勘違いに気づく頃に
「先生、講義をサボったのは謝ります…でも、
俺はもっと実用的な魔法を…」
カイルの言葉を師は遮る。
「そういうと思ったよ、カイル君。でも心外だね、魔法薬学という部門に実用性が無い。と、下級魔法士なんかに断言されてしまうのは。とてもね。
でも、君との手合わせがこんな形になってしまうとは。僕は、僕が教えた魔法を使う君と、戦いたかった…。」
そういうとカイルの師、サルガスはシャウラから
距離を取ってカイルをそちら側へ誘う。
「サルガス先生…しっかりとその子を懲らしめて
あげてくださいね?お姉さまをこの国から出したくはありませんもの。 お姉さま、こちらにおいでなすって?師と教え子の戦いなんてとても心が踊らなくて?一緒に足の先から舐めるように楽しみましょう?」
シャウラがそういうと、カイルの側にいたカペラが風と共にシャウラの隣へ魔法で移動する。
「一番弟子君、勝ってみせなさい。心配いらないわ、いつもの通り平常心で。落ち着いて。」
カペラが優しく言う。
カイルもサルガスの前に出て行く。
カイルとサルガス、二つの闘志が熱戦の火蓋を切った。
魔法指導 10日目
「さ、一番弟子君。その、サルガス先生とやらの
得意分野、教えて貰っていい?」
「魔法薬学です…最初は方程式とかばかりで、
1つも魔法、教えて貰ってないんです。」
カイルの返答にカペラは顔を少し曇らせる。
「魔法薬学…?治癒系の魔法薬の方程式は…?」
カペラの問にカイルは首を傾げる。
「治癒系?どんな効果が出るのか、だったら
傷を癒したりってのは無かったような。
でも、攻撃系とか治癒系とかにしても、方程式だけじゃ結局意味無いんじゃないですか…?薬品が無いわけだから…」
「一番弟子君、そんなことは無いの。一番弟子君は魔法を使いたいって言っても講義しかしてくれないって、だからここに来たって…もしかしたら、
一番弟子君に教えていたのは、かなり高度な薬学方程式で、どこからか好きな物を持ってくる魔法を最後に教えるつもりだったんだとしたら…その先生は君を、殺戮兵器並の薬学魔法士にするつもりだったんじゃないかな?…しかも、賢者の上の方に匹敵するような…一番弟子君、うわ~勿体ない~。」
カペラはカイルの言葉に被せて言った。
「え?え?あの、まったく言ってる事がよくわからないんですが…。」
まだ状況を理解しないままおどおどするカイルに顔を近づけ、カペラは言う。
「一番弟子君、作戦変更。この魔法も教えておく必要があるみたい。あなたの先生は、シャウラとほぼ同じレベルの魔法士よ。自分の身は自分で守りなさい。」
龍は動き出す。