再会する町で
広いフロアに音が響く。
何度も重なるその音は、突如切れる。
すると、ドス。っと人が床に倒れる。
カイルだ。
「どうした、雑念ばかりで攻撃に迷いがあるぞカイル。」
ミザールは模造の剣を投げ、言う。
新しい修行は始まって二日目。
魔法についての講義、そのあとのミザール達との模擬試合。
なれては来たが、カペラの動向が気になる。
姿を見てないがどうしたのだろう。
「…仕方ない、今日は終わりにしてやる。後は好きに過ごせ。」
不意に、ミザールが言った。
「近くに噴水のある広場があるだろう。あそこの店は、カペラが好きでよく通っているのだ。」
そしてこう続けた。
カイルはハッとする。
駆け出した。
国の一番奥にある城の門を駆け抜け、
真っ直ぐ走る。
噴水は大きく、城門からすぐに見える。
しかし、城下町の広さは相当な物で、どれだけ走っても辿り着ける気がしない。
ふと、気が遠くなるようなランニングの途中。
見たことのある影が見えた。
長くて白い髪、ローブにギンガムチェックの手首まわりとブーツ。
カペラその人である。
「師匠!」
呼んだ。
聴こえていないのか、微笑みを崩さずふらりと歩いていく。
全く知らない小路。
名前を呼び続け付いていく。
市場からうってかわって静かな路地の裏、
そして行き止まりの場所。
そこで、カペラは立ち止まる。
「話しておくわね、本物が旅立つ前に。」
「え…?」
カイルは驚く。
よく見ると、カペラがぼやけている。
「私には本人と違う自我があるから、たまには反抗するのもいいかなって。」
そういうと、こう続けた。
「私はカペラに作られたお使い用の分身と言うか、まあカペラの所に戻ると消えちゃうんだけどね~。んで、まぁ何処にいるのかとか、何するのか。とか、教えとこうと思って。」
分身はそのまま言う。
「あなたの愛しのカペラお師匠様は、協会へ行くのよ。シリウスと話しにいくけれど、多分反乱分子扱いで、会うことすら敵わないんじゃないかしら。あ、理由ね理由。どうしてかっていうと、三次大戦の後の規約の期限が来てるのよ。暫くはカペラはお咎め無しだったけど、協会側からしたら大罪人なのよ?ざっくり言うと、仲裁に入ったけど協会の有名所を沢山倒してるし怒りを買いまくり。まぁ、そこは話して無いからポカーンだと思うけど。」
とにかく、とカペラの分身は告げる。
「今本体はあなたの仮住まい、アトリアちゃんの所にいるわ、走りなさい。まだ間に合うから。」
カペラの分身が言伝てを終え、消える前にカイルは走り出していた。




