車酔いの少女25~彼女の男友達~
かなめの通う学校のもより駅にあるコーヒーショップで本を読みながらコーヒーを飲んでいると、目の前に人影が出来た。
「?」
顔を上げれば、同年代の男が一人。私服であるところを鑑みるとかなめと同じ学校の可能性が高い。
「お、おお前みたいなイケメンにかなちゃんは似合わないんだからなっ!」
男はそういい捨てると、一目散に逃げた。
背中のリュックサックには、この間かなめがガチャで取った麹菌のキャラクターが揺れていた。
***
「かなめ、身長162センチ、体重45キロ、クセのある黒髪で髪は顎くらいまでの知り合いはいるか?」
しばらくしてコーヒーショップに現れたかなめと下校途中に、俺はさっきのヤツの人相を言ってみた。
かなめは「うーん?」と首を傾げる。
高校に入ってから染めた髪がサラリと揺れた。
かなめの髪は真っ黒じゃないのになんで染めるんだ。と思ったし、イメチェンを薦めたかなめの叔母にも言ったのだが「馬鹿ね、女にそれ言う?」と鼻で笑われた。
今のところ傷んではいないようで安心した。かなめの髪はツルツルしていてさわり心地がいい。
「女の子?」
「すまない。男だ」
「それなら多分・・・・・マシュー君だと思う」
マシュー君。
「東洋系に見えたんだが・・・。香港人か?」
「そこで香港来ちゃうところが秀司君らしいよね。あだ名だよ」
かなめが、男子を、あだ名で呼んでいる、だと?
春都を『春都くん』と言うのにすら数ヶ月かかったかなめが、入学二ヶ月で、初対面だった男子をあだ名呼び?
(ちなみに俺を名前呼びするのには半年以上かかった)
「マシュマロが好きだから、マシュー君なの。かわいいよね」
「同意を求められても困る」
「そうだね。でも、秀司君。マシュー君知ってるの?」
「あちらが俺を知っている風だった」
かなめの顔が赤くなった。
「ご、ごめん。ゆりかちゃんがね、卒業アルバム持ってきちゃって。秀司くんのこと教えちゃったの」
「いや、それは好都合だし全然問題は無い」
「え? そうなの?」
海野が学科は別とはいえ、かなめと同じ高校に行くと聞いたときは安心した。
卒業式で『かなめが森川を好きな間は協力してやんよ』と言ってくれていて、こうやって知らないところで協力してくれている。
さらされた、水野かなめの恋人である俺の顔。
そして、マシュー(本名は何だ)の、ちょっとずれた宣戦布告。
「そうだ。この本、読んだから持って帰るか?」
「え? わー、高田さんの新刊だぁ。読む読む!」
「今読んでいるのが読み終わってからでいいぞ」
「え・・・でも、今読んでるの、三国志なんだけど。まだ、諸葛亮が登場もしていないところだよ?」
「もう読んだから、返却はいつでもいい。・・・なんでまた今頃三国志なんだ?」
かなめがあさっての方向を向いた。
本人は隠しているつもりらしい『オタク』関連のようだな。
こちらでは大変ご無沙汰しております。
なんかひらめいたので続きを書かせていただきます(詳細?は活動報告)。
かなめが現在読んでいる本はげんたろうが読書中。理由も似たようなもんです。
森川に「マシュー」と言わせる違和感がパネぇっす。