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刻まれる記憶  作者: 紫音
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-2-

『なぁ、俺の名前なのか?』

黙ってしまったオレに、幽霊のヤツはもう一度尋ねてきた。

「…あぁ、そうだよ。八坂凌。これがお前の名前」

『やさか…しのぐ…』

凌は自分の名前を反芻し、まるでテストで単語を覚えるように自分の名前を記憶した。

『じゃあ、お前は?』

「…オレは梓川駿。お前と同じクラスの…」

『梓川か…』

軽く腕を組み、凌は少し考えるように黙る。

その様子を見ていたオレは、今度は自分の番だとばかりに質問を投げつけた。

「凌、お前…なんで幽霊なんだよ。…まさか、死んじゃったのか?」

『いや…どうなんだろうな…。どこかを歩いていたのは覚えている…車にぶつかったのも…』

記憶を辿るように、凌が状況を言葉にする。

『その後は…分からない。次の瞬間は梓川の前にいた』

「じゃあ、お前の身体がどうなったとかは?」

凌は首を横に振る。

『病院なんだろうけど…事故にあった後の自分を見てないんで分からない。死んでいるのかもしれないけど…』


おいおい、普通ここは慌てるところだろう!?


「死んでるって…お前なっ。確かめに行けよ!!」

『怖いじゃないか。自分が死んでいるのなんて見たくない』

「ば…っ…ガキじゃねーんだから!そんなんじゃ…不幽霊とかそんなのになっちまうぞ!」

オレは携帯を取り出す。

凌の家に電話すれば状況が分かる。

しかし、それを止めたのは凌本人だった。

『いいよ、梓川』

「で…、でもっ」

『記憶が無いんだ…。例えば、もし…本当に死んでいたりして…それを悲しむ家族を俺が分からないなんて…酷すぎるだろう?』


切ないような表情


そうか…


やっぱり、自分の記憶がないのは不安なんだ


オレは携帯を下ろした。

「…分かった…」

『ありがとう』

「でも…どうするんだよ。記憶が戻るまで、こうやって幽霊でいるのか?」

『それしか方法がないだろう?』


確かにその通りではあるんだけど…


『梓川…お前は俺を知っているんだよな』

「あぁ…」

『教えてくれないか?俺のこと…』


申し訳無さそうにする凌に、オレはそれ以上何も言えなくなった。


「分かった」

『…助かるよ』


ようやく、凌がホッとしたような笑顔を見せたのだった。

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