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星の魔女 序  作者: 羅偽
水の国と影の国
15/33

幽玄の二人

わりと書くペースはやくてびっくり

「護身、かぁ。障壁で大体はOKなんだけどねー…たまに効かないときあるもんね。そういう時のための後ろに自分を引っ張る奴だとかその手の簡単な魔法があるんだけど、本当に奇襲を受けたときはハウリング系かな。キーンってやつ、あれを撃てば大体は怯むよ。次に同じ人に襲われる時は効かないけど、一回も使ってない相手なら怯ませる事も出来て距離もとりやすい、まぁ相手がびっくりすればだけどね。」

魔法指導三日目の事である。そんなことをカペラは言った。二日目に少し風魔法を習っただけなのに三日目にはこの事を言ったのは、この時を予知していたのかも知れない。

とにかく、カイルはカペラにこの事を教えられていたために、後ろからの一撃を放たれる前に止める事に成功した。

「おやまぁ、スハイルが言うだけはあるわけだ。」

奇襲をかけてきたのは驚くことに昼間の長髪の青年、ムーリフその人だった。

持っているのは刀。長い刀身から流れるような攻撃で相手の肉を切り骨を砕く、古来からの武器。

「アンタ、何で…仲裁に入ったじゃないか…。」

ムーリフは刀を肩に置くようにして疑問に答える。

しかし、ムーリフはカイルにスハイル程関心が無さそうである。

「ただ、俺に依頼が来たんだよ。星の魔女の弟子を殺せ、ってね。スハイルは私情、興味だ。俺は仕事だ。そこがあのバカとは違う。それに、スハイルが言うには隠し玉があるらしいじゃないか。確かに、その魔力量で無名なのはおかしすぎる。そこらの国を統治する魔女レベルだ。なのに魔法は簡単なのばかり、さすがに誰でも疑うぜ。俺はそれを目に収め次第お前を殺す。さっさと使わないと、その腕が落ちるぞ。」

そう言いながらムーリフは刀を振るう。

太刀筋は速くそして正確だ。カイルはほとんどの攻撃を見てからギリギリで自分を引っ張る魔法で避け火球を申し訳程度に撃つだけだった。

自分を引っ張る魔法は基礎中の基礎だ。

もともとは物を浮かせる魔法の第一段階で習う初級魔法で、唱えなくても意思で発動が出来るようになると剣術等を使う時に駆け引きの択が増える。

前後上下左右に自分を数センチだけ動かし、回避、攻撃に転ずることが出来る。カイルはこれを使い避け、反撃するのが得意だ。しかし今回ばかりはそうはいかない、相手の隙を探るのさえ大変なのだ。

一方的にムーリフがリーチを活かしてカイルを攻撃する、勝敗の決まった狩りとしか言い表せない。

【嵐 龍】を今使って勝てるかどうか自身で判断がつかなくくらいにカイルは精神的にも肉体的にも追い詰められていく…。





「貴様ら、こんなところで何をしている。此処は身分が上の者も通る廊下であろう?」

男の声である。一段良く通る声な訳ではない。

それでもカイルとムーリフの戦いを割るにはどうしてか充分を越えるほど良く二人を止めたのである。振り向くと、そこには二人組が立っていた。

一人は先程声を発した男だろう。少し高い背丈と銀に所々黒が入る髪、顔は若く、美しく整い、目が少し鋭く、その身に纏うのは白く、赤と藤の線が走っている服。そこからも無駄の無い肉体が見える。もう一人は顔がフードでわからない。ローブもその姿を詳しくは見せぬ造りで、男とは対象的に全く詳細が知れない。

「なっ…見られたか、めんどくせぇ。コイツらも殺さなくちゃいけねぇな…。」

ムーリフは刀をカイルから男に向ける。

「やれやれ…王に対する礼儀も仕付けられていないのか…協会に仇なすのなら、少しは魔法以外の事も学ぶ事をするべきだがな…。アウストレイル、無礼者の隣を引き剥がせ、私の魔法が及ぶ。」

「はい。」

男は最初は平坦に言ったが、最後の方につれて冷徹に、そして躊躇いもなく言う。

アウストレイルと呼ばれたフードの方は中性的な声で返事をし、手を出すとカイルの足元から糸が延びる。

一度きつく結われた物がほどける様な勢いでカイルに襲いかかり、カイルに絡まった。

光にあたるとかろうじて見える程度、カイルに巻き付いたそれは強固で、少しでもカイルが抵抗しようものなら、その身を裂きそうな程だった。

「ぐっ!…」

カイルはそのまま糸に引かれ壁に押し付けられる。

「一体…何をするつもりだ…?自称王様。」

出方を伺うムーリフに対し、男は言う。

「なぁに、少し頭が高い気がしてな。伏せて貰おうか。」

そう言うと男は指をムーリフに向け、下げる。

途端に、ムーリフの身体が地面に何かによって押し付けられる。地面に体前面を圧迫され、ムーリフは苦悶の声を上げる。

「!?…っあッ…!」

ムーリフの周りの床はヒビが入り凹み、割れていく。ムーリフ自身からも少なからず血が滲んでいく。

「や、やめろ!…そいつは別に悪くない。久々の再開で少し俺と力比べをしてただけだ!」

「王の前で見え透いた嘘を付くな、貴様はこの反協会の派閥の刺客に殺されようとしていたではないか。」

カイルの咄嗟の嘘は男に見透かされた。

「まぁ…貴様がそこまでして死にたいのなら、仕方あるまい。」

そう言って男は指を拳にしまう。

ムーリフを押さえ付けていた何かが消えた。

しかし圧力が凄まじかったのか、ムーリフは力なく地面に伏したままだ。

「アウストレイル、放してやれ。そこの向こう見ずは自らを殺そうとした人間を許して介抱してやるそうだ。」

アウストレイルは手を下ろす、カイルを拘束していた糸が解れ。その場に自由になる。

「っ!」

カイルはムーリフに駆け寄り、抱き抱える。

「馬鹿ね…カイル。」

ふと、アウストレイルが呟く。

「何で俺の名前を…。」

男はアウストレイルを睨む。

アウストレイルは男に頭を下げた。

何か二人の間には取り決めの様な何かがあるのだろうか。

「覚えておけ、阿呆。」

男はカイルに向き直りながらそう言うと、手を横に出す。急に男が手を出した先の空間が歪み、穴が空く。二メートル程のその穴からは雪がちらつく、外に繋がっているのだろうか。

「私の名前は、シリウス。この星を最も明るく照らす、王、聖賢者を統べる者の名だ。」

シリウスはアウストレイルと共に、雪が降る何処かへ消えていった。



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