最後の会話 旧友
「どうした、俺には言うことが無いのではなかったか?」
「いやいや、騎士様には改めて、カイル君をよろしくと思って。」
カペラはミザールに言った。
「珍しいな、お前が彼の名前を呼ぶとは。一番弟子で通すのでは無かったのか?」
ミザールの問に、カペラは涙を流す。
「いや…なんか、動揺したんだね…ごめんね、なんか。やっぱりキツくて…。」
「まぁ、仕方あるまい。なんというか…我々がどうにかできる問題ではないからな…。」
ミザールも自身に鞭を打つような想いが顔から見てとれた。
「行ってこい。すぐ終わるのだろう?」
「驚いたよ、私にあなたが面と向かって何かを言うときが来るなんて。」
フォーマルハウトが言った。
「カペラお姉様、私お姉様の帰りを待っていますわ。ちゃんと帰ってきてくださいね。」
シャウラが深く頭を下げる。
「もし、良ければ。カイ…一番弟子君のところに行って、いろいろ教えてあげて。」
カペラは笑って言った。
「勿論ですわ。ハウトと共に、彼をお姉様の婿に相応しい魔法士に。」
「ちょっと!?なんで私とアンタが一緒に、一人で暇なとき行ってあげるさ。」
「ぷっ、婿修行はしなくていいわよ。」
吹き出すカペラに二人は言った。
「いってらっしゃい。」
「おやおや、嬉しいです。影の国にまで顔を出してくれるなんて。」
夜市のような影の国の小さな階段に二人、マルカブとカペラは座っていた。
「私の過去を一番弟子君に見せたよね、あれ慰謝料請求できる?」
「えっ、こんなときにお金の話ですか?まったく、御自身の心配してください。」
笑いながら二人は立ち上がる。
「いってらっしゃい。カペラさん。」
「今度、一番弟子君の、カイル君の所に行ってあげて。」
「泣きながら言われたら、断れないですね。」
マルカブを小突いて、カペラは言う。
「泣いてないわよ、バーカ。」
いつか、皆が集まれる時が来ると信じ。
星の魔女は恋する彼へ、別れの言葉を…。




