車酔いの少女26 ~よし、シメよう!~
註! このお話は『平成生まれの彼と、昭和生まれの彼女』と何気なくではなく、堂々とリンクしています。
でも読まなくても多分イケる・・・はず。
マシューはかなめのことを「かなちゃん」と言っていた。
秀司は15年の人生の中で、誰一人あだ名で呼んだことはないが、かなめ=かなちゃんというのは可愛い呼び方だと素直に思う。
まあ、かなめはどんな呼び方であろうが存在自体が可愛いのだが(と、口にだしたら多分かなめは照れすぎてひっくり返るだろう)。
(『お前みたいなイケメンにかなちゃんは似合わない』・・・・か)
「おまえは高校になって久しぶりに逢うこの俺に対して、感動もせずに妄想中か」
言われて、そういえば野々宮に呼び出されていたのだと思い出した。
場所は地元のコーヒーショップ。
目の前には『日本一爽やかな超高校級バスケットボールプレイヤー』と先日発売されたばかりのバスケ雑誌に書かれている野々宮春都が、見る人がみれば分かる『傍目爽やかだが、実は黒い微笑み』を浮かべていた。
「感動するわけがないだろう。面倒なことばかり押し付けて・・・・・・俺はお前のパシリじゃないぞ」
「森川、お前は有能な頭脳だよ♪」
すっと差し出したメモを流し見て、野々宮はエンジェルスマイルを浮かべた。
チラチラと見ていた女子高校生達が小さく黄色い悲鳴を上げる。
「この書店、知らないなぁ」
「そこは・・・・・・・・・・かなめ曰く『ボリュームが少ないくせに、ものすごく高い本』の品揃えが豊富な書店らしい」
「ようするにオタク系の本が多いところってことだね」
かなめのあえて遠回りな言い回しを、ズバリと直訳する野々宮。
「この間、寝室で押し倒して告白したよ」
「・・・・・・・・・・・そうか」
「反応、薄いね」
野々宮の性格からして、ひっそり片思いをするタイプではないのでさして驚かない。
自分の二倍以上の年齢の女性に対する告白シチュエーションではないと思うが「野々宮だから」そんなものだろう。
「振られたんだろう?」
「ああ、振られたね」
さわやかに野々宮は言う。
「でもさ、シュートが決まらなかったら何度だってトライするだろ?」
「バスケと恋愛は違うと思うが、お前にとってはそうなんだな」
「最悪、18歳までにOKもらえばいいから。それまでは法律的にどうしようもないから。・・・法律的には」
どうして爽やかな顔で、こんなあくどいことを考えられるのだろう、こいつは・・・。
そう秀司は思いながら、コーヒーを一口飲んだ。
「メモのお礼に悩みを聞いてやるよ」
「断る」
秀司が野々宮に渡したメモには、かなめの叔母行きつけのお店が羅列してある。本・ゲーム・アニメを売っているお店が多数と、通っているスポーツジムに、お気に入りのコーヒーショップなどだ。
「まあ、そう言うなよ。お前が勉強や部活で悩むことはまずないよな? ってことはかなめちゃんだ。かなめちゃんは、近い将来義理の姪になる子だから(断言か)、俺もちゃんと親身に答えてやるよ。森川の努力次第ではお前も俺の義理の甥になるしな!」
とても嫌な関係だ。
「なんでもつかささんは、かなめちゃんの入学祝いに化粧品とお洋服とPS○をプレゼントしたらしいね。うちの叔母さんとは万札1枚だったよ。かなめちゃんは可愛がられているなぁ・・・・・・うらやましい」
「・・・・・・・・」
「でもって、かなめちゃんの顔はとてもベーシックだ」
「失礼だな」
「うん。だけど、本当のことだ。画用紙って、真っ白のほうが色々描きこみ易いよね。かなめちゃんは化粧映えするタイプだとおもう。見てないけど、多分そう」
「・・・・・・」
「その関連で森川は悩んでいる。かなめちゃんの行った高校は男女同数だけど、学部だと圧倒的に男子が多いよね」
「・・・・・・・・」
「そこに高校デビューしたかわいいかなめちゃんだ。
あの子、大人しいし、目を付けられやすいタイプだよね。何かあった?
将来の可愛い姪っ子のために、協力してやるよ? つかささんの株も上がるとおもうし」
そっちが目的か。
黙って聞いていると、延々と野々宮が喋りそうなので、秀司は簡単に説明した。
曰く「学校帰りのかなめを待っていたら、マシューなる男子に『お前みたいなイケメンにかなちゃんは似合わない!』と言われた」と、真実だけ語った。
「『かなちゃん!』」
野々宮は叫んだ。
「森川、俺の『かなめちゃん』呼ばわりも、うっすらイラついてるだろ? 分かってて連呼してるんだけど」
「するな」
「そこに『かなちゃん』呼ばわりのニューフェイス! しかもイチャモンの付け方が面白い。森川はイケメンだからかなちゃんに似合わないのか・・・これってかなめちゃんをナニゲに馬鹿してない? あ、そこにイラついてんの?」
「・・・・・・・・」
「図星か」
俺としても、将来の姪で、中学時代の部活のマネージャーをバカにする言動は許せないかな。
よし、大友や佐野にも協力させて、シメよう。もやしっ子なんだろ? 大友がひと睨みすれば、おもらしするって♪
なぜこいつはキレイな顔をしてこうもあくどいのか。
森川が喋らないので、野々宮がものすごく喋ってます。
野々宮が黒すぎた?
次からはかなめ視点です。
森川視点だとクサい地の文を書かねばならず、ムズムズする。
つかさの入学祝いのPS○ですが、2でも3でもPでもお好きな文字を入れてください。