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星の魔女 序  作者: 羅偽
全ての始まり。
32/33

星と涙とセイリオス

最終回ですよ。

カイルは走る。

短い間だが、それなりの距離を彼は走り続けていて、息も上がる。

彼女を、カペラを止める。できなくても、挨拶くらいは言うために。

国の大きな門を出、走る。

転びながら、汚れながら。

今まで彼女に習ってきた、本で読んだ魔法が頭から消えるほど。

走る。







三次大戦



雪、白い結晶が空から降り積もる現象。

赤いその地を白く戻そうとして、羽は地に落ちていく。

カペラに殺された兵…。

全員死んでなどいなかった。

一度、兵達自身も死んだと思っていたけれど。

目を覚ます事ができた。

何か、彼女に何かを言われたかのように。

心に不思議で、少し悲しい違和感を憶えながら。

もう、戦うな。

そう言われている気がした。



「ぐっ!…私の《竜依》状態を…越えている…!?魔法と見なせるような技を使わずに…。」

フォーマルハウトはカペラに体を転がされていた。周りの兵が蘇り始める。

「じゃあ…ね…あなたは国を、統治するべきだわ…。フォーマルハウトさん…。」

カペラは力なく言って、自らの龍にまたがる。

白い、顔は見えなかったが、見たことの無い種類の龍。大きな翼、尾の先は剣。

「どういう事だ!一体何が…!」

「ミザールと、話し合ったの。この世界を暫く平和にするって。」

フォーマルハウトの問いかけの答えも、最後の方は龍の羽ばたく音に掻き消されていた。







私は、ミザールとの戦いの途中に幻を見た。

お父さんとお母さんの。

殺すな。って。

生き返らせろ。って、

私が殺した人も、殺さなかった人も。

前から死んでいた人も。

怒りと狂気は泪に変わっていたようで、ミザールは剣を止めていた。

二人は言い続けていた。

もういい、って。

ずっと、あの戦いが。三次大戦が終わるまで。

その頃から雪が降っていたっけ…。

そして、ミザールとフォーマルハウトは協会の重役に就きつつ私を庇ってくれた。

でも、思ったより早くその約束の期限も切れてしまった。

見当はついている。

私自身でどうにかしなければいけない。

首を差し出せばカイル君は私を探すのだろうか。





時が戻って

二人は道で会う。

「師匠…!」

カイルは師を呼ぶ。

掠れた声で。

走りすぎて体力も底をついて。

カペラも振り向かなかった。

「どうしたの…あわてて。」

カペラの声はほんの少し震えていた気がした。

「どうしたのじゃなくて…協会に行くってのは本当ですか…!」

「協議会っていうのを協会でやるのよ。前も言ったことあるでしょ。」

突き放したいカペラと引き留めたいカイルの二人はとても、端から見られる物では無かった。

「ならどうして…!この前ミザールに泣いて別れを告げたんだよ!?」

「…!あなた聞いて…、それは…」

「俺は聞いてたよ、師匠。アンタ俺の名前を言って泣いていただろ!俺の見たことの無い顔で、一回も聴かせたことのない、か弱い声。いつもの自信に満ち溢れていた声とはまるで別の。今のアンタはその声で俺に話してる、なんなんだよ!」

カイルは続ける。

「短い間だったよ、火の国を出てからは一週間経つか経たないかで。時間は少なかったけど、まだ訊きたいことも、話したい事も、やりたい事も、全部心に詰まってるのに…。」

「すぐ帰ってくるってミザールが言ってたでしょ…。」

「ならどうして!アンタは 泣 い て いるんだよ!どうして笑って俺に挨拶をしないんだよ…!その身支度はなんだよ!?どうして何も言わずに協会がある方向に歩こうとしてるんだよ!なんで…アトリアの家のドアの前は濡れてたんだよ…なんで涙の跡がずっと続いてるんだよ…!」

カイルはフラついて言う。

倒れる寸前の絞りかすを磨り減らして。

「あぁ…もう少し、早く出れば良かったなぁ…。」

「師匠…。」

カペラはこちらを向く。

涙はあの時影の国の回想で見た血に変わりかけていた。

「どうしても、行かなきゃいけないんだ…。この世界とは異端の星の一族は、好きな男の子と一緒にいろんな所に行ったらいけないんだよ…?」

「カペラさん…。」

「ばっか…ここで名前はさ…ダメだよ…。まだ言いたいこと言い切ってないのに…。」

カイルが名前を呼ぶ。

カペラは笑って血を流す。

「四年。四年だけ、待って。全部終わらせてくるから。」

師は再会までの長すぎる時間を言った。

「その前に、俺が…変えてみせる…!俺が、協会のアイツを…!シリウスを倒して、変えさせてみせる…!これからミザールの所で…!四年なんて師匠が待たなくていいように…!きっと、」

「ふふ…ダメだよ一番弟子君。今の君の顔は、見るに耐えません。バイバイ。」

カペラはカイルに背を向ける。

「またね、カイル君。」



無力な二人は別離する。

四年。その時を信じて。








協会前。



カペラの前に現れるのは精鋭達、魔法と魔法士殺しのスペシャリスト。

「手厚い歓迎だわ…。懐かしい顔もちらほらだし。」

星の魔女は笑う。

「これだけの数を見ても、笑っていられるとはな。驚いたよ、狂ったか?」

協会の王、シリウスは言う。

「そうね、だいぶ前からだけど。待ってなさい、すぐそこに行くわ。もう一人のーーー。」


シリウスの真名を言う、その時に。

血飛沫は序章の幕を彩る。

実は、続きますw

星の魔女~2 years later~

の予定です。

URLは

http://ncode.syosetu.com/n7981cp/

です。

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