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一夏の出会い
四年後。
火の国 星繋ぎの森
少年が走る。草と身体がぶつかる音が
響く。少年は嫌な奴から逃げているのだ。
彼は魔法の才能があり、それが
裏目に出た。講師から退屈で
無意味な講義の日々、うんざりしていた。
ボイコットがバレないはずはなく、
後ろからは追いかける講師の声が聞こえる。
とにかく走った。この先にいる星の魔女の
噂を信じて。強力な魔法で他を圧倒したと
言われている彼女なら、まったく応用の効かない基礎的な魔法ではなく、夢見て憧れたような魔法を教えてくれると。
ふと気づくと講師の声は消え、少し先に
光が見える。
突き進んだ。
転げ落ちるように森から飛び出すと、
白い小石で敷き詰められた空間に出る。
冷たいものが頬につき、飛んできた方を見る。
白い髪の、自分と変わらないくらいの歳の
少女がビニールホースをもって微笑む。
「一緒に浴びる?」
少女は無邪気にそう言った。