コーダ
重すぎて人格変わるわー(笑)
女の子は泣きました。ずーっとずーっと。
口を押さえて泣きました。
「やめろ!やめてくれ!頼むから…!」
どうして?見てみなさいよ。私のバカみたいな泣き顔。このまま涙が枯れるまで泣くのよ?
女の子は泣きながらも、テレビから離れることができませんでした。
このテレビは魔法のテレビ。普通の人が見れないところさえも、女の子に見せました。
いい方向にそれが働くこともこの先あるのかもしれません。でも、その時は女の子の心をさらに切り裂くだけでした。
暗い霊安室の奥、首と体になったお母さんは、銀の棒の人に、死んでもひどいことをされていました。
サブリミナル効果と言うのでしょうか。
女の子にはそれが何をしているか、昔見ていたのか、すぐわかりました。
とても残酷で猟奇的な事だと。
「あぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁおあ!!」
そう叫び泣く女の子の顔しか、俺は見ることが出来なかった。
「いつでも、死んだオンナは最高だぜぇ!ヒャッハッハッハッ!」
そうテレビから聞こえる。想像もしたくない。
女の子は嗚咽と叫びを交互に繰り返して。
時には胃の中の物を吐き出したりした。
それでもショックは止まらなくて、
胃の中が胃液だけになっても戻し続けていた。
俺もただ泣いているだけだった。
やがて、お母さんはテレビに映らなくなりました。女の子の涙とは真逆に明るい表情をします。
時たま大戦の映像が映ったりしました。
ミザールと呼ばれる騎士の活躍や、
協会の目指す世界の方針。反協会派のデモ。
それが終わり、大戦が激しくなってきた辺りで、
女の子の涙は枯れ果てて、血が流れるようになりました。
「憎い!憎い!憎い憎い憎い!私から親を奪った大戦が!笑顔で笑う人々が!飢餓で苦しむ人々も!この世界の絞りかすでさえ!全てが憎いぃい!!」
そういって女の子は家の本棚を蹴り倒す。
転がった中から白くて薄いのを開いてそこらの椅子に置いて目を通すと、
女の子は右手首を左の手で引き千切った。
とても簡単に。
魔法で筋力を強化しているのか。
そうしてそれを床に投げつける。
血で満ちているのに乾いた音がした。
今度は右腕、ちぎった後はもう一本右腕が生えてきて、ちぎった方ははいらなくなった。
すると女の子はそれで何かを書き始める。
魔方陣だ。
いらない右手を中心に。
師匠が俺に一度も見せたことの無い模様の魔方陣。
何をするのだろう…。
憎い!と、言いながら血で魔方陣を書き終えると、赤いインクの切れた腕を血が垂れる右手の上に投げ捨て、女の子は血を流して叫ぶ。
「星の一族が命ず!星の竜!星の龍!どっちでもいい!私の腕をくれてやる!契約だ!人間だって沢山喰わせてやる!私の魔力に喰われない奴が来い!世界をひっくり返すんだ!」
すると女の子を光が包む…。
ん?ここはどこだって?荒野よ。
言い換えれば戦場。私の家にあったテレビは、この世の魔法全部を映していたわ。
それに、お母さんは少しだけ私に魔法を教えてくれていた。
そのお陰で、私は一通り魔法を使えたわ。
この第三次大戦で猛威を振るった星の魔女は私。
行きなさい一番弟子君、とっくのとうに忘れ去られた忌まわしい記憶に住むこの私は、既にカペラじゃない。もう、今までの君との思い出と溶け合って、一つになりつつある。
こんな面白くないもの見てないで、新しい出会いを探しに行くのよ。
ー鎖に繋がれた龍が目の前にいた。




