で走ってきた。
今は放課後。俺はあの時先生に、模擬戦のお願いをしていた。今日の戦闘の時に、俺は前よりも強くなっていると実感したから、先生にお願いしてみた。
先生は右手で鉄の剣を持っている。どうやら、魔法で作り出したようだ。接近戦をするつもりらしい。俺相手に接近戦か……。何か策があるらしい。
今の俺の遠距離攻撃の手段は、デスサイズかライトブレイドしかない。先生に距離を離されたら終わりだ。
俺と先生の距離が無くなる。俺は右手のレミーアを縦に振った。先生が鉄の剣でガードする。
(魔法で作ったただの剣だ。叩き折ってやる!)
俺はレミーアを持つ手に力を入れた。鉄の剣が真っ二つに折れ、レミーアが先生を斬る----
と思った瞬間、先生が防御魔法を発動させた。二段構えか。なら、今度はリアナだ!
俺はリアナを横に振ろうとした。しかし、
「ストーム」
風に飛ばされ、リアナは空を斬る。チッ、おそらくウィングを強化した魔法だろう。
俺はすぐに駆け出した。先生は手を俺に向けて振りかざす。
「早いが、終わりだ。ヘルフレイム!」
先生の手から凄まじい量の黒い炎が放たれた。なんて量だ。避けきれない!
(どうする、避けられないならあの技を使うか?)
俺は一か八か、リアナとレミーアに魔力を込めようとした。が、俺の手にリアナとレミーアは無く、黒い炎から俺を庇うように立っていた。
「どうするつもり----」
言葉を言い切るよりも速く黒い炎が俺達を襲う。思わず目を瞑る。熱い。焼け死ぬようだ。
しかし、少し経っても俺に黒い炎は当たらない。どうしたんだ?
目を開けると、防御魔法を展開して黒い炎から俺を守っているリアナとレミーアがいた。
数秒後、黒い炎は無くなり、周りに煙が漂う。
(これはチャンスだ。煙に紛れて先生に近づこう)
リアナとレミーアを剣の姿にすると、煙が飛ばないように先生に近づく。
煙が晴れそうになった。俺は天高く跳ぶ。これで先生は俺の場所が分からないだろう。
「何? いない……だと?」
先生は俺を見失っているようだ。今ならイケる!
俺は前にサイクロプスを倒した時と同じように回転する。とった!
「なんてな」
先生はそう言うと、手を上にかざし、防御魔法を発動させた。
(気付いてたのか!? だが、関係ねぇ! 防御魔法ごとぶった斬る!!)
先生の防御魔法とリアナとレミーアが衝突し、火花が散る。
結果、リアナとレミーアが先生の防御魔法を破壊し、先生を斬った----ように思えた。
しかし、先生は雷を纏わせたさっきの鉄の盾を持っていて、リアナとレミーアを防御され、俺の攻撃は防がれた。
「まだだあああああ!!」
俺はリアナとレミーアに魔力を注いだ。俺の残りの全ての魔力を。
『デスサイズ!』
『ライトブレイド!』
二人から今までの五倍以上の大きな斬撃が放たれる。その斬撃は先生を斬っても、全く勢いを止めなかった。
砂埃が晴れ、先生のいた方向を見る。すると、そこはただ何もない真っ黒な世界が広がっていた。さっきまではただのグランドだったのに……。
少し経つと、俺の視界は真っ白になっていった。
*
先生がカプセルの向こう側にいる。どうやら現実世界に戻ってきたらしい。
俺はカプセルから出る。すると、先生が話しかけてきた。
「最後のは驚いた。まさか仮想世界を破壊するとわな」
「へ? 破壊?」
「そうだ。あの黒い空間はデータも何も無い場所だ」
へー。現実で撃ったらどのくらいの威力になるのかな。
「それでは、私は今回のことを上に報告してくる。竜牙、見事だった」
「はい。ありがとうございました」
先生が教室から出ていく。今やっと先生に勝ったって実感した。前はボロボロにやられたしな。
そうだ。リアナとレミーアに礼を言わなくちゃな。
「リアナ、レミーア、ありがとな。特に、あの黒い炎の時は助かった」
『私達は竜牙さんの精霊。竜牙さんを助けるのは当然です』
『そういうことね』
仮想空間での戦闘でも、精神的には疲れるらしい。今日は帰ってさっさと寝よう。
俺は教室を出て、寮までの道をいつもよりゆっくり帰った。
どうも皆さんこんにちは。真剣に毎日投稿を考えている伊原志永淳です。
昨日に続いて六話。どういう風の吹きまわしなのか、三日連続投稿しております。
今回はバトル中心。どうだったでしょうか?
最近の悩みは、どうもリアナとレミーアの出番が多過ぎて、桜花達の出番が少ないこと。バランス良く書くのって難しいですね。
次回は留学生登場か!? ということで、楽しみ待っていてください。
では、また次回で。御機嫌好う。