重なり始める過去
新展開と言うのはこういうのを言うのかも
知れませんね。
「あ~楽しかった!海水浴にショッピング、堪能した~。」
沢山の荷物を持っても元気なカペラの隣には、
手ぶらでどっぷり疲れの溜まったカイルがいた。
「急に襲われて戦って…その後泳いで買い物でダッシュ…死ぬ…。」
「一番弟子君…そんなんで疲れてたら夕食前にぐっすり寝過ごしてなんにも食べられずに朝が来ちゃうよ?」
カペラはカイルの背中をばしばし叩く。本当に元気だ。
「まぁ、寝てて良いか!どうせ三時間は空いてるし、私はまた施設まわってから行ってるから起きたら三階に来なさい。」
「は、はい…申し訳ないです…。」
カイルは部屋のベッドに倒れると直ぐに寝てしまった。カペラが部屋を出ていく音が聞こえたような気がした頃には意識は薄れ、夢の中へと向かっていっていた。
ここはカイルの夢の中、のはずである。
見たことの無い城の中。
長く真っ直ぐ続く廊下には絵画が飾られていた。
一枚一枚が美しく目を奪われる、奪われる…?
どうしてか、どうして、見たことがあるのか…。
夏の日差しと白い髪の美女、床は白い石で。
どこかの宮殿、焔と嵐の激突、何かを刺され血を流す美女。
記憶なのか…でも違う。どこかカイルが見てきた
景色とは違う世界。とても似ているのに少しだけ違う記憶。カイルのような青年が描かれてる絵もあるが、カイルとは違い【嵐 龍】を使っていない。風を槍、剣のような形に纏め、本人は短刀を一本ずつ両手に握っている。
突如ノイズが走る、カイルは高いところから落ちるように、暗い何処かへ落ちていった。
カイルは目覚めた。
時計を見る、約束の時間が迫っていた。
部屋に鍵をかけて、飛び出すように三階へとエレベーターに乗り扉が開くのを待つ。
重そうな扉が開くと少し先に広く、豪華なレストランが見える。少し走るだけで間に合いそうだ。
ふと、あの夢の廊下の絵画が頭に映る。
カイルのような青年が走っていた絵。そんなもの見た覚えはない、でもカイルはしっかりとそれが瞳に焼き付いている。そして後ろには黒い影。
刀を持ち今すぐにでも青年に刀を降り下ろそうとしている、何故だろう。カイルは胸騒ぎがした。
急に立ち止まり、振り返る。
ーー悪い予感は当たった。




