車酔いの少女15
約1ヶ月ぶりの投稿です。
お詫び(?)に一挙4話分投稿します。今後とも宜しくお願いします。
緑川中学校男子バスケ部は全国屈指の強豪なので、練習試合の申込みも多い。
かなめが顧問からホットラインである携帯電話を預かった時期は、県大会の1ヶ月前であったため、1日に1校からは申込みの電話が入った。
それは、顧問の先生からだったり、部長からだったり、マネージャーからだったりとさまざまだったが、かなめは森川の指示通り、ベスト8以下の学校は断りを入れていた。
多少イヤミを言われることもあった。一介の女子中学生が他校の先生に断りを入れれば心証も悪い。
その場合は、改めて顧問からお詫びの連絡を入れる旨も伝えた。本来ならば先生が行うことだから、このくらいのフォローはしてもらわねば、とかなめは開き直っていた。
「こちらも大会前に、練習試合を詰め込むことは出来ませんので・・・。どうしても、というのであれば来週顧問と直接話をお願いします。私の言葉は部員総意のものですので。・・・・はい、失礼します」
「副部長、ソウイって何ですか?」
「練習試合ばっかりやってられないというのは、俺達全員が思っていることだ、という意味だ」
「弱い相手と戦うヒマはないっすもんねぇ」
「それだけで断っているわけじゃない。試合のやりすぎて基礎を疎かには出来んし、怪我も多発する」
「あ、そう言う意味もあったんすね」
「そうだ。マネージャーがイヤミを言われつつも断っているんだ。俺達はベストコンディションで大会に挑み、無敗で全国の切符を手に入れなくてはな!」
「ういっす!」
佐川がガッツポーズを取ると、ボールを一つ手に取り、キレイなレイアップを決めた。
「ぶ・・・春都君。週末に1校は入っているし、そろそろ試合の申込みを打ち切ってもいいかな?」
相変わらずスルっと名前呼びが出来ないかなめが、野々宮に話を持ちかけ、彼もそうだね、と頷いた。
「三田中に、聖アントニオ、海浜2中に、東中・・・・・・。1ヶ月半で6校かぁ。
うん。これ以上はムリだね! ベスト8でうちを除いて6校からの申込みか。うん、俺達チェック入れられてるね!」
野々宮はバチっとウィンクをしたが、かなめは部長は自信家だなーとスルーした。少しずつではあるが、野々宮に耐性が出来たらしい。
彼は相手が取り乱すと俄然張り切るのだ。
それは彼のデフォルトであり、試合中は相手を引っかきまわして錯乱させるのを得意とし、相手のリズムが崩れると試合後半でも動きが良くなる厄介なタイプの選手でもある。
ちなみにかなめがアワアワすると、彼の目は爛々と輝きテンションが上がる。
かなめが野々宮に慣れてきたのはいい傾向だと森川は思った。
このままスルー能力でも身につければ、必要以上にかなめにちょっかいを掛けることもなくなるだろう。
バスケとか「スラムダンク」程度しか知らないので、あっさりと逃げる。マネージャー業務に至っては「タッチ」と「もしドラ」くらいですよ。
ちなみに森川のポジションはガードフォワード(スラダンでいうところの三井)