事件
婚約式の次の日から学院が始まる。
宝探しゲームの時からは接触して来なかったマリーレーヌが、かなりしつこく接触してきた。
授業の合間の時間まで、マリーレーヌに追われて、(途中マリーレーヌが転んだがそれを好機と逃げた)リーナの側に行けない状態だった。
お昼の前の授業が魔法の授業だったのだが、レベル分けされていて(当然リーナは魔法の腕があったのでSクラスだった)マリーレーヌとは違う教室だったため、お昼は接触されずにすんだ。
「リーナ、今日は外でお昼にしましょう」
「はい‼今日はヴィル様がお昼を作って下さったので、楽しみにしてたんですよ~」
「ありがとうございます」
「ふふ」
このまま、教室も食堂もどちらに行っても、マリーレーヌが接触してくる可能性が高い、お昼を外で食べようとリーナを誘うとニコニコ笑いながら頷いてくれた。
さっきまでマリーレーヌに追われてイラついていた心が穏やかになる。
もう、婚約者になったのだから、抱きつきたいくらいだ。
でもここは人の目もあるし諦めよう...。
それから、ベンチに着いて私が作ったサンドウィッチをリーナは美味しいと言いながら食べてくれた。
こんなもので喜んでもらえるならと、また作ると言うと私も手伝うと言ってくれたので頭を撫でた。
リーナは頭を撫でると、嬉しそうにしてくれるから、ついつい撫でてしまう。そんなことを考えてるとリーナから、何でマリーレーヌを避けていたか聞かれた。
うーん、何て言おうか?とりあえず、宝探しゲームのあのときから避けるようにはしていたけど、今まで避ける必要も無いくらい近寄って来なかった。
それが、今日はしつこく近寄って来るもんだから、リーナにおかしく思われてしまったらしい。
結局あまりいい答えも思いつかなかったので、昨日の今日ということから、殿下たちに忠告されたからということにした。
この日から、マリーレーヌがことあるごとに近寄ってくるのを逃げ続けた。
そうして、能力試験を一週間前に控えた日のこだった。
この日は何時もと違い、マリーレーヌは私が走って逃げても諦めずに追いかけたりと、マリーレーヌを直ぐに撒けないひだった。
何時もはリーナと離れることはしなかったけど、いい加減生徒会に間に合わない時間になっていたから、リーナを学舎棟の玄関まで送って一人で生徒会室へ行ってもらうことにした。
「ヴィルさ~ん、何処ですか~?」
逃げ続け、物影に隠れていると、近くをマリーレーヌが声を出しながら私のことを探している。
早くリーナの所に戻りたいのに...。今出たら見つかってしまう。
チッ早くリーナの元へ行きたいのに。
マリーレーヌはさそれから、5分位してやっといなくなり移動できた。
コンコンコン
「失礼いたします。....リーナ!どうしたのですか!!」
「おい!ヴィルテイト!なんでカリーナ嬢を一人にしたんだ!!」
「え、それはマリーレーヌさんを撒くために...」
「だからといってカリーナ嬢を一人にすることは避けるだろう!」
「そうですね...。リーナに何があったのですか?」
生徒会室へ入ると泣いているリーナと、それを慰めている生徒会のメンバー、リーナの頭を撫でているイーリスが目に入った。
リーナが泣いていることに驚いていると、イーリスにもっともなことを言われ、リーナを一人にしたことを後悔した。
リーナは泣いていて話せそうになく、代わりにイーリスが話してくれた。
それはリーナが3人の男性に襲われていたということだった。
「申し訳ありません!リーナ!怖い思いをさせてしまって...」
「いえ、私も油断していたので、それにヴィル様のせいじゃないですよ」
「いえ、私はもうリーナを傷つけないと決めていたのに...」
今まで泣いていて、襲われたショックがあるだろうにそんなことを感じさせないように、笑みを作っていた。
それを見て、俺はもっと悔しくなった。
そんなところにリーナが「ヴィル様!今日は私の手を繋いで寝たください‼」と言った。
言われたことに驚いて、一瞬思考が止まってしまった。
「え、ダメでしたか?手を繋いでいただければ、安心して寝れると思ったのですが...うーんそれなら、どうしましょう?」
「.....分かりました。手を繋いでいるだけですからね?」
「はい‼」
自分に言い聞かせるように手を繋ぐだけと言うと「はい‼」と笑顔で言われ、リーナと約束すると、そのあとは他の人からのヤジがうるさかった。
そうして、その日の夜はリーナと手を繋いで、拷問のような、リーナの寝顔を見て、懐かしいようなそんな気持ちで夜が過ぎていった。




