車酔いの少女 22
「ねぇ、かなめ。あんたんとこの部長」
「春都くん?」
数ヶ月たって野々宮部長を「春都くん」ということに慣れてきた私に、叔母であるつかさおねえちゃんが「そう、その子」と言った。
おねえちゃんにとっては、中学生の中では一番バスケが強い春都くんだって「その子」扱いなんだなぁ。
「なんなの、あの子」
「どうかしたの?」
「しょっちゅう、遭遇するんだけど」
常連の本屋とかゲームショップとか喫茶店とかスーパーとか、お得意様の会社のロビーの喫茶店とか。
おねえちゃんが指折り説明する場所には身に覚えがありすぎて冷や汗がでる。
「あんた、教えたでしょ」
「・・・ごめんなさい」
「や、あの子なんか口が上手いし、あんたじゃ立ち打ちできないだろうから、しょうがないんだろうけど・・・。
なんのつもりなのかしら、あの子。
これが大人の男なら『アタシに気がある?』とか思うけどさ、あの子とじゃ倍以上離れてるのよ、歳。
おいこら、計算するな☆」
つい、つかさおねえちゃんの年齢を計算してしまいました。
倍以上・・・ってことは15×2で・・・・・やっぱり30才過ぎなんだ、おねえちゃん。
「俺、つかささん好きになったんだよね」
まさか、じゃなかったです。おねえちゃん!!!
春都くんが、ほほを染めながら言ったことに衝撃をうけて、私はよろめきました。
秀司君が後ろで支えてくれました、ありがとう。
「・・・本気か?」
「もちろん」
「・・・あの、つかさおねえちゃんは、ナイショですが、一回りほど春都くんより年上なんだけど・・・」
本当は一回り(12才)じゃなく倍(15才)以上なんですが、おねえちゃんの個人情報なので、すこし誤魔化した。
「いいじゃん。年上」
春都くんは揺るがない。
「つかささん、童顔だよね。年取っても老けないタイプ。そのうち俺も成長するし、見た目はすぐにつりあうよ♪
・・・ってつかささんに言っててくれる?」
「・・・だって」
「おそろしい子!」
お姉ちゃんは大げさなリアクションをした。
が、本当に怯えているわけじゃなく、演技。
「ハシカみたいなもんよ。デキるお姉さんにちょっと憧れてるみたいな?」
と本気にはしていないようだ。
「これはナイショだけど、顧問の先生からも電話入ってんのよね。こっちのほうはあわよくば・・だろうけど」
「えっ!?」
「私、オトコいらないし、結婚する気もないから、華麗にかわしているけどね」
おねえちゃんはそう言うと、「あんた、そろそろ帰りなさい」と車のキーを振ってみせた。
「送ってくれるの?」
「中坊の姪っこを、夜に一人で帰すわけないっしょ」
春都くんは、そこまで想定していたのか…。
自宅に戻ると、微妙な顔の秀司くんと春都くんが待ち構えていました。
おねえちゃんは・・・うんざりした顔をした。
かなめが森川を「秀司くん」呼びしはじめました。
なんか、進展した模様。