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車酔いの少女  作者: げんたろう
中学生編
2/28

車酔いの少女2

「あれ?」

「水野か。休日に図書館とは感心だな」

「買うほどに小遣いがあるわけじゃないからさー」



気分を変えて市立図書館で勉強でもしようかと足を向けると。

そこでクラスメイトの水野とあった。


同じバスで通学しているわけだから、同じ図書館を利用している確率も高いわけだ。

が、立海の図書館は蔵書もかなり充実している。

市立図書館になにか利でもあるのだろうか?


聞けば『思春期の微妙な乙女心だよ・・・』と水野はつぶやいた。


「どういう意味だ?」

「本読むっていうの、あんまり知られたくないかなー・・・って」

「いい趣味だとおもうが・・・」

「本読んでいると友達ともおしゃべりできないし、『真面目』とか言われそうだし。私おしゃべりも好きだし真面目でもないし、誤解はされたくないなー・・・って」

「クラスで孤立する可能性もあるからか」

「・・・・ズバっといいますね、森川君」


まあ当たりだけどね。と水野は言った。


「だが、もう15歳だ。そのような幼稚なことは誰もしないだろう」

「分かってはいるのですが、ね。既定観念が抜け切れないのです」


水野はそう言うと『それじゃあね』と検索ルームへ向かった。俺はなんとなく後を追う。


「・・・こっちに用事?」

「そうだな」

「ふーん?」


水野は小さなメモを取り出すとキーボードで打ち込んでいく。ブラインドタッチとは・・・あなどれないな。


そしてレシートを出力するとカウンターへ持っていく。どうやら本の検索をしていたようだ。

司書から本を5冊受け取り「再来週の土曜日までです」と言われた彼女は、エコバックに本を詰め込み

「それじゃあね」と俺に声を掛け、帰ろうとする。


「まて」

「?なに?」

「なにを借りたか興味がある」

「・・・・・」


水野は無言でトートバックを突き出した。


「オヨヨ大統領・・・?」

「い、いいじゃない!」


崇高な本かと思いきや。

かなり昔の娯楽小説だった。本は手垢でボロボロで、彼女はそれにブックカバーをかけるのだろう。

バックを水野に返すと「重いからもう帰るね」と彼女は再び俺に背を向けた。




2週間後。



「また逢ったな、水野」

「すごい偶然だね?」


偶然ではない。

バスで彼女の読書進捗をチェックし、今日返却すると計算したのだが・・・相変わらず俺に気づいていない水野には『偶然』でしかない。


「面白かったか?」

「まあこんなもんかなー、って感じ。やっぱり時代設定とか古いし」

「なるほどな」


彼女はカウンターに本を返却すると「じゃ、私はこっちだから」とパソコンルームに向かい、俺は当然後を追った。


再びメモを取り出した水野は、相変わらず見事なブラインドタッチで蔵書を検索している。

後ろでそれを見ていると、今回はまた別のジャンルらしい。


「ピカソ・ゲルニカの真実、キリストとイコン、アールヌーヴォの世界、曼荼羅と仏たち・・・」

「! 何見てるのよ、森川君!」


この二週間で水野にどんな心境の変化があったのだろうか。

芸術に興味があるとは思わなかったのだが・・・データ不足か?



水野はプリントアウトすると、司書に貸し出しをお願いする。

俺は本待ちの水野の横で、なんともなしに一緒に待っていた。



「じゃ、私帰るね」

「まて」

「・・・・もう何を借りたか見たじゃない」

「荷物が重いから帰るというなら、俺が持ってやろう。少々質問がある。時間をもらうぞ」

「・・・・・(強制!?)」



そして一階のロビーの椅子で、俺達は体面して座った。


「なぜだ」

「は?」

「前回がオヨヨ大統領。今回が宗教美術。お前の思考回路が知りたい」

「・・・・・・・いや、別に。意味ないけど」

「だが、メモを持参していたということは、どこかで何かがあったはずだ」

「尋問するほどの理由じゃないけど・・・」

「ほう。なにか理由はあるのだな? 聞かせてもらおうか」

「・・・・・・今度、ピカソ展が美術館であるから下準備しようかなって・・・。ついでだから美術系で

まとめようかなーって思ったら、ミュシャ好きだし。イコンは以前なんかの本で読んでて、曼荼羅は中学の修学旅行で東寺で・・・って思い出したから」


水野のなかではきちんと理由があったらしい。


俺は満足して水野を開放した。

水野は訳がわからないといった顔をしながら帰途についていった。



さらに二週間後。



「やあ、水野」

「・・・もう偶然じゃないね。クラスメイトの観察日記でもつけてるわけ?」


さすがに分かったようだが、ちょっとズレた返答が来た。


「・・・ふう、もう何でもいいよ」


水野はカウンターで本を返却し・・・今回は書架のほうへ向かった。俺も後を追う。


ついた先はスポーツコーナー。



「今度はスポーツか」

「・・・まあね」


木城はグルリ、と本を見渡すと俺に言う。


「バスケの分かりやすい本選んでくれる?」


ほんのちょっと耳が赤い。

俺はそれを確認してから、書架に手を伸ばした。



苗字だけ出ました! 森川君です。

で、バスケ部のようです(分かりにくいですが)。

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