53 食堂で
午前中の授業を終え、生徒会室で決めたように10分位たってから食堂へ行きました。
すでにマリーレーヌさんは食堂へやって来ていて、ヴィル様と腕を組私を待つために入り口の正面の通路に立っていました。
「マリーレーヌさん、遅くなってしまい申し訳ございません」
「いいえ、大丈夫です。それより今日はヴィルさんからお話があるんですよ。ね、ヴィルさん?」
「ああ、そうだねマリー」
今までお二人に注目が集まっていたのですが、私がマリーレーヌさんの前に行くと、それ以上に注目されたことに気づきました。
そうして私が遅くなったことに対して謝るとマリーレーヌさんとヴィル様はとても仲が良さそうに笑いあっていました。
お兄様にも殿下たちにも大丈夫だと言われていても、胸の奥がとても痛くなりました。
「あ、あの、それでお話しとは...」
私がお二人に声をかけると先ほどとは変わった冷たい顔をしたヴィル様がこちらを見ました。私が今までに見たことがなかった表情だったので、驚いてしまいました。
「私は彼女と結婚することにしました。私と婚約破棄して下さい」
「え…」
私が驚いているなかで、さらに驚くような事を言われてしまい、彼が言った言葉に頭がついてこず、私はヴィル様の顔を唖然と、見てしまいました。やはり、どんなことでもこの言葉が嘘だと思っていても心が痛いのは変わりませんでした。
マリーレーヌさんは先ほどと変わらず、ヴィル様を見つめながら笑みを浮かべています。
「ヴィルさんは私と結婚してくださるんです。だからどうか別れてくださいね?」
「そんなこと...っ!」
「何の騒ぎだ‼」
「イーリス殿下、こんにちは」
私がマリーレーヌさんに反論しようとしてしまったときにイーリス殿下が生徒会メンバーとお兄様を連れて声をあげました。
私達に注目していた方々や私が殿下に対して礼をしているのに対して、マリーレーヌさんとヴィル様はそのまま立ったままで、マリーレーヌにいたっては王族に対しての話し方ではないような返事をしました。
「皆、顔を上げろ。それでこれは何の騒ぎかな?」
「あ、あの...」
「私とヴィルさんが結婚させていただくので、カリーナ様には婚約破棄してもらうことになったのです。それをお伝えしに」
「そうか。では、私達の用事にも付き合ってもらう。アレク!!」
「はい。.....ヴィルこちらに来い!」
私が殿下に答えようとすると、マリーレーヌさんが先に答えられました。それに対して殿下はお兄様に何かを命じ、お兄様は返事をすると私の前に立ち、ヴィル様に呼び掛けました。
「何故ですか?」
「渡したいものがあるからだ」
「そうですか...。では、私は何もいらないので。それよりも婚約破棄の答えをお願いしてもいいですか?」
「そうか...。それなら私が近づいて渡すまでだがな」
「きゃっ‼ちょ、ちょっと何するのよ‼」
お兄様はヴィル様の婚約破棄には答えず、ヴィル様の目の前に立たれると、マリーレーヌさんとヴィル様を引き離し、私が差し上げた魔力石をヴィル様の手のひらに無理やり握らせ、お兄様もその上からヴィル様が離さないように押さえていました。
「う、うぁぁああああああ‼」
「な、何‼ちょっとやめて‼」
「うるさい‼黙れ!」
ヴィル様が魔力石に触れた瞬間ヴィル様は今までに聞いたことのない声で、悲鳴をあげられました。
マリーレーヌさんはヴィル様と引き離された瞬間にテオバルト様に押さえつけられ、やめてとずっと言っています。
私はその一連の様子を何も言えず見ているだけでした。
いつの間にか私の隣にやって来ていた殿下がお兄様に「もういい」と言うとお兄様はヴィル様から魔力石を回収して、ヴィル様から少し離れました。
「ヴィル..さま?」
「...........」
私がヴィル様に声をかけてもヴィル様から反応はありません。殿下達が言っていたことがあってるのなら、ヴィル様にかけられた精神魔法が解けているはずなのに反応がなく、見守っているとマリーレーヌさんがいきなり笑い出しました。
「..ふふふ、あはははは‼あなたたちは何がしたいの?そんなことをするよりも早く婚約破棄を認めてくれない?」
「そんなもの認めるわけがないだろう❗ヴィルは今正常な精神状態ではない‼そんな状態のヴィルが言っていることを認めるわけがない‼」
「何を言ってるの?正常な精神じゃないって、じゃあどういう状態なの?」
「お前がヴィルの精神を操ってるんだろう‼」
「何をバカなこと言ってるの?好きな人を操るわけがないでしょう?」
殿下はマリーレーヌさんの言葉に反論していますが、マリーレーヌさんはずっと笑みを浮かべたままで答えています。何だか怖いです。
「ヴィルさん?ヴィルさんは本当に婚約破棄したいんですよね?私と結婚したいんですもんね?」
「何を...❗」
「ええ、私は本当にマリーと結婚したいと思ってますよ」
「まさか魔法が解けていないのか‼」
「だから最初から魔法何なかかってないんですよ?ふふふ、これで婚約破棄してくれますよね?」
「.....くっ」
殿下もお兄様もテオバルト様達も悔しそうにして何も言えずにいました。
ヴィル様には精神魔法がかかっていないのでしょうか?でも、そうしたら何故先ほどヴィル様は苦しそうな声をあげていたのでしょうか?何ででしょうか?




