円卓
ここは明るく華やかなディナー会場である。
カイルが事の後片付け、ムーリフを近くの病院へ、床をスタッフに謝りながら事情を説明するなどしておおよそ二十分の遅れで会場に到着した頃には、
人々は何があったかも知らずに楽しく食事を楽しんでいた。
大きなステージに綺麗なサークルテーブル、足元が白い掛け物で隠れるタイプで、とにかくその数が多い。五百人は入りそうだ。
もちろんここが大きな宿泊施設なのでそれくらいは入りそうではあるが、カイルの故郷の幽玄街も、シャウラの統轄する火の国も、こんなに大きく広い設備は持っていなかった。それに加え、ここと同じような施設八つ程窓から見ているので、この国を動かず資源、供給源はどうなっているのだろうと思わざるをえなかった。
テーブルの後ろには沢山の料理とトング、点々とシェフがいる所には人が集まり調理の様子を見ている。俗に言うビュッフェとかバイキングの要領でここは食事を楽しむようだ。
「にしても、広すぎるな。師匠探さないと…」
走り回って探したいのだが、ここにいる人の身なりを見る所彼らは上流階級。つまりは上級魔法士達の集まりで、あまり目に付くような動きはできそうもない。
「こういう時は店の人に聞くべきなのかな?…すみませーん。」
「レディースエーンジェントルメーン!!」
カイルの声はステージからの大音量の声に掻き消された。
ステージの方を見る。所々にスクリーンが降りてきていて、小さくて見えないはずのバニーガールの顔が大きく映る。
「現在!水の魔女、フォーマルハウト様がエキシビションマッチの相手をお探しです!四十分はこのアナウンスを流しているのですが…お呼びになったという魔法士がまだ控え室にご到着されてないらしく、急いで建物の中を捜索中ですので皆さんもうしばらくお待ちくださーい!」
はっはっはっ、魔女様を待たせるとは。よほど恐いもの知らずのようですな。
などと笑い声が聞こえる中カイルは冷や汗が止まらなかった。その次のアナウンスと画面に映るテロップのせいである。
「探しているのは、火の国からお越しのカイル様です!至急ご連絡を!」
龍が海の底で目を醒ます。




