蚊取り線香
… ってちゃんと点三つで表示されます?
きになりますわ。
魔法指導 14日目
「さ、そろそろ形になってきたんじゃない?」
カペラは腰に手をあてカイルに言う。
「はい。まぁ…覚えたの、たった二つですけど。」
カイルは椅子に座り身支度をさせられつつ言った。
「でも、これから一体何処にいくんですか?」
今から何が起こるのも聞かされていないカイルは
訊きたいことが山のようだ。
「簡潔に言うとね、シャウラを少しこらしめて
やるのよ。」
カペラは嬉しそうに言った。
でも、カイルにはその一言があまりに予想の範疇を越えていて、驚かざるをえなかった。
「し、シャウラって、あの、この国を統治してる
魔女ですよね?師匠、この森も領土ですよね…
それって反逆じゃ…!?」
カイルが魔法を習ってきたこのカペラという
少女は星の魔女なのかもしれない。
しかしいくら指導が良くてもまだ、あの戦争で
猛威を振るった星の魔女その人とはまだ
確証が無いのである。
「反逆ぅ?別に良いじゃない。前の講師から
逃げたんだから、シャウラぶっ倒して怖じ気づかせてその講師にも軽くお仕置きしてやんなさいよ。
それにね、えーと…」
カペラは物騒な事を口に出しながら、カイルの
斜め後ろにある引き出しを漁り始めた。
「!」
カイルは豆鉄砲を食らった鳩のようになった。
カペラはカイルに正面から抱き付くような形で、
引き出しの中の物を探しだしたのである。
カイルの本能的な嗅覚を掻き乱す様なカペラの
香り、花とも菓子とも異なる甘い匂い。
見れば見るほどその美しさの理由を問いたくなるような白髪。包み込むようにやわらかな脚。
不可抗力で顔に当たっている二つのたわわな胸。
それが顔から離れると、目を奪われる美しい
カペラの満面の笑みがカイルに向けられる。
「見て見てこれ、ほら!私はここ!シャウラはここ、私の方が上!」
カペラが見せたのは魔法士階級表、
この世界で第三次大戦後発足した新たなる
身分の法だ。カイルや、一般の魔法が使える者は
下級魔法士、下級魔法士に魔法を指導できるのが
上級魔法士、今7つ以上の国の統治をしている、
魔女達の特別階級、賢者級魔法士、シャウラは
この階級である。
魔女達を遥かに超える魔法の数々を操る、賢者。
例外で、賢者と究極の階級、聖賢者の間に位置
する、カペラの階級、特別聖賢者級魔法士。
「わかったかな?一番弟子君。認定証というか、
協会側から通知された紙ならあるよ?見る?」
「いえ…もう充分です、師匠。」
カペラとの階級差は天と地程あると知り
カイルは改めて彼女の指導がどれだけありがたい
ものか理解した。
「じゃあ取りあえず、シャウラにアポを取っておきましょう。」
カペラはそう言いつつ指を鳴らした。
カイルの体をとてつもない魔力が、突き抜ける。
それに害は無く、体が寒気を感じる前にシャウラ
のいる宮殿に向かって飛んで行く。
「さ、行きましょ?」
カイルに小さく投げキッスをすると
カペラは微笑む。
火の国 宮殿
「んん~…カペラ様、もしかして私に何か
するつもりですの…?」
火の国、焔の王シャウラは玉座に座り、
舌なめずりをする。
「シャウラ様、今のは…。」
シャウラの近くで本を読み、問を投げ掛ける
影が一人。
「あら、先生?生徒のカイル君は見つかって?」
シャウラは何かを企んだように尋ねる。
「はい。先程の魔力、カイルを通過してから
こちらに来ました。彼もかなり力をつけた
ようです、私と張り合える位にはなったかと。」
二つの炎が静かに燃える