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車酔いの少女  作者: げんたろう
中学生編
4/28

車酔いの少女4

「新しいマネージャーの水野かなめさんだ」

「・・・・・宜しくお願いします。出来る限りフォローをさせていただきます」





ボール拾い そして ボール磨き。

モップ掃除。

ドリンクの準備。

洗濯は各自でするので必要ナシ(タオルも同様)。

部室の掃除に救急箱の管理。

テーピングの練習。

スコア付けに部誌の管理



ポール籠は重くて引きずってしまって、体育館を傷つけてしまうので、免除。

レギュラー陣でお話するのは、部長に副部長そして森川くん。



「の、野々宮部長・・・。部誌、です・・・」

「ありがと。 ・・・・うん、よく書けてるね」


「お、大友副部長・・・。一年生の練習スケジュールの確認お願いします」

「貸してみろ。・・・ふむ。だいたいはいいが・・・そろそろ練習試合も入れるか」


「森川くん。スコアはこれで、いい? 大丈夫??」

「どれ。・・・見やすいな。さすが水野だ」



3人そろって3恐か!? 部活終了間際のこの時間が一番緊張する・・・!

かなめはホッとため息をつくと、二年生のところにやってきた。その足取りは軽い。



「佐川くん、テーピングの具合、どうだった?」

「今回はズレなかったっスね。上達しましたね、先輩!」

「本当? 佐川くん、練習台ありがとうね~」

「こんくらいいいっすよ!」

「今度はね、腕、お願いしてもいい?」

「腕、っすか?」

「うん。バスケやっているときは流石に無理だから・・・。今から」

「なるほどっすね。・・・いいっすよ。チャッチャとやりましょうか!」

「ありがとう!」



かなめは肌色のテーピングを取り出すと、佐川の右腕を固定し始めた。


「にしても・・・。緊張してますねー」

「部長達のこと? そりゃあ、お師匠様みたいなものだもん。部長にニッコリ笑って『やり直し』とか、副部長に『なっとらん!』とか森川くんにため息付かれるかとおもうと・・・胃がキリキリしそう」


森川とはナイショのお付き合い中だが、ソレとコレは別なのだ。

バスケに真剣な森川は格好いいとおもうし、彼女だからという理由で採点を甘くしない姿勢も立派だ。

だからこそ、カンペキにこなしたいと思うわけで・・・



「でも、一度もダメ出しされてないっすよね」

「そりゃあね。もう全精力をそそいでやってるもん。精神力がエンプティだよ。LPゼロみたいな?」

「先輩ひょっとしてあのゲーム、やっちゃってます?」

「あ、LPでバレちゃったかー」

「オレも好きなんすよー」

「今度新作でるよね、対戦型。佐川くん、買う?」

「モチっす!」

「それじゃあ・・・私とも遊ばない? あんまり仲間がいなくって・・・オフ会はちょっと勇気いるし」

「アブねっすよ、女子でオフ会は。オレでよけりゃ喜んで♪っす」




そんなかなめをこっそり見るのはバスケ部ナンバー3。



「水野さん、ちっとも懐かないなぁ~って思ってたんだけど、一年や二年とは仲良しなんだね。しかもヒロヤ・・・」

「お、オレは真剣に取り組んでいる者を頭ごなしに叱りなどはっ!」

「ようするに、水野は俺達に対する認識が浅いのだろう」

「誤解は早めに解きたいよね。水野さん、マジメだし真剣に取り組んでくれるし」


「うむ。歴代のマネージャーで髄一の働きぶりだ」




「ね、佐川くん。腕動く?」

「ま、多少は・・・でもこんくらい動かないと俺飯も食えませんし」

「あ、そうか! ごめんね。外そうか?」

「一晩くらいいいっすよ」

「うん・・・。でも、毎日お願いしているの悪いよね。他の準レギュ達にもお願いしようかな・・・」


「それなら俺達が協力するよ?」


「「!」」



ヒロヤが飛び上がり、かなめはブンブンと首を横に振った。



「ぶ、部長方にご迷惑をお掛けするわけにはっ!」

「そ、そっすよ! 一年二年で練習台になりますんで! 先輩達はいーっすよ!」



結構可愛くて。マジメで優しいマネージャー。しかも趣味まで合うという相手だ。

テーピングの練習相手に事欠いているのなら、練習台になるくらいどうってことない。

3年生はしゃしゃり出なくて結構!(本音)




「でもね、かなめちゃん」

「か、かなめちゃん!?」

「いいよね。同じ部活なんだし。オレのことは野々宮部長じゃなくって、春都でもでいいよ?」

「い、いえっ!!(こ、コワイよぅ~)」

「じゃあ、追々ね。・・・話は戻るけど、実際テーピングするのってオレ達が一番多くなるよね? レギュラーだし」

「・・・部の方であればテーピングの必要性は誰しにもあると思いますけど・・・」

「うん、でもレギュラーが多いと思うんだよ(断言)」

「そ、そうなんですか?」

「そうなんだよ。だからね、俺の脚や腕のことも知って欲しいんだよ。一人ひとり太さやリーチが違うわけだからね」

「!」


そういえば! と開眼するかなめ。

佐川の腕と大友の腕を見比べれば・・・確かに。


でも・・・・・・・怖い。

こんな人たちの前でぎこちないテーピング技術を披露なんて・・・・・・やっぱりムリっぽい。

森川だと照れるし・・・。


いや、でも!

女子バスケ部のマネージャーをやるつもりで、なんでだか(森川のせい)男子バスケ部に入部しちゃったけど! やることはどちらも一緒! 同じバスケ! 部長だって副部長だって森川くんだって同じ中学3年生!

恐れるなんて、おかしいのよかなめ!!



「や、やらせて頂いていいでしょうか・・・・・・・・・大友副部長」



かなめは一番腕が太そうな大友を練習台に選んだ。

野々宮の表情が黒く曇り、森川の目が細くなる。


「なんで、正隆?」

「!(ビク) 一年生や二年生と違って一番身体が出来ているので、差を感じるには一番いいのでは、ないか・・・と」

「かなめちゃんは、本当に理論がブレないんだね。まあ正隆はたしかにデカいね。秀司より筋肉質だし。

でもね、かなめちゃん。日本男児の平均に一番近い体格なのは、俺だから(笑」

「! は、はい! 是非野々宮部長にも練習に付き合っていただきたいと思います!」

「そう? じゃ、今度の日曜日。部活が休みだし、みっちり練習しようか☆」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え」

「用事あるの? ないよね?」

「に、日曜日は二週に一度図書館に行っていまして! ちょうどその日なのですが!」

「じゃあ、図書館で待ち合わせしようよ。そのあと町に出ればいいし」

「ま、町?」

「テーピングの材料にも色々あるしね」

「そ?そうですね???」



あれ? なんだかおかしくない? と思うかなめだが、野々宮のほうが一枚以上上手だ。

図書館の日は森川と逢うのが恒例だが、これでは逢えなさそうだ。

なぜか日曜日は野々宮と逢うことになったかなめは、今回の練習台である大友と部室横のベンチへ向かった。




「わあ・・」

「?」

「大友副部長も、一年前は佐川くんみたいに細かったんですか?」

「俺はプロテインを飲んでいるからな。筋肉の成長は一般よりも早いはずだ」

「プロテイン・・・傷ついた筋肉をさらに補強するために飲むたんぱく質ですよね」


「そうだ。よく知っているな」

「スポーツ医療の本は色々読みました。読んだだけじゃダメなんですけど」

「まだ若いのだから、実戦が足りないのは仕方あるまい」

「(同じ年なんだけど・・・)」



ガッシリとした大友の腕にテーピングを貼る。

やっぱり佐川のときより長さが必要だ。


「スジがここだから・・・」

「関節がココだ。固定するときは」

「ココですね」

「そうだ」

「副部長、腕がスベスベですね」

「ブッ!」

「爪もきれいだし・・・健康状態がいいんですね」

「そ、そうだな」

「成績優秀でバスケも強くて・・・尊敬します」

「み、水野もよくやっていると思うぞ」

「そうですか?」

「ああ。細かいところに行き届いたサポートをしてくれている。練習も随分しやすくなった」

「そう言う風にいわれると、マネージャー冥利につきますね」


ニコッ。



かなめは初めて、大友を真正面から見て微笑んだ。


大友の身体が硬直し、テーピングしているかなめにもその変化が伝わる。


「大友副部長? どうしましたか?」

「! なっなんでもないっ」

「そうですか?」

「あ、ああ! なんで水野は同じ年の俺に敬語なのかと思っただけだっ」


逃げ口上だったが、気になっていることを大友はつい口走った。

「バスケ部では先輩ですし、大友副部長は貫禄があるから」


「だが、同じ部活の仲間だ。あまり堅苦しいと距離を置かれている気分になる。秀司程度には砕けてもらえんか?」

「それじゃあ、大友くん?」

「あ、ああ」

「・・・・わかった。ねえ、大友くん、テーピングこんなカンジでいいかな?」


「そうだな。もう少し強くてもいいが、軽度であればこれでも十分だろう」

「そっか・・・。ありがとう!」

「いや。俺たちのためにしてくれていることだからな」





「いい雰囲気じゃない?」

「正隆にしては、上手い事やった。と言えるな」

「かなめちゃんに微笑まれて硬直してるしね。・・・雲行きが怪しいな」

「野々宮、お前・・・」

「ま、日曜日が勝負だからね!」





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