第5話 『クラスメイト達』
見本として鷹山先生と戦うことになった竜牙。
しかし、先生にボコボコにされてしまう。
その後、戦闘の解説等の授業が終わり、休み時間になる。
休み時間に入った途端、ある人が話しかけてきて----
チートな主人公が紡ぐ、ハーレム学園ファンタジー!!
「竜牙、一緒にご飯食べに行かない?」
「ああ。ん、ちょっと待ってくれ」
桜花と二人で食べるのも良いんだが、クラスメイト全員で食べようと思った。他の二人とも仲良くしたい。
俺は声をかけるため、二人の所に行く。
「五十嵐さん、鷹山さん、俺達と一緒に昼飯食べに行かないか?」
「そういうことなら、是非お願いします」
「ボクも行きたいな」
二人の了承がとれたので、皆で一階の食堂行く。
歩いている途中、鷹山さんが話しかけてきた。
「そういえば、霧裂クンと鷲宮さんって幼なじみなんでしょ?」
「ああ。それと五十嵐さんと鷹山さんにお願いなんだが、俺のことは竜牙って名前で呼んでくれ」
俺達のクラスは人が少ない。皆で仲良くしないと、クラスの空間が悪くなりそうだ。
「分かった。ボクことも円香で呼んでね」
「私のことも愛里とお呼びください」
「了解、円香、愛里」
「私のことも桜花って呼んでね」
「分かったよ、桜花」
「分かりました愛里さん。よろしくお願いします」
やっぱりこうでなくちゃな。皆で仲良く。
食堂に着くと、人がいっぱいいた。座れる場所はあるかなぁ。
食堂も相変わらず近代的っぽいな。周りにモニターがメッチャある。
俺達が食堂に入ると、食堂全体が一層騒がしくなった。
「見て! 噂の男の精霊使いよ!」
「ホントだ……。噂通りカッコイイわね……」
うーん。過度な注目はやっぱり嫌だな。
そんなことを考えていると、隣にいる桜花の機嫌が悪くなっているのに気がついた。
「桜花、どうかしたのか?」
「別に……相変わらず竜牙ってモテるよねって」
「ん? 何か言ったか?」
「何でもない!」
と言ってそっぽを向いてしまう。たまに桜花は機嫌が悪くなるんだよなぁ。
俺達はカウンターに行き、それぞれランチを頼むと、空いている席に着く。俺はハンバーガーを二個頼んだ。本当に無料だな。
「竜牙クンってモテるんだねー。ボク知らなかったよ」
「さあ? 俺は実感湧かないな」
告白されたことは何回かあるが、全て断っている。誰かと付き合うなんて考えたことも無かった。
「竜牙さんはカッコイイですから、誰かと付き合ってるのですか?」
『竜牙さんは私の恋人です』
『私の恋人でもあるわ』
リアナ、レミーア……。ちょっと黙ってろよ。
「いや、今までに俺は誰とも付き合ったことはないな。リアナとレミーアも含め」
『酷いです竜牙さん……』
『傷ついたわ……』
いや、だって、ねぇ。真実は言うべきだろう? 嘘は言ってはいけない、と親に教育されてきたはずだ。
俺って結構カッコイイって言われるが、そこまでかなぁ。テレビのアイドルの方がカッコイイ気がするのだが。
そうこうしているうちに、ハンバーガーを一個食べ終えた。そこそこ美味いな。
「そういえば、桜花が魔法を使えて、しかも選抜生徒に選ばれているとは思わなかったな」
「そうね。でも男の竜牙が魔法を使えるなんてね」
俺も、何で自分がリアナとレミーアの契約者なのかサッパリ分からない。何か特別なことが俺にあるのだろうか。
「そういえば、竜牙。卒業式の日に私達を助けてくれたでしょ?」
「まぁ、助けたっていうか、あの時はただがむしゃらに戦っただけから----」
「で、でも、助けてくれたのは事実でしょ? だから、その……ありがと」
桜花が顔を赤くしながら礼を言ってきた。おいおい、礼をするだけなのに照れやがって。
ハンバーガーを二個食べた後、オレンジジュースを飲む。茶が美味い。茶じゃないけど。
「竜牙クン、お姉ちゃん強かった?」
と急に円香が言ってきた。やっぱり円香って鷹山先生の妹だったのか。鷹山先生と同じ綺麗な赤色の髪や、どこかフレンドリーな感じがするんだよな。
「そうだな。先生は余裕がありそうだったな。まだまだ本気は出してなさそうだった」
「ふーん。竜牙クンでもダメか……」
円香が少し考えるような顔をする。何かありそうだが、他人のことにはあまり干渉しない方が俺だ。誰しも一つくらい悩みはあるだろうしな。俺も家族のことはあまり話したくないしな。
ふと時計を見ると、時刻はもう午後の一時十五分。五校時が始まるのが一時半だから、そろそろ着替えに行かないとな。
地図を見ると、一応男性更衣室はあるらしいが、女性更衣室と同じ大きさだ。一人で使うには広すぎて使いたくないな。と言っても、女性更衣室で着替えるわけではないが。
「よし、それじゃそろそろ行くか」
俺達はカウンターに行って食器を片付ける。食堂にいるほぼ全員の視線が俺に集まっているのが分かる。やれやれ。男がここにいるのがそこまで珍しいのかよ。
俺達は歩いて更衣室に行く。
「ほんじゃ、俺はこっちだから」
『それでは皆さん、また後で』
『またね』
「おい。お前らまさかついて来るつもりなのか?」
『竜牙の着替えを手伝うわ』
『私達は竜牙さんの契約精霊。マスターである竜牙さんのお側にいるのは当然です!』
さすがにそれはしゃれにならん。リアナとレミーアはいつも通りドレスだろうが、俺はトランクスにまで脱がなければならない。さすがにそれはマズイ。
「お前ら、絶対に入ってくるなよ?」
『はーい』
やけに聞き分けが良いな。嫌な予感がする。
俺はその予感は一度無視して更衣室に入る。やっぱり大きいな。
着替えている途中、アイツらが突入してくることは無かった。嫌な予感がしたが、どうやら俺の勘違いだったらしい。
グランドに行くと、そこは中学校の校庭より遥かに大きいが、ただ大きいだけの何の変哲もないグランドだった。ここで何をするんだ?
俺がグランドにいると、皆が体操服に着替えてやってくる。ジャージだからそこまで身体の線が出ていないな。いや、別に残念とか思ってないぞ?
始業のチャイムが鳴ると同時に、鷹山先生がグランドに姿を現す。先生もジャージになっているな。
「よし、時間通りだな。では、これから個々で違うことをしてもらう。まずは時間の掛かる五十嵐と鷹山からだ。二人には自分の契約精霊と話してもらう。事前に、君達に契約精霊がいるのは聞いているな?」
「はい」
「なら良い。まずは自力で自分の中にいる契約精霊と対話しろ」
「分かりました」
円香と愛里が一緒に返事をする。息ピッタリだな。
俺が初めてリアナ達と話したのは確か、卒業式の日の朝に見た夢みたいなもの中だったな。あの時は全く意味が分からなかったが、今ではリアナ達のことを少しは分かっている。
「では次、霧裂と鷲宮だ。君達には初級魔法の練習をしてもらう。霧裂は契約精霊とのことは問題無くクリアしているし、鷲宮は契約精霊がいない。なので、五十嵐と鷹山より先のステップにいってもらう」
「分かりました」
桜花に契約精霊はいないのか。どうも、普通は契約精霊がいる人の方が珍しいらしい。
「霧裂、君には身体強化の魔法を覚えてもらう。君の契約精霊からすると、接近戦タイプだろう。なら、身体強化の魔法は必須だ」
「了解です。どういった練習をすれば良いのですか?」
「簡単だ。自分の魔力を身に纏え」
なるほど。ようするに、確か戦っている最中に光と闇のオーラが出ていたな。あれは自分で意識せずに出ていたから、リアナとレミーアが出していたのだろう。それを、二人の力無しでやれってことか。
「鷲宮には、私が霧裂と戦った時に使った魔法の練習だ」
「分かりました」
よし、桜花もやる気満々だな。俺も気合い入れてやるか。
俺の中にある『何か』が沸き上がるのが分かった。これが魔力なのか?
先生と戦った時に纏った光と闇のオーラの感覚を思い出す。思い出せ、自分の力が上がるような感覚を。
先生に言われた通り、自分の魔力を放出して、自分の周りに纏ってみる。お、案外楽に出来たな。あの時と同じように、光と闇のオーラを纏うことが出来ている。
「先生、出来ました」
「な、何? もう出来たのか?」
先生が心底驚いたような顔をした。ん? そんなに速かったかな?
「君が前に身体強化したのは、契約精霊の力があったからだろう? だが、今回は初めてで、しかも今も続けて身体強化を保てているなんて……」
「え? そんなに凄いことですか?」
「普通、身体強化するまで一ヶ月。出来たとしても一瞬だけらしい。それを、この長い時間保つなんて……」
へー、一ヶ月か。俺は前に体験していたから楽に出来たのかな。
「それでは、その魔力の身体強化をもっと効率良く出来るよう練習するんだ」
(はぁ、まだまだ練習か。だけど、自分がまだまだ強くなるって分かると、やる気が沸いて来るな!)
そう考えていると、急に身体強化に魔法が解け、体が重くなった。
それだけじゃなく、視界が暗くなり、仰向けに倒れる。
『竜牙さん!?』
『竜牙!?』
二人が慌てて駆け寄ってくる。最近倒れること多いな。
どんどん視界が暗くなっていき、真っ暗になる。そして、俺の意識は無くなっていった----
*
目が覚めると、そこは俺の部屋だった。今の俺は仰向けで寝ているらしい。
窓を見ると、外は暗い。もう七時半か……。
(ん? この腕に当たっている柔らかな膨らみはまさか!? というか、後ろから抱き着いているのは誰だ!?)
掛け布団を取ると、腕に抱き着いているのはレミーアで、背中に抱き着いているのはリアナだった。俺が倒れている時に何をやってるんだコイツらは……。
『んん、竜牙、起きたのね』
「レミーア。お前らは何で俺に抱き着いているんだ?」
『竜牙が魔力切れで倒れちゃったから、私達が魔力を分けてたの。契約者の近くにいることで魔力を分けられるのよ』
なるほど。それなら仕方ないな。むしろ助かる。
リアナは相変わらず起きていない。寝起き悪いなコイツ。
『竜牙さーん』
リアナは寝ぼけているのか、俺の名前を呼ぶ。
そして、驚くことに、俺の背中に甘噛みしてきた。
ちょ、ちょい。メッチャくすぐったい。そして何か気持ちいい。うわああああああ。これ以上は勘弁してくれ!!
俺はリアナを引き剥がそうと、リアナの方を向き、肩を掴む。
その時、リアナの身体を見てしまった。朝にも見たが、朝は見なかったきわどい部分まで見えてしまい、
(ああ、もう限界……)
俺は鼻血を噴き出して、また倒れた----
久しぶりに二日連続投稿した伊原志永淳です。
記念すべき五話。しかし、やっと五話。予定では最低百話を目指しております。
最近勉強してないので、どれだけ自分が馬鹿になっているのか不安でもあり、楽しみでもあります笑。
次回はバトルの予定。予定は未定と良く聞きます。
では、また会う日まで。御機嫌好う。