謎多きまま進む馬車
火の国 宮殿前
「さぁ着いた、攻め込むよー!」
数多くの視線をよそに、カペラは無邪気に言う。
「でも、どうするんですか?アポを取った
っていっても、警戒されて警備を厚くされたら
面倒な事に…。」
カイルは周りに申し訳なさそうにしつつ訊いた。
「へ?問題ない問題ない!一番弟子君?お手を拝借するよ?」
カペラが手を取る、二人が光に包まれその場から
消える。民衆が驚く中、カイル達は赤色の部屋に
降り立った。
火の国 宮殿 最上階
「お久し振りですね、カペラお姉様?」
玉座に座るのは、編まれた自身の赤い髪を撫でながら、焔の魔女 シャウラ。艶かしい声で、カペラに声を掛ける。
「外出許可が欲しくて、この子とね。」
カペラはカイルの腕を引き、組んで言った。
「そこの少年をその後返してくれるなら、
問題ありませんわ。一体何をしに行きますの?」
シャウラは唇に指を這わせつつ尋ねる。
「ずーっと小石だらけの住居は疲れちゃって。
それに今の国の統治の仕方に不満があってね、
協議会に出ようと思うの。」
カペラの言葉に、シャウラの表情が変わる。
「それは認められませんわね。協議会には
出させない、という契約で私がお姉様を
引き取ったんですもの。それにお姉様とも
あろう方がその少年の才能に気付かない筈
ありません、力ずくでも止めさせていただきます…ふふふ。」
「予想通りの答えだわ、そっちがその気で
嬉しい。なら、一戦交えましょう?」
カペラは何かを企んだように言うと、こう続けた。
「でも、私とシャウラじゃあこのお城粉々に
なっちゃうわ、だから少し趣向を凝らさない?」
「趣向…?一体何ですの?」
シャウラはカペラの問いに警戒する。
「私の代わりに、一番弟子君が戦うわ。
だからシャウラ、あなたが一番強いと思った
自分の兵を戦わせなさいな。」
シャウラは勝ちを確信したように顔を歪ませた。
「いいですわよ!?…私の雇っている中で
最強の兵…それでありながらその子の相手に
相応しい者…姿を現しなさい!」
シャウラの呼び掛けに応じて、玉座の奥の影から
一人の男が現れる。 カイルは驚いた。
その姿に見覚えがあった為てある。
「先生…。」
その言葉を発した生徒を見ながら、師は呟く。
「カイル君…講習をサボったツケは…ここで
払ってもらおう。僕の魔法で焦げる、君の肉で。」
火蓋が切られようとしていた。