入学式は危険
応接室へ移動し、私はリーナの後ろで、殿下に向かって臣下の礼をした。今まで会っていたときは、簡単な礼で大丈夫だったけれど、ここではリーナの従者として会っているから、そんなわけにはいかなかった。
何となく、イーリスの口元が笑っている感じがして、少しイラッとしたが、そこは無視しといた。
「お初にお目にかかります。セイン・フェルダの娘カリーナ・フェルダと申します。私の後ろにおります者は私の侍従のヴィルテイトです。以後よろしくお願いいたします」
「ヴィルテイトと申します。よろしくお願いいたします」
「よい、顔を上げろ。私はホルン国王ハラークの息子にして第一王位継承者のイーリスだ。こちらこそよろしく頼む」
「では、お茶のご用意を」
「ああ、頼む」
「ヴィル様もお手伝いをお願いします」
「はい、リーナ様」
イーリスの侍従は顔馴染みで、私の事を知っているので、私が手伝うことになると、ギョッとした顔をして面白かったが、笑わずに耐えて部屋から出た。
「ヴィルテイト様、私が準備しますので大丈夫ですよ」
「ああ、今はただの従者ということになってるから、呼び捨てで構わないですよ。後、私のことは秘密でお願いしますね?」
「は、はい、かしこまりました!!」
「じゃあ、準備しましょうか」
「はい」
イーリスの侍従の方と話をして、準備をし、また、応接室へ向かっている最中に後ろから声をかけられた。
「お~い、二人とも~」
「セイン様‼」
「さすがですね、もう終わったのですか?」
「ああ、リーナの入学式なのにこんなことになって散々だよ。早く終わらせないとリーナとの時間がなくなるからね」
「「はは...」」
セイン様と合流して、話ながら部屋の前まで着き、部屋をノックして扉を開けた。
「失礼いたします、お茶のご用意ができました。それと、セイン様がおこしになりました」
「失礼いたします殿下、とりあえずの対応は終わりました。入学式が終了しだい、王宮に向かいます」
「分かった、しかし...こんなに対応が早いなら、入学式を送らせることもなかっただろうに」
「何を言いますか、時間を伸ばしていなければ、私は娘の入学式に間に合わなかったのですから、当然の処置です」
「.....そうか。とりあえず、入学式が始まるまで後、30分あるからお茶にしよう」
セイン様の言葉にアレク以外全員呆れた雰囲気になったが、そのままお茶を入れ、イーリス、セイン様、リーナとお茶を出し、雑談をして時間を潰した。
それから、少しして講堂へ向かった。講堂の中へ入る前にリーナはセイン様とアレクの方へ向き、話をしだし、アレクは嬉しそうに笑って、セイン様は嬉し泣きしていた。
一週間以上アレクとセイン様と離れたことが無かったからか、リーナは少し涙を浮かべてお別れを告げ、私の方へ向くと「ヴィル様.....これからもよろしくお願いいたします....。どうか、一緒に居てくださいね?」と告げてきた。
リーナが小さいときに寂しさで泣いていた事を思い出したことと、自分を頼りにしてくれたことが嬉しくて、笑いながら「はい、約束しますよリーナ」と告げ、そのままリーナをエスコートして講堂に入った。
講堂に入ると、遅れて来たことによって注目されていたことと、明らかにリーナを意識して見ている目線が送られてきた。
リーナは自分のことはまぁまぁ可愛い位の認識していない。本当は世の中で一人、二人居れば良いくらいの美人なのに。
リーナは注目されることになれていないので、下を向いているうちに周りを見て、注意する人を何人かピックアップしといた。
私たちが席に着き、見計らったようにイーリスが講堂に入ってきた。それにより、リーナに向いていた視線がイーリスに向いた。こういうときは無駄な美形も役に立つ。
そうして、学院長の言葉から始まり、イーリスの言葉が終わり、リーナの挨拶になった。
少し緊張しているのか初めは声が震えていたが、だんだん堂々と話し、最後には立派に挨拶を終えていた。
リーナが席に戻ってきたとき、声をかけることはできなかったが、「良くできていたよ」と伝えたくて、リーナに向かって笑った。
すると、リーナも笑い返してくれたが、周りが更にリーナに惚れた気がして、失敗したと思った。




