42 事件発生
能力試験を一週間前に控えた日のことでした。
その日は、マリーレーヌさんが何時もとは違い、諦めずにヴィル様を追いかけていました。ヴィル様は撒いてくるから先に生徒会室へ向かうようにと言われ、私はひとりで生徒会室へ向かってました。
婚約パーティーの前まではマリーレーヌさんが、ヴィル様を好きだとは思っていなかったので、あまり気にしていませんでしたが、だんだんマリーレーヌさんはヴィル様のことが好きなのでと思うようになりました。
私とヴィル様が婚約したのを知っているはずなのに、ヴィル様に迫っているマリーレーヌさんに思わないこともないですが、ヴィル様を信じているので、ヴィル様に任せることにしています。
一度外に出て、応接棟の食堂の裏口へ向かいました。
食堂の裏口へ着く前に3人組の男の方が木の影から出てきました。
「あ、カリーナ様ですか~?」
「え、えぇ、そうですが...」
「そうですよね~カリーナ様を知らないひとはこの学院にいないですよ~」
そう言って、3人とも「あはは」と笑いだしました。一通り笑うとぴたりと笑わなくなり、3人とも私に寄ってきて、一人の方が私の腕を掴みます。
「あ、あの、何ですか?」
「ごめんね~俺ら別にカリーナ様が嫌いじゃないけど、人に頼まれちゃってさぁ~」
「そうそう、俺らを恨まないでね~」
私の腕を掴んだ男性が腕を引っ張り出しました。
「や、やめて下さい‼」
「いいから、早く来てくれないかな~」
「い、嫌です‼」
私が踏ん張って頑張ってると、腕を掴んでいる方とは違う方が焦れたのか、私の顔を手のひらで叩きました。
私はその勢いで尻餅を着いてしまい、驚きで声も出せませんでした。
「ほら、早く来い‼」
「嫌です..」
座り込んだまま抵抗していると、私のことを抱き上げようとしたのか、私を引っ張ろうとします。必死で抵抗していると「何をしている‼」という声が聞こえ、後ろを振り返ると殿下がいました。
「ヤバい!行くぞ」
殿下を見た3人組の男の方はその場から去って行きます。
「で、殿下‼」
「大丈夫か?カリーナ嬢」
「はい、ありがとうございます」
「...顔が赤くなってる、.....どうして魔法で抵抗しなかった?ヴィルテイトはどうした?」
「え、えっと...魔法は学院内での使用が、禁止されているので...生徒会メンバーの私が破るわけにはいかないかと...。ヴィル様はマリーレーヌさんを撒いてくるからって先に行っててと言われまして...」
「何を言っている‼緊急時に使わないで、いつ使うって言うんだ‼あいつもこんな時に居ないなんて..」
「は、はい...。すみません...」
「まあ、いい。次からは使って良いからな、ヴィルテイトにも必ず一緒にいるように言っておこう」
「はい、分かりました」
殿下の説教が終わり、殿下が頭を撫でて下さいました。
私は顔の腫れを消すために治療魔法を使い、そうして腫れがひいた頃に殿下と生徒会室へ向かいました。




