ごまかす行為
朝、いつも通りの時間に目が覚めた。
昨日のあの瞬間から記憶がない。やっぱりマリーレーヌさんに何かされているのか。
「はぁ、記憶がないのは困るな。リーナに何もしてないといいけど...」
身体に何かをされた形跡はない。それだけがまだ良かったと思える。
「これは早急に確認する必要があるな...それまでは、ごまかさないと...」
「リーナはもう起きてるかな」
コンコンコン
「リーナ、起きてらっしゃいますか?」
「.....え‼あ...あ、はい‼今おき...きゃっ‼」
声を扉越しにかけると、扉のすぐそばからリーナの悲鳴が聞こえた。
「‼どうしました、リーナ‼開けますよ‼」
「え‼あ、ま、待ってくだ...」
「リーナ‼だいじょ.....」
勢いよく扉を開けると、すぐそばで四つん這いの状態のリーナがいた。驚きで固まってると、リーナは恥ずかしそうにうつむいてしまった。
「あ、...ありがとうございます.......」
リーナの前に周り、手を差し出すとお礼を言って、リーナが私の手をつかんだところで引き上げた。
「どうしてこんなところにいらっしゃったんですか?」
「えっと.....ちょっとヴィル様が心配で...?」
やっぱり、何かあったのか...、ごまかさないと。
「何で心配されてたか分からないですが.....昨日から今までずっとこの場所にいらっしゃったんですか?7月といえど風邪をひかれてしまいます❗身体を暖めて寝てください‼」
「はい...。あの~私、昨日、ヴィル様に、何か、してしまいましたか?」
「.....?」
「昨日、ヴィル様様子が変だったので.....」
「そうですか...?普通でしたけど.....。リーナのことを不安にさせてしまったのなら、すみません。気を付けます」
「あ、何でもないなら大丈夫です‼私が何かしてしまったら、直ぐにおっしゃって下さいね?」
「大丈夫ですよ。リーナが何かするようなことはないですから」
とりあえず、ごまかせたようで安心した。
「今日は授業がないですが、片付けがありますから準備をしますよ。リーナはまずお風呂に入って下さい」
「はい」
リーナがお風呂から出て、朝ごはんを取りに行き、ご飯を食べてから生徒会室へ向かった。
リーナが挨拶をして、生徒会室へ入るとそれぞれ個性的な返事が帰って来た。
そうして、奥に入っていったリーナが何かを話していると思ったら、リーナの「はい!!」と言った声が聞こえ、そちらを見るとイーリスを含め生徒会のメンバー全員が、リーナの顔を見て、顔を赤くしていた。
何、顔を赤くしてるんだと睨むと慌てたように皆が顔を反らし、イーリスが不自然に喉を鳴らし、「じゃあ、片付けを始めるか」と声をかけたことで片付けが始まった。
「片付けらのは業者の人が行うから、私たちは指示を出すくらいで、指示は配った書類に書かれている通りだ。講堂は殿下と私とカリーナ嬢で行います。食堂はテオバルト、フリード、ギュータスでお願いします」
「は~い、じゃあ行きますか~」
「テ、テオバルト、ま、待って、書類、忘れてる」
「フリード先輩、私が持って行きますから、大丈夫ですよ」
イーリスが指示を出して、テオバルトさん達が生徒会室から出ていくのを見て、あんなんで大丈夫なのかと考えているとリーナも同じ考えだったようで「な、何か不安になるような感じでしたね...」と言っていた。
それに対して、フランが何か考えてるなと思ったら
「多分大丈夫だとは思いますが.....そうですね、ヴィルテイトさんあの方たちの所に行って、見張っててもらってもいいですか?」と言ってきた。
今はリーナの側を離れるべきではないと思っていたから、「リーナの側に」と告げると「...いいですか?」と問答無用と目で告げてきた。
「.....分かりました。では、リーナを一人にしないで下さいね。リーナすぐ戻りますから、危ないことはしないで下さいね?」
「はい‼指示を出すくらいなので、大丈夫ですよ~」
とりあえず、リーナを一人にさせないことを条件に私はテオバルトさん達のもとへ向かった。




