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『なぁ、俺の名前なのか?』
黙ってしまったオレに、幽霊のヤツはもう一度尋ねてきた。
「…あぁ、そうだよ。八坂凌。これがお前の名前」
『やさか…しのぐ…』
凌は自分の名前を反芻し、まるでテストで単語を覚えるように自分の名前を記憶した。
『じゃあ、お前は?』
「…オレは梓川駿。お前と同じクラスの…」
『梓川か…』
軽く腕を組み、凌は少し考えるように黙る。
その様子を見ていたオレは、今度は自分の番だとばかりに質問を投げつけた。
「凌、お前…なんで幽霊なんだよ。…まさか、死んじゃったのか?」
『いや…どうなんだろうな…。どこかを歩いていたのは覚えている…車にぶつかったのも…』
記憶を辿るように、凌が状況を言葉にする。
『その後は…分からない。次の瞬間は梓川の前にいた』
「じゃあ、お前の身体がどうなったとかは?」
凌は首を横に振る。
『病院なんだろうけど…事故にあった後の自分を見てないんで分からない。死んでいるのかもしれないけど…』
おいおい、普通ここは慌てるところだろう!?
「死んでるって…お前なっ。確かめに行けよ!!」
『怖いじゃないか。自分が死んでいるのなんて見たくない』
「ば…っ…ガキじゃねーんだから!そんなんじゃ…不幽霊とかそんなのになっちまうぞ!」
オレは携帯を取り出す。
凌の家に電話すれば状況が分かる。
しかし、それを止めたのは凌本人だった。
『いいよ、梓川』
「で…、でもっ」
『記憶が無いんだ…。例えば、もし…本当に死んでいたりして…それを悲しむ家族を俺が分からないなんて…酷すぎるだろう?』
切ないような表情
そうか…
やっぱり、自分の記憶がないのは不安なんだ
オレは携帯を下ろした。
「…分かった…」
『ありがとう』
「でも…どうするんだよ。記憶が戻るまで、こうやって幽霊でいるのか?」
『それしか方法がないだろう?』
確かにその通りではあるんだけど…
『梓川…お前は俺を知っているんだよな』
「あぁ…」
『教えてくれないか?俺のこと…』
申し訳無さそうにする凌に、オレはそれ以上何も言えなくなった。
「分かった」
『…助かるよ』
ようやく、凌がホッとしたような笑顔を見せたのだった。




