2 初めての出会い
「リーナ、どこに居るんだい?」
「…ふふ」
私は今、お兄様とかくれんぼをしていて、庭の木の陰に隠れてるところです。私を探してくれているお兄様が嬉しくてクスクス笑ってしまいます。
木の陰からそっと覗くとお兄様は少し遠くでキョロキョロしていました。
「リーナ、もうお手上げだ、出てきておくれ」
2、3分後、お兄様が近くを通った時にそう言われ出て行くことにしました。
「おにいちゃま、ここでちゅよー」
「そんな所に居たのか、気付かなかったよ。リーナは隠れるのが上手だね」
そう言ってお兄様は微笑みながら私を抱き上げてくれました。それが嬉しくて笑っている所にお兄様の従者のウィルが寄ってきました。
「アレクセイ様、そろそろ稽古の時間になります。準備をお願いいたします」
「もうそんな時間か…。ごめんねリーナ。また、後で一緒にお昼を食べよう」
「あい…またあとで、いっちょにおひるたべまちゅ」
悲しいですが、しょうがないです。しょぼんとしながら頷いてお兄様とお別れをしました。
私、リーナことカリーナはホルン国のフェルダ公爵家に長女として生まれました。私が生まれた公爵家は代々ホルン国の宰相を勤める立派な家です。そんな家に生まれた私の十歳上のお兄様、アレクセイお兄様が忙しくないわけがなく会える時間が少ないです。
お兄様以外の遊び相手はもっぱら、執事やメイドの者たちです。それは、私を産んだ時にお母様は亡くなってしまい、セインお父様は宰相で忙しく 、お兄様も勉強や剣と魔法の稽古で時間がないからです。
「お嬢様、そろそろ夕食の時間ですよ。今日はセイン様もご一緒に召しあがれるそうですよ」
「ほんと!はやく、ちょくどうにいく!」
忙しいお兄様もお父様も一緒に食事を取れるようにして、お母様がいない分も補うようにとても可愛がって育ててくれます。それでも、一人の時間があることが寂しい中、私が四歳になり兄は王国学院に通い始め、頻繁に帰ってきてくれるものの家族がそばに居ない日が増え寂しさが増していき、父も忙しいので更に一人の時間が増えていきました。
それからしばらくして、5歳になって数日後の夕飯時にお父様が男の子と一緒に帰って来ました。
「リーナ、これから君の世話役として連れてきたヴィルイト君だ。これからはヴィルテイト君が毎日居るからね。兄のようなものと思えばいいかな。ヴィルテイト君、娘のカリーナだ。よろしく頼むよ」
「はい、セイン様。これからよろしくお願いしますカリーナ様」
父の説明を聞き、私は嬉しさのあまりイスを飛び降りて、父とヴィルテイト様のそばに走りより彼の手をとって握りしめました。そんな私にヴィルテイト様は微笑みながら挨拶をしてくださいました。
「こちらこそよりょしくおねがいします。わたしは、カリーナともうします。ヴィりゅてぃと様」
「カリーナ様にはまだ言いづらかったですね。ヴィルで良いですよ」
「はい!!ありがと、ございます。ヴィりゅさま」
まだまだ、口が回らない私にヴィル様は微笑みながらヴィルと呼ぶことを勧めて下さいました。この日が彼との初めての出会いでした。