レトロゲームとカイルのステップ
『のう、坊主。ワシはこの通り鎖に繋がれた身じゃ、師のショッキングな姿を見て心が寒天のように揺れとるじゃろうが、この鎖を解いてワシと契りを結んではくれんか?』
まどろむように地に伏す龍はそういった。
翠の体の鱗は目立たず人間の皮膚のようで。
何があったか、その体には鎖の痕がついている。
焼き印のように、白く。痛々しい。
「お前は…俺と契約したドラゴンなのか…?」
『そうとも、名は、東では無かったが。
西ではファフニール、昔風妖精を選り好んで食らっていてな。貯めていた風を使っていたら名を冠する事となった。』
それよりワシの頼みを聞いてくれんかの。
と、ファフニールは言う。
「俺は、何をすればいいんだよ。あんなもの見せられて、急にお前にそんなこと言われて。」
『問に答えればよい。』
ファフニールは訊ねるカイルに言った。
『坊主、貴様が星の娘と旅をするのは何故だ。』
「恩だ、経験をここまで積めて。まだ使えないけど魔法もたくさん覚えた、死にそうな思いもしたけど、彼女との特訓は十分に俺を変えてくれるものだった。」
カイルは答える。問は続く。
『貴様がしてきたことは何だ。』
「旅、だ。」
『そういうことでは無い。何をしてきた。』
「それ以外…わからない。」
そのまま続いていく。
『どうしてここにいると思う。』
「契約か、強くなるためだ。」
『その答えはあっていると思うか?』
「どういうことだ?違うのか?」
『問をしているのはこちらだ、言い方を変える。お前の旅は、本当に正しいか?このまま旅を続けて貴様が辿り着ける場所は?』
「そんなの、わからないだろ。」
『否、無だよ。カイル、我が宿主。何も無いのだ、このままでは。貴様は信念がない。そのまま進んで死なれると、こっちは困るのだ。信念が欲しい。
星の娘とは関係の無い、信念が。』
「師匠とは関係ない…?どういうことだよ、それに信念信念って、何を欲しているんだ?お前は。」
『その時がくればわかるさ。問は十分、後は貴様次第だ。』
そういうと、ファフニールを結び付ける鎖が千切れる。
畳まれた翼が広がり、雄叫びと共にカイルの視界はフォーマルハウトの戦いの場面へ巻き戻る。
契りは果たされたのだろうか。




