4 少しの後悔と嬉しさと
私が目を覚ましたのは馬にはねられた日から一週間も後のことでした。目が覚めたのは夜中のことで、一番初めに気づいたことは手が誰かに握られていることでした。暗くて誰だか見えませんでしたが、月の光を頼りにじっと見ていると、手を握っている人物が私が目を覚ましたことに気づいたのか、パッと顔を上げました。
「カリーナ様‼︎起きられたのですね!喉が渇いていらっしゃいますよね?少し体を起こしますよ」
そう言ってヴィル様は私の背に腕を回して壊れ物を扱うように抱き上げると枕もとの机に置いてあったコップに水を入れ、口元に運んで下さいました。
「ゆっくり飲んで下さいね。飲み終わったらまた寝て下さい」
「うっ…、ヴィ…ルさま、わたしは…だいじょう、ぶですから、そんな、かお…しないでください。」
「大丈夫なはずないじゃないですか!背中を打ちつけ、足は折れてしまったのですよ!私が手を離さなければ…今だって話すのが精一杯って感じじゃないですか!!」
私が勝手に走り出して馬にはねられたのにヴィル様は悔しそうに歯を食いしばっていました。
「ヴィルさま、ごめん、な…さい。」
そんなヴィル様の様子に手を離してしまった後悔と、それでも心配してくれて、手を繋いでてくれていた嬉しさを覚えました。ただ、体力が残っていない中の目覚めだったこともあり、私はだんだん意識が薄れていき、ヴィル様には謝ることしかできませんでした。