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刻まれる記憶  作者: 紫音
6/6

最終

***


ナースセンターで教えてもらった病室は、個室だった。

ノックもまともにしないで、部屋に飛び込む。

そこには、ベッドに座っている凌の姿があった。

頭や腕の包帯が痛々しい。

パジャマの胸元からも、包帯が少しだけ見える。


「慌しいな…お前は」

息せき切って飛び込んできた駿に、凌が苦笑する。

「し…のぐ…なんでっ…お前…生きて……」

「勝手に殺すな」

凌が手招きをして、ベッド脇の椅子を指し示す。

「話してやるから、そこに座れ」

「……あぁ」

駿が椅子に座る。

「……まずは…どこから話すかな」

順を追って話すべきかと悩む。


「事故はな、居眠り運転していた車が歩道に突っ込んで来たんだ。それに巻き込まれた」

ゆっくり話す凌の言葉に、駿は耳を傾けた。

「気付いた時には記憶が無くて…お前の目の前にいた。それからは…まぁお前も知っているだろうが…昨夜な…思い出したんだ」

「何を?」

「記憶全てだよ。お前の…制服を見て思い出した。お前はただのクラスメートじゃなかった」


その言葉に、ピクリと駿が反応する。


「お前に告白されて…OKして…。あの日、お前があそこにいたのは…俺と待ち合わせしていたからだったんだな、駿」

「え?…今、"駿"って」

「思い出したと言っただろう?俺たちは付き合っていた。あの日は初めてのデートだったんだ。しかも…付き合い始めて1ヶ月だ」

思わず凌が笑う。

「一ヶ月で初デートとか…どれだけ初々しいんだと思ったよ」

「……普段は学校で会ってたし…それに、お前は委員会とか忙しいしさ。帰れば塾だなんだって…付き合ってないんじゃないかって思ったんだよ」

「そうだな。だから1ヶ月してようやくデートだ」

凌はその日を思い出すように目を閉じた。

「俺自身も呆れるほど楽しみにしていた…。遅れないように早めに出て…結果、事故にあったんだけどな」

「そ、んな…」

「でもきっとどこかで覚えていたんだ。待ち合わせに行かなけりゃって…。だから、気づいた時にあそこにいた」


包帯に巻かれた手を、駿の方へ伸ばす。

その大きな手が、頬を撫でた。


「だけど、本当はお前にあんな姿を見せるべきじゃなかった…1ヶ月で恋人が死んだなんて…そんな思いさせるべきじゃないからな」

「こい…びと…」

「そうだろ?お前は俺の恋人だろ?」


優しく問いかける声に、駿は思わず俯いた。


「わっかんねーよ…。オレの告白に流されただけだと…。だって…お前はいっつもオレのこと嫌がってたし」

「そりゃ、委員長としてはな…。でも、言っただろう?お前は意外に純情なんだって。俺が他のヤツのものになってほしくないって」

コクリと駿が頷く。

「それを聞いて…安心したんだ。お前に…そう思ってもらえてるなんてな」

「なんで?」

「もしも学校という規則がなかったら…俺もお前みたいに自由になりたいって思ってたから。だから、お前と付き合って…いろいろ知りたかった」

凌の手が、今度は駿の髪を撫でる。

「全てを思い出して…辛そうなお前を抱きしめてやれないのがもどかしくて…。キス一つ出来ない身体なんて嫌だろう?そう気付いたら、戻ってた」


空気に融ける様に…気付けば自分の身体に戻っていた。


大怪我だった自分の身体は、意外にも動ける事に驚いて…

今まで危篤状態だったと周囲にいた家族は皆喜んでいた。


ようやく自分が戻ってきたのだと実感した。


「駿…ごめんな」

謝る凌に、駿はただ首を横に振るしか出来なかった。

涙が止め処なく溢れてくる。

「駿…ごめん…心配かけたな。記憶まで無くして…」

「いい…もう、いい…」

駿の腕が、柔らかく凌の首に絡まる。

「お前が…生きててくれたから…いい…」

「あぁ」

凌は駿の背を撫でる。

「駿…俺が退院したら…デートしような」

「ん…」

「それから…俺はOKした時から、ちゃんとお前を見てるよ。流されてるだけなんて…ないから」

「うん、ありがとう」


凌は駿の金の柔らかい髪に顔を埋め、それから額にキスをする。


「凌…大好きだから」

「俺も、好きだよ」


それから2人はゆっくりと唇を重ねた。



長らく未完で申し訳ありませんでした

ひとまず落ち着いた…というところです


読んでくださってありがとうございました!

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