気にしない美女
「一緒に浴びる?」
白髪の彼女は目の前に転げ落ちてきた少年、
カイルにそう言った。
カイルは答えなかった。ホース
を持った少女の格好が、講義漬けのカイルには
新鮮かつ刺激に溢れていたからである。
どんなにシンプルな黒のビキニスタイルの
水着でも、精神的に腐りかけていた彼には
少女の美しい顔立ちと白髪が相まって、
彼の思考をしばらく止めるには充分過ぎたのだ。
「もしもーし。」
彼女の声で我にかえる。カイルの目の前には
水に少し濡れた魅力的な顔が彼を覗き込むように迫る。
「うわぁ!…」
思わず距離をとってしまう。今までに無い動機が
カイルを襲う。
「大丈夫?頭打った?立てるかな?」
叫んで距離をとったカイルを気にもせず、少女が
手を伸ばし、カイルは俯きつつ手をとる。
「君は一体ここに何しに?なんにも無い所に
お客さんは珍しいなぁ…。」
カイルを引っ張りながら彼女は尋ねる
「俺は…森の奥にいると噂されている星の魔女に
魔法を習いに来たんです。無茶かもしれない
けど、つまらない講義だらけの毎日はもう
嫌で…彼女について何か知りませんかね?」
カイルは少女に信念を伝えた。真っ直ぐに。
「へぇ…星の魔女に…ねぇ…。」
彼女は少し笑みを浮かべると、腕を振り上げ、
指を鳴らした。
「丁度退屈し続けて退屈に退屈していたところだったのよ…。私に声を掛けてくれるなんて、アナタ変わってるわ。」
雲のあった青い空が切り裂かれ、夜空に変わる。
どこからともなく突風が吹き、ごうごうと
木々を鳴らす。驚くカイルをよそに、少女は腕を組み言った。
「それじゃあ、始めましょうか?…魔法のレッスンを、一体どんな魔法を習いに来たのか…教えて頂戴…!」